B型及びC型肝炎ウイルス感染者における新たな発がん予防法の確立のための肝がん発生等の病態解明に関する研究

文献情報

文献番号
200630002A
報告書区分
総括
研究課題名
B型及びC型肝炎ウイルス感染者における新たな発がん予防法の確立のための肝がん発生等の病態解明に関する研究
課題番号
H16-肝炎-一般-015
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
林 紀夫(大阪大学大学院 医学系研究科消化器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 義人(京都府立医科大学 医学系研究科 消化器病制御学)
  • 井廻 道夫(昭和大学 医学部 第二内科 )
  • 榎本 信幸(山梨大学 医学工学総合研究部 消化器内科学)
  • 各務 伸一(愛知医科大学 医学部 消化器内科 )
  • 加藤 宣之(岡山大学 医歯薬学総合研究科 腫瘍制御学 )
  • 金子 周一(金沢大学 医学系研究科 がん遺伝子治療学)
  • 小池 和彦(東京大学 医学部 感染症内科)
  • 坪内 博仁(鹿児島大学 医歯学総合研究科 健康科学専攻人間環境学講座)
  • 松浦 善治(大阪大学 微生物病研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス肝炎からの肝発がんにはウイルスによる宿主細胞機能の修飾とウイルス感染に伴う免疫学的な変調が関与している。本研究課題の目的は1)C型肝炎ウイルスによる宿主細胞機能の修飾を培養細胞レベルおよび個体レベルで解析しこれを発がん抑止法の開発に結びつけていくこと、2)肝がんにみられる特徴的な遺伝子発現を網羅的に明らかにし標的治療法の探索を行うこと、3)肝がんでみられる自然免疫・獲得免疫応答の特徴を明らかにし免疫治療の開発および新規の診断手法の開発を行うことである。
研究方法
1)HCVレプリコンシステム、HCVコアトランスジェニックマウス。
2)ヒト肝組織のマイクロアレイ解析、ヒト血清のSELDI-TOF-MS解析。
3)ELISA、sMICA/B解析、ELISPOTによるCD8陽性T細胞機能解析、その他免疫細胞機能解析。
結果と考察
3年計画の最終年度に当たる本年度において、HCV増殖に関与する宿主因子FKBP8の同定、脂質合成経路をターゲットとした増殖抑制法の具体的な薬剤候補の提示、HCVコア蛋白による脂肪化のメカニズムの解明、HCV複製に伴う宿主細胞での遺伝子発現変化の網羅的解析、HCV感染・肝がんに特徴的な高発現遺伝子群の同定、血清プロテオーム解析による肝がんの新規診断マーカーとしてのC3aの同定、ガンキリンによる肝細胞のがん化メカニズムの解明、NK細胞機能抑制分子としての可溶型MICA/Bの臨床的意義の解明、CD8免疫モニタリングシステムの臨床応用などの各分野において成果が得られた。
結論
肝がん発生を抑止するためのもっとも有効な手段はHCV感染を終息させることである。本年度の研究により宿主因子であるFKBP8が新規の治療ターゲットになることが示され、また脂質代謝に関連する既存の薬剤が抗HCV活性をもつことが示された。また、HCVによる発がんのメカニズムとして脂質代謝の重要性がHCVコアによるin vitroの解析およびマイクロアレイ解析から示された。肝がんに関連する血清マーカーとしてC3aがプロテオーム解析により同定され、また免疫機能分子である可溶型MICA/Bの臨床的意義が明らかにされた。肝がんにおける免疫モニタリングシステムが構築され、肝がんに対する特異的免疫動態を詳細に解析する手法が得られた。

