HTLV-Iプロテアーゼ阻害剤によるHAM治療法の開発ならびにHAM発症予防に関する研究

文献情報

文献番号
200632019A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-Iプロテアーゼ阻害剤によるHAM治療法の開発ならびにHAM発症予防に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-022
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
納 光弘(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 木曽 良明(京都薬科大学薬品化学教室・創薬科学フロンティア研究センター)
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院医学研究科ウイルス病原学分野)
  • 外丸 詩野(北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻病態解析学)
  • 中村 龍文(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染分子病態学)
  • 久保田 龍二(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科難治ウイルス病態制御研究センター)
  • 梅原 藤雄(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経内科・老年病学)
  • 齊藤 峰輝(金沢医科大学生体感染防御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-Iウイルス量増加がHAM発症の最大のリスクであるが、ウイルスを減少させる根治療法は確立されていない。本研究ではこれを可能にするHTLV-Iウイルス特異的プロテアーゼ阻害剤の開発を目指す。また、HTLV-I感染者からのHAM発症を予防するための、HAMの病態解明と発症予測に関する研究も行う。
研究方法
薬剤開発のために、新規HTLV-I特異的プロテアーゼ阻害剤の開発、HTLV-Iウイルス感染価定量法の開発、HAM疾患モデルの開発を行う。またHAM発症予防のために、HAM病態の解明、治療法の開発、HAM発症関連宿主遺伝子の同定並びに発症予測システムの開発を行う。
結果と考察
木曽は、プロテアーゼ阻害剤であるKNI-10455を、HTLV-Iプロテアーゼの結晶構造をもとに分子モデリングを行った。その結果主構造を変化させる必要はなく、N末端アセチル基が阻害作用に重要であることが判明し側鎖の構造変換を推し進めた。酵素阻害活性を低下させずに、生体内で安定で、物性の優れた新規化合物KNI-10584、KNI-10605を、生体内で毒性なく適用できると考えられる5uMの濃度で強い酵素阻害活性をもつKNI-10562, KNI-10573、KNI-10617を得た。足立は、HTLV-Iプロテアーゼ阻害剤の酵素阻害活性の評価のためのウイルス感染価定量法を確立した。外丸は、HAM感受性動物モデルを確立した。中村は、プロスルチアミンをHAM患者に投与し、末梢血中のウイルス量の減少と神経症状の改善を認めた。梅原はHTLV-I陽性封入体筋炎で、傷害筋肉にHTLV-I感染リンパ球とHTLV-I特異的CTLの浸潤を明らかにした。久保田は、生体内のCD4陽性HTLV-I感染細胞では、免疫シグナル伝達が低下していることを明らかにした。納は、HAMの中枢神経内にHTLV-I感染CD4陽性細胞とHTLV-I特異的CTLの浸潤と、それに続く周囲の神経系細胞の傷害が起こっていることを明らかにした。齊藤はイラン型のHTLV-Iの解析を行い、tax遺伝子の変異がHAM発症に関連している可能性を指摘した。
結論
本研究により、HTLV-Iプロテアーゼ阻害剤の開発は酵素阻害活性の観点よりはほぼ完成に近づいた。今後細胞レベルおよび動物モデルレベルでの効果判定を行い、人体投与可能となるためにさらに発展させることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200632019B
報告書区分
総合
研究課題名
HTLV-Iプロテアーゼ阻害剤によるHAM治療法の開発ならびにHAM発症予防に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-022
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
納 光弘(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 木曽 良明(京都薬科大学薬品化学・創薬科学フロンティア研究センター)
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院医学研究科ウイルス病原学分野)
  • 外丸 詩野(北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻病態解析学)
  • 中村 龍文(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染分子病態学)
  • 久保田 龍二(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科難治ウイルス病態制御研究センター)
  • 梅原 藤雄(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経内科・老年病学)
  • 齊藤 峰輝(金沢医科大学生体感染防御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-Iウイルス量増加がHAM発症の最大のリスクであるが、ウイルスを減少させる根治療法は確立されていない。本研究ではこれを可能にするHTLV-Iウイルス特異的プロテアーゼ阻害剤の開発を目指す。また、HTLV-I感染者からのHAM発症を予防するための、HAMの病態解明と発症予測に関する研究も行う。
研究方法
薬剤開発のために、新規HTLV-I特異的プロテアーゼ阻害剤の開発、HTLV-Iウイルス感染価定量法の開発、HAM疾患モデルの開発を行う。またHAM発症予防のために、HAM病態の解明、治療法の開発、HAM発症関連宿主遺伝子の同定並びに発症予測システムの開発を行う。
