日中の過眠の実態とその対策に関する研究

文献情報

文献番号
200632013A
報告書区分
総括
研究課題名
日中の過眠の実態とその対策に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-016
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大川 匡子(滋賀医科大学 精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 大井田 隆(日本大学医学部 公衆衛生学)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部 精神神経医学講座)
  • 井上 雄一(代々木睡眠クリニック)
  • 三島 和夫(秋田大学 精神医学講座)
  • 宮崎 総一郎(滋賀医科大学 睡眠学講座)
  • 本橋 豊(秋田大学 公衆衛生学教室)
  • 内山 真(日本大学医学部 精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、日中の過度の眠気が作業・学習能率を低下させたり、うつ病などの心の健康問題と関連していることから、社会的損失として注目されている。
本研究の目的は、1)日中の過眠・眠気について生物学的背景を明らかにする。
2)過眠を正確、且つ簡便に評価する方法を確立する。
3)さまざまな集団における過眠症状と心の健康との関連性にちゅいての調査を行うことである。
 この研究成果をもとに学校、職場の環境・衛生の改善のために介入法を検討する。
研究方法
1)眠気の評価について日中にベンゾジアゼピン系睡眠薬を若年群と高齢群に服用させ継時的に自覚的眠気と精神運動機能を測定した。
2)企業検診時、男性労働者3,109名についてアンケ-ト調査により睡眠時無呼吸、自覚的眠気評価尺度(エプワ-ス)、高血圧、肥満度を調査し、さらに第2次スクリ-ニングとして各種機器を用いて眠気と夜間の呼吸動態を調査し、その関連性を検討した。
3)一般住民についての疫学的調査から寝酒、睡眠薬と睡眠、日中の眠気、うつ状態についての関連性を検討した。
4)高校生集団についてピッツバ-グ睡眠質問表、一般健康調査表、日常生活調査と午睡導入による介入研究。
5)看護師集団についての眠気、睡眠健康調査と事故調査。
6)糖尿病患者の眠気について調査。
結果と考察
眠気の評価について高齢者では客観的な精神運動機能の低下と主観的な眠気評価との間に埀離が生じやすく、このことが睡眠薬服用後日常生活上エラ-の危険性を高める一段となっている可能性もある。企業検診調査から過眠症状は自己評価の際に過小評価する傾向があり、睡眠時無呼吸症では自己評価(エスワ-プ)のみに依存することは危険であり多項目を評価する必要があることがわかった。
一般住民調査では寝酒と夜間覚醒、睡眠薬と抑うつ状態などが関連していた。
高校生集団では平日の睡眠時間が短く、慢性的な睡眠不足状態にあり日中の過剰な眠気を引き起こしていた。午睡を適当にとり入れることにより睡眠・生活習慣の改善と学習効率の向上がみられた。
看護師集団では睡眠・健康度が低く、日中の過眠や交代勤務が事故発生に関連する要因としてあげられた。
結論
学校、企業、医療職場において日中の眠気、過眠症状が心身の健康度と関連し、作業成績を低下させ、事故をひき起こす可能性が強いことが示唆された。
さらに介入成果を検討し教育現場に提言する。

