精神療法の実施方法と有効性に関する研究

文献情報

文献番号
200632011A
報告書区分
総括
研究課題名
精神療法の実施方法と有効性に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大野 裕(慶應義塾大学保健管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 衣笠 隆幸(広島市精神保健福祉センター)
  • 井上 和臣(鳴門教育大学教育臨床講座)
  • 坂野 雄二(北海道医療大学心理科学部)
  • 中村 敬(東京慈恵会医科大学附属第三病院精神神経科)
  • 中川 彰子(川崎医科大学精神神経科学教室)
  • 原田 誠一(原田メンタルクリニック)
  • 古川壽亮(名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学)
  • 山内 慶太(慶應義塾大学看護医療学部)
  • 岡本 泰昌(広島大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経医学)
  • 石井 朝子(社会福祉法人礼拝堂ミカエラ寮)
  • 村井 靖児(聖徳大学大学院音楽文化学科音楽療法コース)
  • 仲秋 秀太郎(八事病院精神科)
  • 熊野 宏昭(東京大学医学部附属病院心療内科)
  • 藤澤 大介(桜ヶ丘記念病院)
  • 仲本 晴男(沖縄県立総合精神保健福祉センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神療法の内容と本邦における実施状況を調査し、主要な精神疾患に関する精神療法の効果をマニュアルに準拠した形で検証する。

研究方法
1,精神療法全般についてその内容とエビデンスの質についてレビューした。
2,各種の精神疾患に対して、マニュアルに準拠した形で行われた精神療法の効果を検証した。
結果と考察
43種の精神療法的治療法の要約を作成し、行動療法・認知療法群及びメタ解析の数が10個以上あるもの(カウンセリング、集団療法、家族療法、ブリーフセラピー)を効果が示されていると判断した。うつ病、パニック障害、社会不安障害、強迫性障害、統合失調症に対して認知行動療法が有効である可能性が強く示唆された。うつ病に対するCBTのオープン試験では有意な改善を認められ、うつ症状の改善は面接3回目くらいから徐々に認められた。また、気分変調症より大うつ病障害で治療成績が良好であり、CBTと薬物療法を併用した群で有意にうつ症状の改善が認められた。集団CBTでも有意な改善が認められ、脳画像上も変化が認められた。パニック障害に対しては集団CBTが有効であり、社会不安障害に対しても、集団認知行動療法CBTおよび入院森田療法が効果的であった。強迫性障害では、薬物療法効果が認められなかった症例に行動療法を行ったところ、全例で効果が認められた。なお、統合失調症に対する音楽療法の効果に関しては、文献上は一定のエビデンスが得られているが、今回の研究からはとくに強いエビデンスは得られなかった。
結論
1,主要な精神療法の概要を作成したことにより、精神療法の内容について把握できるようになった。
2,主要な精神疾患に対する精神療法のマニュアルを作成し、一定の効果が実証されていることから、精神療法を含めた広い視野から今後の精神医療の計画を策定できる可能性が高まった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-19
更新日
-