公開日・更新日

公開日
2007-03-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200630002B
報告書区分
総合
研究課題名
B型及びC型肝炎ウイルス感染者における新たな発がん予防法の確立のための肝がん発生等の病態解明に関する研究
課題番号
H16-肝炎-一般-015
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
林 紀夫(大阪大学大学院 医学系研究科消化器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 井廻 道夫(昭和大学 医学部 第二内科)
  • 榎本 信幸(山梨大学 医学工学総合研究部 消化器内科学)
  • 各務 伸一(愛知医科大学 医学部 消化器内科)
  • 加藤 宣之(岡山大学 医歯薬学総合研究科 腫瘍制御学)
  • 金子 周一(金沢大学 医学系研究科 がん遺伝子治療学)
  • 小池 和彦(東京大学 医学部 感染症内科)
  • 坪内 博仁(鹿児島大学 医歯学総合研究科 健康科学専攻人間環境学講座)
  • 松浦 善治(大阪大学 微生物病研究所 )
  • 伊藤 義人(京都府立医科大学 医学研究科 消化器病制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス肝炎からの肝発がんにはウイルスによる宿主細胞機能の修飾とウイルス感染に伴う免疫学的な変調が関与している。本研究課題の目的は1)C型肝炎ウイルスによる宿主細胞機能の修飾を培養細胞レベルおよび個体レベルで解析しこれを発がん抑止法の開発に結びつけていくこと、2)肝がんにみられる特徴的な遺伝子発現を網羅的に明らかにし新規の診断マーカーや標的治療法の探索を行うこと、3)肝がんでみられる自然免疫・獲得免疫応答の特徴を明らかにし免疫治療の開発および新規の診断手法の開発を行うことである。
研究方法
HCVレプリコンシステム、HCV Tgマウス、マイクロアレイ解析、SELDI-TOF-MS解析、ELISA、ELISPOT、免疫細胞機能解析。
結果と考察
1)HCV感染に伴う宿主細胞機能の修飾とその治療的介入
SPPによるHCVコア蛋白の成熟メカ二ズムの解明。コア蛋白によるがん抑制遺伝子SOCS-1の機能阻害と個体レベルでの意義の解明。コア蛋白による脂肪化の新規のメカニズムの解明。HCV NS5Aと相互作用する宿主因子VAP-B、FKBP8の同定と機能的意義の解明。脂質合成経路の阻害によるHCV増殖抑制の発見。ミトコンドリア保護による肝脂肪化改善機構の解明。
2)HCV感染・肝がんにおけるトランスクリプトーム/プロテオーム解析と新規標的治療法・診断法の開発
ヒト肝組織の病態における発現遺伝子の特徴の解明。感度・特異度がすぐれた肝がん判別法を確立。肝がんにおけるがん遺伝子gankyrinの機能的意義の解明。
3)HCV感染・肝がんにおける自然免疫応答と獲得免疫応答の解析および血清診断マーカーの開発
肝がん細胞のNK細胞に対する感受性がMICA/B-NKG2D活性化経路、HLA-E-NKG2A抑制経路のバランスにより規定されていることの発見。C型肝炎におけるNKG2Aレセプター過剰発現の発見とその意義の解明。肝硬変・肝がんにおける可溶型MICA/Bの増加とその意義の解明。樹状細胞の成熟と獲得免疫応答の形成におよぼすNK細胞の意義の解明。HCV関連肝がんの血清マーカーとしてC3aの同定およびSHAP-Aの有用性の示唆。肝がんに対する免疫モニタリングシステムの整備。
結論
ウイルス性肝炎からの肝発がんおよび進展における分子・免疫病態について多くの新規の知見が創出された。

