運動ニューロン変性に関わる分子の同定と病態抑止治療法の開発

文献情報

文献番号
200632072A
報告書区分
総括
研究課題名
運動ニューロン変性に関わる分子の同定と病態抑止治療法の開発
課題番号
H18-こころ-一般-022
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 道勇 学(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 田中 章景(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 田中 啓二(東京都臨床医学総合研究所・先端研究センター 生化学・分子遺伝学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
38,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人発症の運動ニューロン疾患である、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と球脊髄性筋萎縮症(SBMA)について、運動ニューロン変性の病態の分子機構を明らかにし、治療による病態の可逆性について検討した。
研究方法
SBMAマウスの軸索輸送解析、軸索モーター蛋白質発現解析などを行った。古細菌Methanosarcina mazeiから、プロテアソーム(Mm-PS)を構成するαおよびβサブユニットをクローニングし、機能解析を行った。SCFFbs1リガーゼリコンビナント蛋白質を用いユビキチンリガーゼ活性を測定した。CHIP遺伝子とHsj-1遺伝子について、定法に従ってターゲティングベクターを作製した後、Sallにより線状化し、TT2 ES細胞にエレクトロポレーション法による遺伝子導入を行った。
結果と考察
SBMAについて: SBMAの病変部位では初期からdynacin1の転写障害がみられ、このため逆行性軸索輸送障害がもたらされることが明らかとなった。また、この病態は発症後早期に去勢を行うことにより可逆性に改善することが示された。軸索輸送障害は運動ニューロン疾患の治療の標的として極めて重要であると考えられる。
ALSについて:古細菌PSが、哺乳動物細胞内においても毒性を発揮せずに、活性を有する機能的な複合体を形成しうる事を明らかにした。さらに、培養細胞内において、異常凝集体を形成しやすく細胞毒性を持つ変異SOD1を初めとする神経変性疾患原因タンパク質の分解を特異的に促進しうることを見出した。
運動ニューロン疾患における恒常性監視機構について:Fbs1はニューロンでは、Cullin1と結合しSCFFbs1の複合体を形成してERADに関与するのが主目的でなく、寧ろその大部分は、糖蛋白質に特異的な分子シャペロンとして細胞質で働いていることが判明した。シャペロン依存性品質管理リガーゼであるCHIPは,分子シャペロンと提携して再生できなくなった変性蛋白質を迅速に分解するという典型的な品質管理リガーゼと考えられる。
結論
運動ニューロン疾患、とくにSBMAにおける神経細胞機能障害は発症後早期であれば適切な治療により可逆的に改善すること、およびその分子機構として逆行性軸索輸送障害が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。ALSの病態におけるユビキチンプロテアソーム系の役割と、その機能是正による治療法開発の可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
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