児童思春期精神医療・保健・福祉の介入対象としての行為障害の診断及び治療・援助に関する研究

文献情報

文献番号
200632006A
報告書区分
総括
研究課題名
児童思春期精神医療・保健・福祉の介入対象としての行為障害の診断及び治療・援助に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 万比古(国立精神・神経センター国府台病院リハビリテーション部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 豊爾(岡山県立岡山病院)
  • 奥村 雄介(関東医療少年院医務課)
  • 犬塚 峰子(東京都児童相談センター福祉局)
  • 近藤 直司(山梨県精神保健福祉センター)
  • 藤岡 淳子(国立大学法人大阪大学大学院人間科学研究科)
  • 市川 宏伸(東京都立梅ヶ丘病院)
  • 原田 謙(国立大学法人信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部)
  • 吉川 和男(国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部)
  • 冨田 拓( 国立武蔵野学院医務課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は児童思春期の「行為障害(conduct disorder: 以下CD)」概念を検討し、その精神疾患としての枠組みを明らかにすること、発現要因あるいは背景要因を解明すること、治療・対応に関する技法の開発、地域における機関間連携の設置・運用に関する検討を行うこと、それらを総合した実践的な診断・治療ガイドラインを作成することを目的とするとともに、治療・援助システムの整備及び予防策等の行政的対応の基礎資料を提供することも目指している。
研究方法
平成18年度も分担研究をMultisystemic therapy (MST)のわが国への導入を目指す研究とその他の研究の二部構成とし、さらに診断・治療ガイドライン作成の中心となる主任研究ワーキンググループが加わった三部構成で実施した。
結果と考察
CDの「発現要因および維持要因」に関しては、虐待および養育者の変更といった家庭要因と発達障害の存在が重要であることを明らかにし、18年度にはAD/HDの関与に加え、広汎性発達障害の特性もCDに関与していることを明らかにした。「診断・評価」についてはDSM-IV-TRやICD-10に基づく診断を半構造化した基準にしたがって実施すべきであることに加え、自記式のCDチェックリスト(Conduct Disorder Check List:以下CDCL )を用いて暴力型、虚言型、未分化型、混合型の下位分類を評価する意義があることが明らかとなった。特に混合型の予後の悪さは注目に値するものであった。「治療」については、まず性非行に対して自立支援施設で行った男女の治療教育プログラムの有効性が明らかになった。入院治療のような医療特有な受容的で柔らかな治療の枠組みの中でできる治療と、矯正施設のような枠組みの堅固な場でこそ成功する治療があることが示唆された。またCDの治療・援助は地域専門機関の連携システムを通じた複数の機関の関与が求められていること、中でも医療的な評価や高度の治療を求めるニードが非常に強く、子どもの精神疾患に専門性のある入院機能を持った医療機関の存在が連携システムに欠かせないことがわかった。
結論
以上のような結果を統合する形で研究班を挙げて「行為障害の診断・治療ガイドライン(案)」の作成に取り組んだ。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200632006B
報告書区分
総合
研究課題名
児童思春期精神医療・保健・福祉の介入対象としての行為障害の診断及び治療・援助に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 万比古(国立精神・神経センター国府台病院リハビリテーション部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 豊爾(岡山県立岡山病院)
  • 奥村 雄介(関東医療少年院医務課)
  • 犬塚 峰子(東京都児童相談センター福祉局)
  • 近藤 直司(山梨県精神保健福祉センター)
  • 藤岡 淳子(国立大学法人大阪大学大学院人間科学研究科)
  • 市川 宏伸(東京都梅ヶ丘病院)
  • 原田 謙(国立大学法人信州大学医学部付属病院子どものこころ診療部)
  • 吉川 和男(国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部)
  • 冨田 拓(国立武蔵野学院医務課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、3年間にわたって児童思春期の「行為障害(conduct disorder: 以下CD)」概念を検討し、その精神疾患としての枠組みを明らかにすること、発現要因あるいは背景要因を解明すること、治療・対応に関する技法の開発、地域における機関間連携システムの設置・運用に関する検討を行うこと、それらを総合した実践的な診断・治療ガイドラインを作成することを目指して実施した。