公開日・更新日

公開日
2007-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200632013B
報告書区分
総合
研究課題名
日中の過眠の実態とその対策に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-016
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大川 匡子(滋賀医科大学 精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 大井田 隆(日本大学医学部 公衆衛生学)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部 精神神経医学講座)
  • 井上 雄一(代々木睡眠クリニック)
  • 三島 和夫(秋田大学 精神医学講座)
  • 宮崎 総一郎(滋賀医科大学 睡眠学講座)
  • 本橋 豊(秋田大学 公衆衛生学教室)
  • 内山 真(日本大学医学部 精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、日中の過度の眠気が作業・学習能率を低下させたり、うつ病などの心の健康問題と関連していることから、社会的損失として注目されている。
本研究の目的は、1)日中の過眠・眠気について生物学的背景を明らかにする。
2)過眠を正確、且つ簡便に評価する方法を確立する。
3)さまざまな集団における過眠症状と心の健康との関連性にちゅいての調査を行うことである。
 この研究成果をもとに学校、職場の環境・衛生の改善のために介入法を検討する。
研究方法
1)眠気の評価について日中にベンゾジアゼピン系睡眠薬を若年群と高齢群に服用させ継時的に自覚的眠気と精神運動機能を測定した。
2)企業検診時、男性労働者3,109名についてアンケ-ト調査により睡眠時無呼吸、自覚的眠気評価尺度(エプワ-ス)、高血圧、肥満度を調査し、さらに第2次スクリ-ニングとして各種機器を用いて眠気と夜間の呼吸動態を調査し、その関連性を検討した。
3)一般住民についての疫学的調査から寝酒、睡眠薬と睡眠、日中の眠気、うつ状態についての関連性を検討した。
4)高校生集団についてピッツバ-グ睡眠質問表、一般健康調査表、日常生活調査と午睡導入による介入研究。
5)看護師集団についての眠気、睡眠健康調査と事故調査。
6)糖尿病患者の眠気について調査。
結果と考察
眠気の評価について高齢者では客観的な精神運動機能の低下と主観的な眠気評価との間に埀離が生じやすく、このことが睡眠薬服用後日常生活上エラ-の危険性を高める一段となっている可能性もある。企業検診調査から過眠症状は自己評価の際に過小評価する傾向があり、睡眠時無呼吸症では自己評価(エスワ-プ)のみに依存することは危険であり多項目を評価する必要があることがわかった。
一般住民調査では寝酒と夜間覚醒、睡眠薬と抑うつ状態などが関連していた。
高校生集団では平日の睡眠時間が短く、慢性的な睡眠不足状態にあり日中の過剰な眠気を引き起こしていた。午睡を適当にとり入れることにより睡眠・生活習慣の改善と学習効率の向上がみられた。
看護師集団では睡眠・健康度が低く、日中の過眠や交代勤務が事故発生に関連する要因としてあげられた。
結論
学校、企業、医療職場において日中の眠気、過眠症状が心身の健康度と関連し、作業成績を低下させ、事故をひき起こす可能性が強いことが示唆された。
さらに介入成果を検討し教育現場に提言する。

公開日・更新日

公開日
2007-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200632013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
近年、夜間の睡眠障害が日本人の4?5人に1人として国民病としてとり上げられてきた。一方で昼間の眠気が抑うつ気分、意欲低下判断力低下、倦怠感など眠気と心身の健康の関連性が不明確であり、国民生活における眠気の実態が明らかにされていなかった。本研究では大規模疫学調査により若年者から高齢者まで、眠気の強度、頻度などを含め日常生活に支障を来していることが明らかにされた本邦初の報告が出された。
臨床的観点からの成果
夜間睡眠不足により日中の眠気が高度になるとともに一日の睡眠時間が短縮する。睡眠時間と関係する因子として抑うつ尺度が高く、気分と睡眠の有意な関連性が明らかになった。同様の関連性は糖尿病発症因子にもみられ本邦初の成果であり、心身の健康に睡眠が非常に重要であることを実証した。

