細胞組織工学的手法を用いた中枢神経障害に対する根治的治療法の開発

文献情報

文献番号
200632074A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞組織工学的手法を用いた中枢神経障害に対する根治的治療法の開発
課題番号
H18-こころ-一般-024
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
田口 明彦(国立循環器病センター研究所循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 成冨 博章(国立循環器病センター脳血管内科)
  • 飯田 秀博(国立循環器病センター研究所放射線医学)
  • 盛 英三(国立循環器病センター心臓生理学)
  • 高木 睦(北海道大学大学院工学研究科細胞培養工学)
  • 松山 知弘(兵庫医科大学医学部脳血管内科)
  • 齋藤 敬(大阪大学産業科学研究所・新産業創造物質基盤技術研究)
  • 田中 秀和(大阪大学大学院医学研究科神経薬理学・神経発生学)
  • 西川 雄大(国立循環器病センター先進治療機器開発室)
  • 北川 一夫(大阪大学大学院病態情報内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
22,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は中枢神経障害後の血管再生が神経幹細胞の移動を促進するだけでなく、その生着および成熟に必須であることを明らかにしてきたが、本研究では細胞組織工学的手法を用いて中枢神経障害部位における血管網の再構築と共に、神経(幹)細胞の誘導や移植を行い、脳梗塞患者や外傷性脳損傷患者などの中枢神経機能障害患者に対する全く新しい治療法の確立に向けた研究を進めている。
研究方法
われわれが開発した非常に再現性の高いマウス脳梗塞モデル(脳梗塞後1ヶ月)の陳旧性脳梗塞巣に対し、細胞ソースとして①骨髄由来間質細胞、②脂肪組織由来間質細胞、③不死化した骨髄間質細胞を用いるとともに、Scaffoldとしては①温度感受性細胞シート、②ハニカムフィルム、③生体吸収性ゼラチンスポンジ、④コラーゲンシート、⑤サーモンコラーゲンを使用し、移植後の微小血管再生能および神経機能回復促進に関する検討を行った。
結果と考察
各Scaffold上で、骨髄由来間質細胞、脂肪組織由来間質細胞や骨髄由来不死化間質細胞の培養し脳梗塞巣への移植を行った結果、①骨髄由来間質細胞や脂肪組織由来間質細胞では、移植細胞の局所における十分な増殖は観察されず、微小血管網の再構築も観察されなかったが、②骨髄由来不死化間質細胞の移植において、神経学的な評価においては有意な改善は見られなかったものの、形態学的評価において3次元的な細胞増殖および組織内に比較的密な微小血管網の新生が観察された。来年度以降の課題として①それらの安全性を検証するとともに、②移植神経幹細胞の生着や成熟、および③神経機能改善効果に関する知見の収集、さらに④正常の骨髄由来間質細胞や脂肪組織由来間質細胞の生着、増殖が促進されるScaffoldの開発が必要であると考えている。さらに、3次元的な血管網の構築には物理的Scaffold上で細胞培養を行った後に移植するだけではなく、内因性の組織再生を誘導するScaffoldの移植に関する検討も必要であると考えている。
結論
 移植神経幹細胞が脳神経機能の回復に貢献するためには、さらにその成熟や機能が必要不可欠であると考えている。来年度は、①神経幹細胞移植に適した血管新生網の開発を継続すると共に、②移植神経幹細胞の成熟や機能および脳神経機能改善効果に関する検討、を中心に研究を行い、中枢神経障害患者に対する治療法の確立に向けた知見の獲得を目指す。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
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