研究方法
平成18年度も分担研究をMultisystemic therapy (MST)のわが国への導入を目指す研究とその他の研究の二部構成とし、さらに診断・治療ガイドライン作成の中心となる主任研究ワーキンググループが加わった三部構成で実施した。
結果と考察
本研究から得られた結果と考察の概要は以下のとおりである。①作成したconduct disorder check list(CDCL)の標準化を果たした。CDCLは行為障害であるか否かの判別および類型化の有効な判別尺度であって、抽出した4類型の中で混合型が、特に反社会性人格障害への親和性を有していることを見出した。②性加害のリスクと治療教育の効果を評価するためのアセスメント・ツールと治療教育用のワークブックを作成し、性加害少年男子と性非行女子に各々独自に開発したプログラムによるグループワークを実施した。③児童相談所の非行相談対象者の再非行に関する研究から、養育者の変更を経験した子どもや虐待を受けた子どもは低年齢で非行行動を生じやすく、高率に心理的・精神的問題を抱えていること、援助の有効性が低いことなどを見出した。⑤思春期ひきこもりケースにみられる暴力の多くは、家庭内に限局した母子密着型の家庭内暴力であったが、ごく一部に、盗癖や放火などの犯罪性を伺わせるケースも見出した。⑥AD/HD症状や反抗はすべてのCD行動と強く相関しており、低い言語性知能は攻撃性と、PDD症状は嘘・盗み行動との相関が強いことなどがわかった。⑥CDなどに対応する地域専門機関の連携システムは医療機関を含むことが必須であることがわかった。⑦以上のような諸結果を統合する形で研究班を挙げて「行為障害の診断・治療ガイドライン(案)」を作成し、報告書に添付した。
結論
本研究は行為障害を児童・思春期の心の障害としてとらえることの意義と、そのための厳密な評価の必要性、様々な水準の介入の必要性を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200632006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
行為障害に関して、その精神疾患としての概念の明確化、診断及び評価法、治療・援助法等の広範な課題に研究班を組んで研究活動を行った。わが国においても行為障害は子どもの精神疾患として十分に深刻な疾患であり、また多くの要因が関与する複合的な現象を症候とする複雑な疾患でもあり、今後さらに学術的な検討を続ける意義の大きな対象であることを初めて示すことができた。
臨床的観点からの成果
行為障害は、被虐待体験を持つ子どもやある種の発達障害を持つ子どもに親和性があることを初めて示すとともに、行為障害が非社会性の際だつ引きこもりの子どもからも出てくる可能性を示した。これらの知見から、行為障害はどのような基礎要因にどのような負荷的環境要因が加わると二次的に形成されるものかが推測でき、治療・援助策としての家族機能への介入や、入院治療、矯正機関での治療的介入などの開発を促すことになる。児童思春期精神科医療の専門性を持った病院を含む地域連携システムによる対応の有効性も提示した。
ガイドライン等の開発
本研究は三年間の成果として「行為障害の診断・治療ガイドライン案」を作成し総合研究報告書に掲載した。本ガイドライン案はさらに有志による研究会での検討を通じてガイドラインもしくはガイドブックとして完成させ、何らかの形で社会へ公表する予定である。
その他行政的観点からの成果
発達障害や引きこもりなどをもたらす多くの子どもの精神疾患を解決困難にしている要因の一つが行為障害の併存である。しかも本研究により、行為障害の発現をいち早く察知し、早期に治療へ導入する意義が大きく、虐待をはじめとする家族要因が行為障害の発現に大きな役割を果たすことが明確になったので、発達障害支援や虐待対策、あるいは引きこもり支援において、行為障害発現の評価とそれへの対応に関する研修や、地域におけるこうした子どもの問題に対応する連携システムなどを設置する意義を示すことができた。
その他のインパクト
平成18年10月20日には第47回日本児童青年精神医学会総会のシンポジウム「反社会的問題行動を示す子どもたちへの支援」とシンポジウム「地域連携システムの可能性と問題点」が企画され、本研究班の研究成果を中心とする計7題の啓発的講演が行われた。

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
1件
Harada Y他による反抗挑戦性行動チェックリスト(ODBI)の標準化に関する論文。
その他論文(和文)
79件
本研究費の補助を受けたと明記した2006年発刊の藤岡淳子著「性暴力の理解と治療教育」(誠信書房)を含む。
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
61件
2006年代47回児童青年精神医学会総会での2シンポジウムは本研究班の研究成果を中心に組まれたものであった。
学会発表(国際学会等)
2件
2004年8月の世界児童青年精神医学会総会(ベルリン)での発表。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
30件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-