ガイドライン等の開発
高校生集団にみられる強い眠気に対して介入研究を行い、昼休み15分の午睡を導入したところ眠気が減少し集中力、学習意欲の改善を認めた。このような成果をもとに高校生、学校向けにガイドラインとして「高校生のためのクラトスリ-プ 11か条」を作成し、今後の学生指導として開発した。全体的な成果を集成した形で「快適な睡眠をとるために」という一般教本を作成し正しい睡眠の知識啓発に共用する。
その他行政的観点からの成果
健康21の課題として運動、栄養、休養がとり上げられているが休養について十分な取組みがなされていない。このことが自殺率低下、生活習慣病減少の目標が達成できていないことに結びつくと考えられる。本研究から1日の睡眠時間を十分に確保できない人にうつ病や生活習慣病が多いという結果が得られたことは目標達成できていないことの裏づけとなる。この問題に対する本研究成果は行政に反映させるべきであろう。
その他のインパクト
交通事故が頻発しているわが国の社会情勢において、居眠り運転の事故についてのマスコミが本研究班の研究についてとり上げた。報道のポイントは眠気は単に睡眠時無呼吸だけでなく日常生活における睡眠不足をもっと重視すべきであるとの研究班の成果である。今後、企業管理者あるいは行政担当者には過重労働あるいは交代勤務体制などについて科学的背景の理解を促すべきである。
市民公開シンポジウム「すっきり目覚めて快適生活」というタイトルで東京津田ホ-ルにて開催し、研究班の成果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
33件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
58件
学会発表(国際学会等)
28件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
国土交通省からの問い合わせについての解答
その他成果(普及・啓発活動)
10件
市民公開講座、学校教育講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Satoh K, Mishima K, Inoue Y, et al.
Two pedigrees of familial advanced sleep phase syndrome in Japan.
Sleep , 26 , 416-417  (2003)
原著論文2
Katoh T, Echizenya M, MARUYAMA f, et al.
Diazepam-induced sedative effects follow the pattern of enhanced heat loss in humans.
Sleep and Biological Rhythms , 2 , 220-225  (2004)
原著論文3
Echizenya M, Mishima K, Satoh K, et al.
Enhanced heat loss and age-related hypersensitivity to diazepam.
J Clin Psychopharmacol , 24 , 639-646  (2004)
原著論文4
Yuasa T, Ishikawa T, Motohashi Y.
Sleep rhythm and biosocial rhythm of daily living in the community-dwelling elderly persons.
Akita J Public Health , 2 , 39-45  (2005)
原著論文5
Higuchi S, Motohashi Y, Maeda T, et al.
Relationship between individual difference in melatonin suppression by light and habitual bedtime. 
J Physiol Anthropol Appl Human Sci , 24 (4) , 419-423  (2005)
原著論文6
Higuchi S, Motohashi Y, Liu Y, et al.
Effects of playing a computer game using a bright display on presleep physiological variables, sleep latency, slow wave sleep and REM sleep.
J Sleep Res , 14 (3) , 267-273  (2005)
原著論文7
Iwamitsu Y, Shimoda K, Abe H, et al.
The relation between negative emotional suppression and emotional distress in breast cancer diagnosis and treatment. 
Health Commun , 18 (3) , 201-215  (2005)
原著論文8
Doi Y, Minowa M, Uchiyama M,
Sleep-medication for symptomatic insomnia in the general population of Japan.
Sleep and Biological Rhythms , 3 (3) , 149-157  (2005)
原著論文9
Pallos H, Gergely V, Yamada N, et al.
Explording the quality of sleep on long-term sojourn: international graduate students in Japan. 
Sleep and Biological Rhythms , 3 (3) , 142-148  (2005)
原著論文10
Hayakawa T, Uchiyama M, Kamei Y, et al.
Clinical analyses of sighted patients with non-24-hour sleep-wake syndrome: A study of 57 consecutively diagnosed cases.
Sleep , 28 (8) , 945-952  (2005)
原著論文11
Miyamoto T, Miyamoto M, Inoue Y, et al.
Reduced cardiac 123I-MIBG scintigraphy in idiopathic REM sleep behavior disorder.
Neurology , 67 (12) , 2236-2238  (2006)
原著論文12
Kawauchi A, Inoue Y, Hashimoto T, et al.
Restless legs syndrome in hemodialysis patients: health-related quality of life and laboratory data analysis.
Clin Nephrol, , 66 (6) , 440-446  (2006)
原著論文13
Enomoto M, Li L, Aritake S, et al.
Restless legs syndrome and its correlation with other sleep problems in the general adult population of Japan.
Sleep and Biological Rhythms , 4 , 153-159  (2006)
原著論文14
Asai T, Kaneita Y, Uchiyama M,
Epidemiological study of the relationship between sleep disturbances and somatic and psychological complaints among the Japanese general population.
Sleep and Biological Rhythms , 4 , 55-62  (2006)
原著論文15
Hiroki M, Kajimura N, Uema T, et al.
Effect of benzodiazepine hypnotic triazolam on relationship of blood pressure and Paco2 to cerebral blood flow during human non-rapid eye movement sleep.
J Neurophysiol , 95 , 2293-2303  (2006)
原著論文16
Kaneita Y, Ohida T, Uchiyama M, et al.
The relationship between depression and sleep disturbances: a nationwide general population survey.
J Clin Psychiatry , 67 , 196-203  (2006)
原著論文17
Iwamitsu Y, Ozeki Y, Konishi M, et al.
Psychological characteristics and the efficacy of hospitalization treatment on delayed sleep phase syndrome patients with school refusal. 
Sleep and Biological Rhythms , 5 , 15-22  (2007)
原著論文18
Tsuiki, S., Handa, S., Ohyama K
A simple method for evaluation of tongue position.
J Oral Rehab , 34 , 304-310  (2007)
原著論文19
Tuiki, S., Almeida F.R., Lowe, A.A., et al.
Undergraduate dental education on oral appliance therapy for obstructive sleep apnea at The University of British Columbia.
Sleep Biol Rhythms (印刷中)  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-