筋強直性ジストロフィーの病態解明とRNAを介した治療

文献情報

文献番号
200632037A
報告書区分
総括
研究課題名
筋強直性ジストロフィーの病態解明とRNAを介した治療
課題番号
H17-こころ-一般-016
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
石浦 章一(東京大学 大学院総合文化研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 筋強直性ジストロフィー(DM)は、成人の筋ジストロフィーの中で最も患者が多いが、効果的な治療法はまだ開発されていない。DMの症状は全身にわたっているが、原因は塩素チャネル(ミオトニア)、インスリン受容体(耐糖能の異常)、マイオチューブラリン(筋分化の遅れ)、トロポニンT(心筋異常)などの遺伝子のスプライシングな異常によって、種々の症状が起こることが明らかになった。また本症の治療にとっても、スプライシング制御が標的の1つになった。
 平成17年度に始まった本研究は、このスプライシング制御をメインテーマにしている。平成18年度は、筋強直性ジストロフィー患者でのスプライシング異常を定量化して病態を把握するとともに、最終的なRNAを介した治療を目指して分子生物学研究を行った。
研究方法
 DMに特徴的なスプライシングが見られるかどうか、RNA結合タンパク質の量が変化しているかどうかの2点について、筋肉バンク中のDM筋からRNAを抽出し、発現量を、DM患者21例と疾患対象者12例で調べた。また、線虫にGFPと融合させたCTG5、CTG130、CCTG100をインジェクションし、筋肉細胞に発現させた(myo3プロモーター)。また、ヒトMBNLのホモログであるK02H8.1遺伝子をクローニングするとともに、K02H8.1が欠損した線虫を作出した。
結果と考察
 まず、DM筋でのスプライシングであるが、インスリン受容体ではエキソン11を含むスプライシングの割合が激減していた。また心筋トロポニンTでは、エキソン5を含むスプライシングが有意に増加していた。ここで、筋肉に発現するMBNLファミリーのうちMBNL1とMBNL2、CELFファミリーのうちCUG-BP1とCUGBP-2の患者筋での発現量を調べたところ、どれも有意差がなかった。
 線虫からK02H8.1遺伝子をクローニングした。しかし、ヒトのように4つのRNA結合モチーフは持たず、N末端に2つ存在するのみであり、CeMBNLと命名した。CeMBNLはヒトMBNL1同様、CUGやCCUGリピートに結合することが、酵母three-hybridによって明らかになった。また、CeMBNLのエキソン1を含む511塩基の欠失を持つ変異体Tm1563を分離した。この変異体の寿命は14日であった。
結論
 RNA結合タンパク質の発現量を人工的に変化させることができれば、スプライシングを自由に制御でき、新しい治療法となる可能性がある。現在、系を確立しモデル動物も用意できた。

公開日・更新日

公開日
2007-05-30
更新日
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