公開日・更新日

公開日
2007-03-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200630002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HCVコア蛋白の成熟機構を解明した。HCVコア蛋白による脂質代謝障害の分子機構を明らかにし、脂質代謝と肝がん発生の関連を示した。肝がんで発現する遺伝子の特徴を明らかにし、がん標的治療の候補としてガンキリンの可能性を示した。C型肝炎・肝がんにおけるNK細胞の機能異常のメカニズムをNKレセプターとそのリガンドの観点から解明した。肝がんに対する特異的免疫応答の存在を明らかにした。
臨床的観点からの成果
既存の高コレステロール血症治療薬、骨粗鬆症治療薬が抗HCV活性を示すことを明らかにした。肝がんの新規のバイオマーカーの候補としてsMICA/B、C3、SHAP-Aを抽出した。SELDIプロテインチップシステムを用いて感度・特異度が優れた肝がん判別法を確立した。肝がんの治療前後での免疫モニタリングシステムを構築した。ALT値を低減させることが肝がん発生を抑止するために有用であることを疫学的に示した。
ガイドライン等の開発
該当事項なし。
その他行政的観点からの成果
該当事項なし。
その他のインパクト
該当事項なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
48件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Masanori Ikeda, Ken-ichi Abe, Masashi Yamada, et al,
Different Anti-HCV Profiles of Statins and Their Potential for Combination Therapy With Interferon
Hepatology , 44 , 117-125  (2006)
原著論文2
Kazuhito Naka, Hiromichi Dansako, Naoya Kobayashi, et al.
Hepatitis C virus NS5B delays cell cycle progression by inducing interferon-β via Toll-like receptor3 signaling pathway without replicating viral genomes
Virology , 346 , 348-362  (2006)
原著論文3
Kazuhito Naka, Ken-ichi Abe, Kazunori Takemoto, et al.
Epigenetic silencing of interferon-inducible genes is implicated in interferon resistance of hepatitis C virus replicon-harboring cells
Journal of Hepatology , 44 , 869-878  (2006)
原著論文4
Kousuke Nakai, Toru Okamoto, Tomomi Kimura-Someya, et.al
Oligomerization of Hepatitis C Virus Core Protein Is Crucial for Interaction with the Cytoplasmic Domain of E1 Envelope Protein
Journal of Virology , 80 , 11265-11273  (2006)
原著論文5
Toru Okamoto, Yorihiro Nishimura, Tohru Ichimura, et al.
Hepatitis C virus RNA replication is regulated by FKBP8 and Hsp90
The EMBO Journal , 25 , 5015-5025  (2006)
原著論文6
Hironobu Miyamoto, Kohji Moriishi, Kyoji Moriya, et al.
Involvement of the PA28γ-Dependent Pathway in Insulin Resistance Induced by Hepatitis C Virus Core Protein
Journal of Virology , 81 , 1727-1735  (2007)
原著論文7
Kazuhiko Koike, Kunihisa Tsukada, Hiroshi Yotsuyanagi, et al.
Prevalence of coinfection with human immunodeficiency virus and hepatitis C virus in Japan
Hepatology Research , 37 , 2-5  (2007)
原著論文8
Kohji Moriishi, Rika Mochizuki, Kyoji Moriya, et al.
Critical role of PA28{gamma}in hepatitis C virus-associated steatogenesis and hepatocarcinogenesis
PNAS , 104 , 1661-1666  (2007)
原著論文9
Tetsuo Takehara, Takahiro Suzuki, Kazuyoshi Ohkawa, et al.
Viral covalently closed circular DNA in a non-transgenic mouse model for chronic hepatitis B virus replication
Journal of Hepatology , 44 , 267-274  (2006)
原著論文10
Naoki Hiramatsu, Tsugiko Oze, Natsuko Tsuda, et al.
Should aged patients with chronic hepatitis C be treated with interferon and ribavirin combination therapy?
Hepatology Research , 35 , 185-189  (2006)
原著論文11
Tsugiko Oze, Naoki Hiramatsu, Nao Kurashige, et al.
Early decline of hemoglobin correlates with progression of ribavirin-induced hemolytic anemia during interferon plus ribavirin combination therapy in patients with chronic hepatitis C
Journal of Gastroenterology , 41 , 862-872  (2006)
原著論文12
Tetsuo Takehara, Akio Uemura, Tomohide Tatsumi, et al.
Natural killer cell-mediated ablation of metastatic liver tumors by hydrodynamic injection of IFNα gene to mice
International Journal of Cancer , 120 , 1252-1260  (2007)
原著論文13
Masahisa Jinushi, Tetsuo Takehara, Tomohide Tatsumi, et al.
Natural killer cell and hepatic cell interaction via NKG2A leads to dendritic cell-mediated induction of CD4+ CD25+ T cells with PD-1-dependent regulatory activities
Immunology , 120 , 73-82  (2006)
原著論文14
Tomohide Tatsumi, Tetsuo Takehara, Shinjiro Yamaguchi, et al.
Intrahepatic Delivery of α-Galactosylceramide-Pulsed Dendritic cells Suppresses Liver Tumor
Hepatology , 45 (1) , 22-30  (2007)
原著論文15
Kazunori Kusumoto, Hirofumi Uto, Katsuhiro Hayashi, et al.
Interleukin-10 or tumor necrosis factor-α polymorphisms and the natural course of hepatitis C virus infection in a hyperendemic area of Japan
Cytokine , 34 , 24-31  (2006)
原著論文16
Robert Suruki, Katsuhiro Hayashi, Kazunori Kusumoto, et al.
Alanine aminotransferase level as a predictor of hepatitis C virus-associated hepatocellular carcinoma incidence in a community-based population in Japan
International Journal of Cancer , 119 , 192-195  (2006)
原著論文17
Hirofumi Uto, Katsuhiro Hayashi, Kazunori Kusumoto, et al.
Spontaneous elimination of hepatitis C virus RNA in individuals with persistent infection in a hyperendemic area of Japan
Hepatology Research , 34 , 28-34  (2006)

公開日・更新日

公開日
2016-07-11
更新日
-