文献情報
文献番号
200631006A
報告書区分
総括
研究課題名
上気道及び下気道アレルギーの臓器過敏性における臓器特異的免疫基盤の解明と早期治療法の開発
課題番号
H16-免疫-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 逸夫(国保旭中央病院アレルギー・リウマチセンター)
研究分担者(所属機関)
- 谷口 正実(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
- 福田 健(獨協医科大学)
- 岡本 美孝(千葉大学大学院医学研究院)
- 田村 弦(東北大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班は、気管支喘息の気道過敏性の発症機構の解明と早期診断法の開発を主な目的とした。
研究方法
この目的達成のため、1)気管支喘息の気道過敏性におけるアレルギー性気道炎症の役割、2)アスピリン喘息の気道過敏性、アスピリン感受性に及ぼす上気道アレルギーの影響、3)上気道アレルギーの下気道過敏性への影響、4)3次元CTによる気道病理形態学的評価法の開発と気道リモデリングによる過敏性発症機構、5)アレルギー性気道炎症の制御機構を解析した。
結果と考察
1)軽症喘息における気道過敏性部位をインパルスオッシレーション法を用い評価した。軽症喘息では、安定時の気道抵抗は非喘息群と比較し変化を認めなかったが、アセチルコリン吸入による気道収縮は、末梢気道抵抗が優位に上昇することが明らかとなった。したがって、喘息の早期診断には、末梢気道の過敏性を評価することが重要である。
2)アスピリン喘息(AIA)の気道過敏性、アスピリン感受性について、AIAに合併する鼻茸の手術もしくはステロイド内服治療により、尿中LTE4が著明に減少した。鼻茸手術は、喘息症状と下気道過敏性を有意に改善し、アスピリン感受性も顕著に抑制した。これらから、鼻茸から産生されるCys-LTsが、AIAの下気道過敏性だけでなく、アスピリン感受性にも関与していることが示された。
3)気管支喘息に合併する副鼻腔炎では、好酸球浸潤を認め、Th2サイトカインの発現、Th2細胞浸潤が優位で、喘息と共通の病態、病因の存在が示唆される。
4)気道リモデリングによる過敏性発症機構を明らかにするため、マルチスライスCT画像から気道を連続的かつ自動的に評価する方法を確立した。これにより数値流体力学解析を用いることで、肺気道形状と呼吸機能、更に気道過敏性との関係について解析することが可能となった。
5)Th1細胞分化のmaster regulatorであるT-betがTh2細胞分化およびアレルギー性好酸球性気道炎症の抑制のみでなく、Th17細胞分化および好中球性気道炎症の抑制にも深く関与していることが明らかとなり、重症喘息の病態にT-betの機能障害が関与している可能性が示唆される。
2)アスピリン喘息(AIA)の気道過敏性、アスピリン感受性について、AIAに合併する鼻茸の手術もしくはステロイド内服治療により、尿中LTE4が著明に減少した。鼻茸手術は、喘息症状と下気道過敏性を有意に改善し、アスピリン感受性も顕著に抑制した。これらから、鼻茸から産生されるCys-LTsが、AIAの下気道過敏性だけでなく、アスピリン感受性にも関与していることが示された。
3)気管支喘息に合併する副鼻腔炎では、好酸球浸潤を認め、Th2サイトカインの発現、Th2細胞浸潤が優位で、喘息と共通の病態、病因の存在が示唆される。
4)気道リモデリングによる過敏性発症機構を明らかにするため、マルチスライスCT画像から気道を連続的かつ自動的に評価する方法を確立した。これにより数値流体力学解析を用いることで、肺気道形状と呼吸機能、更に気道過敏性との関係について解析することが可能となった。
5)Th1細胞分化のmaster regulatorであるT-betがTh2細胞分化およびアレルギー性好酸球性気道炎症の抑制のみでなく、Th17細胞分化および好中球性気道炎症の抑制にも深く関与していることが明らかとなり、重症喘息の病態にT-betの機能障害が関与している可能性が示唆される。
結論
これらの成果から、気管支喘息のアレルギー性気道炎症及び気道リモデリンを感度良く、早期に検出することが可能となり、気道過敏性の早期診断に有用である。さらに、それらアレルギー性気道炎症及び気道リモデリングの発症維持に関与する分子群、細胞群をターゲットとする新しい治療薬開発の可能性が示唆される。
公開日・更新日
公開日
2007-07-13
更新日
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