DNAチップを用いたうつ病の診断と病態解析

文献情報

文献番号
200632002A
報告書区分
総括
研究課題名
DNAチップを用いたうつ病の診断と病態解析
課題番号
H16-こころ-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大森 哲郎(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本長久(国立精神・神経センター)
  • 橋本亮太(大阪大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
34,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 神経伝達物質、サイトカイン、ホルモンなどのストレス反応と関連する遺伝子1500種のmRNAの発現量を、白血球を試料として一括解析するDNAチップを開発した。ストレスに鋭敏に反応する測定系となることを確認し、予備的検討からうつ病患者においても特有の変化を認めた。本研究の目的は、うつ病患者白血球内の遺伝子発現パターンを解析し、日常診療でも使用可能なうつ病の診断指標を確立すること、および病態研究にも応用することである。
研究方法
 同意を得た未治療うつ病患者および他の精神疾患患者の症状を評価し、静脈血を採血し、RNAとDNAを抽出した。DNAチップによる網羅的なmRNA測定のほか、特定遺伝子の発現をリアルタイムRT-PCRで測定した。一部の遺伝子に関しては多型関連解析を施行した。未治療時および治療後において発現量の変動する遺伝子を検索した。平成18年度からは、性・年齢をマッチさせた対照者と比較するチップ(2色法)から、対照者の不要なチップ(1色法)に解析方法を切り替えて検討を続けた。
結果と考察
 DNAチップ(2色法)よるmRNA発現解析研究から、1)うつ病未治療例において、全例にほぼ共通して発現の増減する遺伝子群が存在すること、2)発現増減遺伝子の一部は、症状改善後に回復すること、3)所見は疾患特異的であり、統合失調症の所見とは重ならず、急性ストレス時の変化とも異なること、を見出した。46名を対象とした1色法による検討によっても、同様の所見を得た。
リアルタイムRT-PCR法による検討により、うつ病未治療時には、セロトニントランスポーター、LIM 、HDAC5 、CREBなどうつ病の病態に重要な関与を持つと推定される分子のmRNA発現に変動があり、治療後に正常化することが判明した。統合失調症例においても一部の遺伝子発現に変動を認めたが、その変動はうつ病とは異なっていた。
結論
 白血球内mRNA発現を指標として、うつ病を健康成人および他の精神疾患から識別できること、および治療経過にそった変化が捉えられることを示した。実用型DNAチップを開発し、うつ病の早期診断と治療評価への応用を目指して研究を進めている。

公開日・更新日

公開日
2007-05-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200632002B
報告書区分
総合
研究課題名
DNAチップを用いたうつ病の診断と病態解析
課題番号
H16-こころ-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大森 哲郎(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 誠一(国立精神・神経センター武蔵病院(2004,2005))
  • 岡本 長久(国立精神・神経センター武蔵病院(2006))
  • 橋本 亮太(国立精神・神経センター武蔵病院(2004,2005)大阪大学(2006))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 経伝達物質、サイトカイン、ホルモンなどのストレス反応と関連する遺伝子1500種のmRNAの発現量を、白血球を試料として一括解析するDNAチップを開発した。ストレスに鋭敏に反応する測定系となることを確認し、予備的検討からうつ病患者においても特有の変化を認めた。本研究の目的は、うつ病患者白血球内の遺伝子発現パターンを解析し、日常診療でも使用可能なうつ病の診断指標を確立すること、および病態研究にも応用することである。
研究方法
 同意を得た未治療うつ病患者および他の精神疾患患者の症状を評価し、静脈血を採血し、RNAとDNAを抽出した。上述のDNAチップによる網羅的なmRNA測定のほか、特定遺伝子の発現をリアルタイムRT-PCRで測定した。一部の遺伝子に関しては多型関連解析を施行した。未治療時および治療後において発現量の変動する遺伝子を検索した。平成18年度からは、性・年齢をマッチさせた対照者と比較するチップ(2色法)から、対照者の不要なチップ(1色法)に解析方法を切り替えて検討を続けた。
結果と考察
 DNAチップ(2色法)よるmRNA発現解析研究から、1)うつ病未治療例において、全例にほぼ共通して発現の増減する遺伝子群が存在すること、2)発現増減遺伝子の一部は、症状改善後に回復すること、3)所見は疾患特異的であり、統合失調症の所見とは重ならず、急性ストレス時の変化とも異なること、を見出した。ついで行った1色法による検討では、発現変動する24遺伝子を指標とすると、うつ病群と健常群の差異がもっとも顕著となり、82.6%の感度でうつ病を正しく判定できた。また、リアルタイムRT-PCR法による検討により、うつ病未治療時には、セロトニントランスポーター、LIM 、HDAC5 、CREBなどうつ病の病態に重要な関与を持つと推定される分子のmRNA発現に変動があり、治療後に正常化することが判明した。統合失調症例においても一部の遺伝子発現に変動を認めたが、その変動はうつ病とは異なっていた。
結論
 白血球内mRNA発現を指標として、うつ病を健康成人および他の精神疾患から識別できること、および治療経過にそった変化が捉えられることを示した。実用型DNAチップを開発し、うつ病の早期診断と治療評価への応用を目指して研究を進めている。

公開日・更新日

公開日
2007-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200632002C