結果と考察
プロテアーゼ阻害剤であるKNI-10455を、HTLV-Iプロテアーゼの結晶構造をもとに分子モデリングを行った。その結果主構造を変化させる必要はなく、N末端アセチル基が阻害作用に重要であることが判明し側鎖の構造変換を推し進めた。酵素阻害活性を低下させずに、生体内で安定で、物性の優れた新規化合物KNI-10584、KNI-10605を、生体内で毒性なく適用できると考えられる5uMの濃度で強い酵素阻害活性をもつKNI-10562, KNI-10573、KNI-10617を得た。HTLV-Iプロテアーゼ阻害剤の酵素阻害活性の評価のためのウイルス感染価定量法、およびHAM動物モデルを確立した。プロスルチアミン点滴投与およびLactobacillus casei Shirota株内服による新規治療法の可能性を示した。発症機序に関してHAMの中枢神経内にHTLV-I感染CD4陽性細胞とHTLV-I特異的細胞傷害性Tリンパ球の浸潤と、それに続く周囲の神経系細胞の傷害が起こっていることを明らかにした。多数のHAM発症促進因子・抑制因子よりHAM発症リスク計算式を樹立し、感度92.1%、特異度85.6%の高感度でHAM発症を予測できることを明らかにした。
結論
本研究により、HTLV-Iプロテアーゼ阻害剤の開発は酵素阻害活性の観点よりはほぼ完成に近づいた。今後細胞レベルおよび動物モデルレベルでの効果判定を行い、人体投与可能となるためにさらに発展させることが必要である。またHAM病態解明および発症予測の研究はさらに進展した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-01-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200632019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-I)関連脊髄症(HAM)におけるHTLV-Iウイルスを減少させる新規治療法の開発と発症予防のための病態解明を行った。HTLV-I特異的プロテアーゼ阻害剤の開発を行い、生体内に投与可能な低濃度で強いプロテアーゼ酵素阻害活性をもつ化合物を得、ほぼ完成に近づいた。また病態解明はさらに進展した。これらの結果は多数の英文学術論文に発表した。
臨床的観点からの成果
発症予防のための多数のHAM発症関連宿主因子、ウイルス因子を同定し、HAM発症リスク計算式を作成した。この計算式を用いてHTLV-IキャリアからHAM発症高リスク群を抽出することが可能となり、今後HAMを発症しうる高リスクキャリア群への予防治療介入時期の判定が可能となった。またHAMの病態に即して、他の新たな治療法も開発した。これらの薬剤はすでに他の疾患で使用されているため、HAM患者に投与可能である。
ガイドライン等の開発
本研究は治療開発研究であり、ガイドライン等の作成は行わなかった。
その他行政的観点からの成果
HTLV-Iプロテアーゼ阻害剤の開発はもう一歩のところまで進み、完成すれば神経難病であるHAMの根治治療が可能となる。またHTLV-IキャリアからHAM発症高リスク群を抽出することが可能となった。薬剤が完成し、これらの高リスク群に投与できれば、全国に数万ともいわれるHTLV-Iキャリアからの新規HAM患者の発症を予防し、ひいては保健行政に資するところ大である。また、日本のみならず世界中にHTLV-I感染者は存在し、治療法および予防法の確立は世界の医療全体にも寄与することができる。
その他のインパクト
市民公開講座およびHAM患者会で講演を行い、研究の進捗状況等の啓発活動を行った。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
71件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
72件
学会発表(国際学会等)
35件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
市民公開講座等で啓発活動を行った。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Saito M, Usuku K, Nobuhara Y, et al.
Serum concentration and genetic polymorphism in the 5'-untraslated region of VEGF is not associated with susceptibility to HTLV-I associated myelopathy/tropical spastic paraparesis (HAM/TSP) in HTLV-I infected individuals.
J Neurol Sci. , 219 (1) , 157-161  (2004)
原著論文2
Sabouri AH, Saito M, Lloyd AL, et al.
Polymorphism in the interleukin-10 promoter affects both provirus load and the risk of human T lymphotropic virus type I-associated myelopathy/tropical spastic paraparesis.
J Infect Dis. , 190 (7) , 1279-1285  (2004)
原著論文3
Kodama D, Saito M, Matsumoto W, et al.
Longer dinucleotide repeat polymorphism in matrix metalloproteinase-9 (MMP-9) gene promoter which correlates with higher HTLV-I Tax mediated transcriptional activity influences the risk of HAM/TSP.
J Neuroimmunol. , 156 (1) , 188-194  (2004)
原著論文4
Maegawa H, Kimura T, Arii Y, et al.
Identification of peptidomimetic HTLV-1 protease inhibitors containing hydroxymethylcarbonyl (HMC) isostere as the transition-state mimic.
