新規腎障害分子USAG-1を標的とした腎不全回復療法の開発

文献情報

文献番号
200633051A
報告書区分
総括
研究課題名
新規腎障害分子USAG-1を標的とした腎不全回復療法の開発
課題番号
H17-難治-一般-043
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
柳田 素子(京都大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 北 徹(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当研究課題では、申請者が最近見出した新規分子USAG-1を標的にした新しい腎不全治療薬の開発を目的とする。
現時点では腎不全に陥った腎臓を元に戻す治療法はないこと。
唯一BMP-7 (Bone Morphogenetic Protein-7)は動物実験レベルでその可能性が示されているが、BMP受容体が全身に存在するために副作用が問題となり、実用化には至っていない。
申請者が見いだした腎臓BMPアンタゴニストであるUSAG-1はBMP-7に対する抑制活性が強く、その発現が腎臓に限局している。以上のことから、申請者は「USAG-1が腎臓におけるBMP-7の調節因子であり、腎疾患の際にはBMP-7の腎修復機能を抑制する」という仮説を立てた。もしこの仮説が正しい際には、USAG-1中和抗体やUSAG-1発現制御剤には腎疾患治療薬としての可能性があり、USAG-1の発現が腎臓特異的であることから副作用が少ないことが期待される。
研究方法
① USAG-1ノックアウトマウスに各種腎疾患モデルを惹起し、病変形成および修復過程を野生型と比較検討する。
② USAG-1の発現制御機構の解明
③ USAG-1中和抗体の作成
結果と考察
USAG-1ノックアウトマウス(以後KO)を作成し、KO が腎障害抵抗性であること、KOではBMPシグナルが増強しておりBMP-7の中和抗体を投与すると腎障害抵抗性が消失することからKOの腎障害抵抗性は内因性BMP-7の活性増強を介していることを明らかにした。以上の結果から上記の仮説が正しいことが検証され、USAG-1の中和抗体や発現抑制剤には腎疾患治療薬としての可能性があることが明らかとなった。さらに申請者はUSAG-1が腎臓に発現するBMP拮抗分子の中で最も発現が多く、その局在がBMP-7と一致していることを証明しており、USAG-1がBMP-7の腎修復機構を調節する中心的因子であると考えられる。
申請者はUSAG-1の腎障害および発生段階における発現制御機構を明らかにし、その発現促進因子、抑制因子をそれぞれ同定した。これはUSAG-1発現制御剤開発への手がかりになると考えられる。
結論
USAG-1を標的とした治療戦略は従来の予防的薬剤とは異なり、腎不全を回復させる可能性が高いのみならず、USAG-1の発現が腎臓に限局することからBMP-7自体の投与よりも副作用が少ないことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
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