軸索傷害型ギラン・バレー症候群の抗神経毒素療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200632023A
報告書区分
総括
研究課題名
軸索傷害型ギラン・バレー症候群の抗神経毒素療法の開発に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-026
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 鍋倉 淳一(岡崎国立共同研究機構生理学研究所・発達生理学研究系・生体恒常機構)
  • 水之江 義充(九州大学大学院医学研究院・細菌学)
  • 平田 和穂(九州大学大学院医学研究院・形態解析学)
  • 三野原 元澄(九州大学病院・神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、我々の研究グループでは、ギラン・バレー症候群(GBS)の先行感染病原体の一つであるCampylobacter jejuni(C. jejuni)より、DNA-binding protein from starved cells(C-Dps蛋白)を初めてクローニングし、本蛋白とGBS病態との関連の検討を行ってきた。これまでの検討により、C. jejuni感染後GBS患者の62.5%で抗C-Dps抗体は陽性であり、本蛋白はsulfatideを介して末梢神経の髄鞘、ランビエ絞輪に結合しうること、C-Dps蛋白はニューロンに分化誘導したPC12細胞株に対し細胞傷害活性を持ち、in vivoにおいてもラット坐骨神経に伝導ブロックを誘導し、病理学的にランビエ絞輪部に高密度で集簇するNaチャンネルの染色性を低下させることを見いだした。本年度は、C-Dps蛋白による末梢神経傷害の形態変化、並びにC-Dps蛋白の異なる経路からの投与による効果を検討した。
研究方法
1)ラットの坐骨神経を露出し、C-Dps蛋白の神経内注入を行い、4時間後に灌流固定し、形態的変化を観察した。2)C-Dps蛋白を経静脈的、経動脈的、あるいは髄腔内に投与し、末梢神経の病理学的変化を検討した。
結果と考察
1)C-Dps蛋白を注入したラット坐骨神経では、軸索変性やparanodal demyelinationが認められ、これらの変化は電顕にても確認された。2)C-Dps蛋白の静脈内や動脈内投与では、C-Dps蛋白の末梢神経への明らかな沈着は観察されなかった。一方、髄腔内投与の場合、C-Dps蛋白は髄鞘の最外層、並びにランビエ絞輪部に結合し、ランビエ絞輪部でのNaチャンネル(Nav1.6)の集簇を低下させた。これらの結果より、C-Dps蛋白はランビエ絞輪部でのNaチャンネルの集簇に影響を及ぼしたり、軸索変性やparanodal demyelinationを誘導することで、末梢神経の伝導障害に導く可能性が示唆された。今後更にそのメカニズの解明を行っていく。
結論
C-Dps蛋白の神経内注入により軸索変性やparanodal demyelinationが誘導される。C-Dps蛋白の髄腔内投与によりラット馬尾神経のランビエ絞輪部でのNaチャンネルの集簇を低下させた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200632023B
報告書区分
総合
研究課題名
軸索傷害型ギラン・バレー症候群の抗神経毒素療法の開発に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-026
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 鍋倉 淳一(岡崎国立共同研究機構生理学研究所 発達生理学研究系 生体恒常機構)
  • 水之江 義充(九州大学大学院医学研究院 細菌学)
  • 平田 和穂(九州大学大学院医学研究院 形態解析学)
  • 三野原 元澄(九州大学病院 神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、我々の研究グループでは、ギラン・バレー症候群(GBS)の先行感染病原体の一つであるCampylobacter jejuni(C. jejuni)より、DNA-binding protein from starved cells(C-Dps蛋白)を初めてクローニングし、本蛋白とGBS病態との関連の検討を行ってきた。これまでの検討により、C. jejuni感染後GBS患者の62.5%で抗C-Dps抗体は陽性であり、本蛋白はsulfatideを介して末梢神経の髄鞘、ランビエ絞輪部に結合すること、ニューロンに分化誘導したPC12細胞株に対し細胞傷害活性を持つことを報告した。本研究では、in vivoにおけるC-Dps蛋白の末梢神経に対する作用の検討を行った。
研究方法
1)ラット坐骨神経にC-Dps蛋白、コントロールとして熱処理後C-Dps蛋白、PBSの神経内注入を行い、電気生理学的検討、病理学的検討を行った。2)パッチクランプ法を用いて、ラット海馬CA1錐体細胞の活動電位の変化をC-Dps蛋白の有無で検討した。3)C-Dps蛋白を経静脈的、経動脈的、あるいは髄腔内に投与し、末梢神経の病理学的変化を検討した。
結果と考察
1)電気生理学的検討により、C-Dps蛋白を注入したラット坐骨神経でのみ、伝導ブロックが認められた。2)C-Dps蛋白注入神経では、軸索変性やparanodal demyelination、ランビエ絞輪部でのNaチャンネル(Nav1.6)、paranodeでのCasprの染色性が低下した。C-Dps蛋白の髄腔内投与より、ランビエ絞輪部でのNaチャンネルの染色性の低下が認められた。3)Nav1.6を発現する海馬CA1錐体細胞での検討では、C-Dps蛋白のNaチャンネルに対する直接作用は認めなかった。これらの結果より、C-Dps蛋白はランビエ絞輪部でのNaチャンネルの集簇を低下させたり、paranodeでの形態変化を誘導することで伝導障害を起こすことが示唆された。以上のことから、C. jejuni感染後GBSでの軸索障害機序へのC-Dps蛋白の関与が示唆され、今後、本蛋白をターゲットとした新規治療法の開発を行っていきたい。
結論
C-Dps蛋白は、神経内注入により伝導ブロックを誘導する。病理学的には軸索変性やparanodal demyelination、ランビエ絞輪部でのNaチャンネルの集簇を低下させた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-01-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200632023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
軸索傷害型ギラン・バレー症候群の先行感染病原体であるCampylobacter jejuniより、C-Dps蛋白をクローニングし、病態との関連を検討した。C. jejuni感染後ギラン・バレー症候群患者は、C-Dps蛋白に高率に暴露されていること、また、C-Dps蛋白はsulfatideを介して神経組織に沈着し、直接的に傷害し、伝導ブロックを誘導することが示され、本疾患に対する軸索傷害メカニズムに関与することが示唆された。本成果は国内外の学会で報告され、大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
C-Dps蛋白は、C. jejuniが酸化的、あるいは飢餓ストレスなどに暴露された場合に産生されるストレス蛋白の一つである。本蛋白に対する抗体は、C. jejuni感染後ギラン・バレー症候群では、C. jejuni腸炎群に比べ有意に陽性率が高く診断的意義は高い。また、C-Dps蛋白は直接的に軸索傷害を誘導することから、今後、C-Dps蛋白の検出システムや除去システムを構築していくことは、新規治療法の開発において、大変意義のあるものと考えられる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
2006年3月、名古屋で行われた第18回日本神経免疫学会・学術集会において、本研究の成果である「Campylobacterjejuni由来Dps蛋白によるNaチャンネルの障害」を発表した朴華氏が、同学会よりYoung Neuroimmunologist Awardを授与された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
47件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
44件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-