文献情報

文献番号
200632011B
報告書区分
総合
研究課題名
精神療法の実施方法と有効性に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大野 裕(慶應義塾大学保健管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 衣笠 隆幸(広島市精神保健福祉センター)
  • 井上 和臣(鳴門教育大学臨床講座)
  • 坂野 雄二(北海道医療大学心理科学部)
  • 中村 敬(東京慈恵会医科大学附属第三病院精神神経科)
  • 中川 彰子(川崎医科大学精神神経科学教室)
  • 原田 誠一(原田メンタルクリニック)
  • 古川 壽亮(名古屋市立大学医学研究科精神・認知・行動医学分野)
  • 山内 慶太(慶應義塾大学看護医療学部)
  • 岡本 泰昌(広島大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経医学)
  • 石井 朝子(社会福祉法人ミカエル寮)
  • 村井 靖児(聖徳大学音楽文化学科音楽療法コース)
  • 仲秋 秀太郎(八事病院精神科)
  • 熊野 宏昭(東京大学医学部附属病院心療内科)
  • 仲本 晴男(沖縄県立総合精神保健福祉センター)
  • 藤澤 大介(桜ヶ丘記念病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
個々の精神療法の内容と効果のエビデンス、及びわが国にける実施状況レビューし、代表的な精神疾患に対する精神療法の有効性を検証した。
研究方法
43の精神療法のレビュー、本邦における精神療法の実施状況に関するアンケート調査、米英における精神療法の実施状況に関する調査を行い、うつ病、神経症性障害、アルコール依存、パーソナリティ障害など主要な精神疾患に対してマニュアルに基づく精神療法を実施し、その効果を検証した。
結果と考察
(1)欧米の研究では精神療法の中で認知行動療法がもっとも強いエビデンスを示しているが、わが国での実施状況を見ると、支持的精神療法、簡易精神療法が突出して高く、認知行動療法の施行は不十分であった。また、約40%の医療機関が精神療法の実施が十分でないと回答し、その理由として1.時間、2.診療報酬、3.スタッフの力量をあげていた。今後充実させたい精神療法の第1位は認知行動療法であった。この他に、英米の精神科医療における精神療法の現状を検証した。(2)主要な精神疾患に対する精神療法の効果に関して、うつ病では、マニュアルを活用した認知行動療法(個人、集団)で成果が上がる可能性が強く示唆された。パニック障害に対しても集団認知行動療法が効果的であり、とくに身体感覚への暴露が治療の有効性を高める可能性が強く示された。社会不安障害に関しては、集団認知行動療法及び入院森田療法で効果がある可能性が強く示された。強迫性障害に関しては、対照群を設定した研究を通して、行動療法に薬物療法にまさる効果があることが実証された。うつ病と強迫性障害に対する集団認知行動療法の成果は脳画像上の変化によっても確認された。統合失調症、アルコール依存、パーソナリティ障害に関しても認知行動療法に効果がある可能性が強く示唆された。なお、統合失調症に対する音楽療法の効果に関して、文献上は一定のエビデンスが得られているが、今回の研究からは強いエビデンスは得られなかった。
結論
1.主要な精神療法の概要を作成したことにより、精神療法の内容について把握可能になった。2.わが国における精神療法の全国的な状況と問題点が明らかになったことによって、今後の行政の対応を現状にもとづきながら検討することが可能になった。3.主要な精神疾患に対して精神療法を含めた広い視野から今後の精神医療の計画を策定できる可能性が確認された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200632011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
精神療法全般についてその内容とエビデンスの質、わが国における実施状況、米国および英国における精神療法の実施状況を調査し、うつ病、パニック障害、社会不安障害、強迫性障害、アルコール依存症、パーソナリティ障害、統合失調症に対する精神療法の効果についてオープン試験を通してマニュアルの有用性を検討した。
臨床的観点からの成果
うつ病、パニック障害、社会不安障害、アルコール依存症、パーソナリティ障害、統合失調症に対して認知行動療法が有効であることが強く示唆された。この他、社会不安障害には入院森田療法も効果的であり、強迫性障害には行動療法が薬物療法にまさる効果を示すことが示された。統合失調症に対する音楽療法の効果に関して、文献上は一定のエビデンスが得られているが、今回の研究からは強いエビデンスは得られなかった。
ガイドライン等の開発
うつ病に対する認知行動療法の患者教育用資料と治療マニュアル、慢性うつ病に対する認知行動分析精神療法の患者用マニュアル、パーソナリティ障害に対する弁証法的行動療法の患者用手引き作成した。
その他行政的観点からの成果
主要な精神療法の概要を作成したことにより、精神療法の内容について把握可能になった。わが国における精神療法の全国的な状況と問題点が明らかにされたことによって、今後の行政の対応を現状にもとづきながら検討することが可能になった。また、主要な精神疾患に対して精神療法を含めた広い視野から今後の精神医療の計画を策定できる可能性が確認された。
その他のインパクト
本研究の成果を第101回日本精神神経学会総会のシンポジウムの形で取り上げ報告した。本邦における精神療法の現状についての調査結果が朝日新聞で報道された(平成18年12月25日)。読売新聞の「病院の実力」シリーズが認知行動療法をテーマとして精神科領域で初めての特集を組んだ(平成19年4月1日)。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
28件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
27件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-