Bioorg. Med. Chem. Lett. , 14 (23) , 5925-5929  (2004)
原著論文5
Abe A, Ishizu A, Ikeda H, et al.
Bone marrow cells carrying the env-pX transgene play a role in the severity but not prolongation of arthritis in HTLV-I transgenic rats: a possible role of articular tissues carrying the transgene in the prolongation of arthritis.
Int J Exp Pathol , 85 , 191-200  (2004)
原著論文6
Fukushima N, Nishiura Y, Nakamura T, et al.
Involvement of p38 MAPK signaling pathway in IFN-gamma and HTLV-I expression in patients with HTLV-I-associated myelopathy/ tropical spastic paraparesis.
J Neuroimmunol , 159 , 196-2005  (2005)
原著論文7
Sabouri AH, Saito M, Usuku K, et al.
Differences in viral and host genetics risk factors for development of HTLV-1 associated myelopathy/tropical spastic papaparesis (HAM/TSP) between Iranian and Japanese HTLV-1 infected individuals.
J Gen Virol. , 86 (3) , 773-781  (2005)
原著論文8
Saito M, Eiraku N, Usuku K, et al.
ApaI polymorphism of vitamin D receptor gene is associated with susceptibility to HTLV-1 associated myelopathy/tropical spastic paraparesis (HAM/TSP) in HTLV-1 infected individuals.
J Neurol Sci. , 232 (1) , 29-35  (2005)
原著論文9
Matsuzaki T, Saito M, Usuku K, et al.
A prospective uncontrolled trial of fermented milk drink containing viable Lactobacillus casei strain Shirota in the treatment of HTLV-1 associated myelopathy/tropical spastic paraparesis.
J Neurol Sci. , 237 (1) , 75-81  (2005)
原著論文10
Yoshida A, Piroozmand A, Sakurai A, et al.
Establishment of a biological assay system for human retroviral protease activity.
Microbes and Infection , 7 (5) , 820-824  (2005)
原著論文11
Hayase H, Ishizu A, Ikeda H, et al.
Aberrant gene expression by CD25+CD4+ immunoregulatory T cells in autoimmune-prone rats carrying the human T cell leukemia virus type-I gene.
Int Immunol. , 17 (6) , 677-684  (2005)
原著論文12
Baba T, Ishizu A, Ikeda H, et al.
Chronic graft-versus-hostdisease-like autoimmune disorders spontaneously occurred in rats with neonatal thymus atrophy.
Eur J Immunol. , 35 (6) , 1731-1740  (2005)
原著論文13
Nobuhara Y, Usuku K, Saito M, et al.
Genetic variability in the extracellular matrix protein as a determinant of risk for developing HTLV-I-associated neurological disease.
Immunogenetics. , 57 (12) , 944-952  (2006)
原著論文14
Kamada, K., Igarashi, T., Martin M.A., et al.
Generation of HIV-1 derivatives that productively infect macaque monkey lymphoid cells
Proc. Natl. Acad. Sci. USA , 103 , 16959-16964  (2006)
原著論文15
Khamsri, B., Fujita, M., Kamada, K., et al.
Effects of lysine to arginine mutations in HIV-1 Vif on its expression and viral infectivity
Int. J. Mol. Med. , 18 , 679-683  (2006)
原著論文16
Miyatake Y, Ikeda Y, Ishizu A, et al.
Role of Neuronal IFN-gamma in the Development of Myelopathy in Rats Infected with Human T-cell Leukemia Virus Type 1.
Am J Pathol , 169 (1) , 189-199  (2006)
原著論文17
Baba T, Ishizu A, Iwasaki S, et al.
CD4+/CD8+ macrophages infiltrating at inflammatory sites: a population of monocytes/macrophages with a cytotoxic phenotype.
Blood , 107 (5) , 2004-2012  (2006)
原著論文18
Kamada, K., Yoshida, A., Khamsri, B., et al.
Construction of gag-chimeric viruses between HIV-1 and SIVmac that are capable of productive multi-cycle infection
Microbes Infect. , 8 , 1075-1081  (2006)
原著論文19
Saito M, Nose H, Usuku K, et al.
Flow cytometry evaluation of the T-cell receptor Vbeta repertoire among human T-cell lymphotropic virus type-1 (HTLV-1) infected individuals: effect of interferon alpha therapy in HTLV-1-associated myelopathy/tropical spastic paraparesis (HAM/TSP).
J Neurol Sci. , 246 (1) , 37-43  (2006)
原著論文20
Nose H, Saito M, Usuku K, et al.
Clinical symptoms and the odds of HAM/TSP in healthy virus carriers: application of best-fit logistic regression equation based on host genotype, age, and provirus load.
J Neurovirol. , 12 (3) , 171-177  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-