B型及びC型肝炎ウイルスの新たな感染予防法の確立のための感染病態解明に関する研究

文献情報

文献番号
200630001A
報告書区分
総括
研究課題名
B型及びC型肝炎ウイルスの新たな感染予防法の確立のための感染病態解明に関する研究
課題番号
H16-肝炎-一般-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
河田 純男(山形大学医学部 消化器病態制御内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 一幸(岩手医科大学 第一内科)
  • 佐田 通夫(久留米大学医学部 第二内科学)
  • 田中 榮司(信州大学医学部 内科学第二)
  • 加藤 道夫(国立大阪医療センター 消化器科)
  • 荒瀬 康司(虎の門病院 消化器内科)
  • 青山 正明(山形県産業技術振興機構 RADIAプロジェクト)
  • 新澤 陽英(山形県立日本海病院 消化器内科)
  • 冨樫 整(山形大学医学部 消化器病態制御内科学)
  • 齋藤 貴史(山形大学医学部 消化器病態制御内科学)
  • 林 純(九州大学大学院医学研究院 感染環境医学)
  • 今井 康陽(市立池田病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型及びC型肝炎ウイルスの感染病態を解明するために、本研究班ではとくに感染成立にかかわるウイルス要因と遺伝素因に着目した。
研究方法
(1) B型肝炎では低ウイルス量の感染病態を検討するために、新規蛋白定量法であるラジカルイムノアッセイ法を応用したHBs抗原の超微量自動化測定法を開発した。
(2) C型肝炎ではウイルス感染感受性遺伝子を明らかにし、感染防御さらには治療法開発へ資することを目指している。具体的にはHCV抗体陽性者をRNA陽性(持続感染者)とRNA陰性(既感染者)に分け、生体防御にかかわる遺伝子のSNPについて検索した。
(3) HCV genotype 1bにおいて、HCV NS3領域のN-末端120アミノ酸残基を決定し、その2次構造よりAグループとBグループに分け、臨床的意義について検討した。
結果と考察
(1) HBs抗原自然消失例を検討し、これらの症例で長期間にわたり血中に低濃度HBが持続することが明らかとなった。また、海外(エジプト)症例について検討により、ラジカルイミュノアッセイ法は潜在性B型肝炎の臨床的意義を解明する上で有用であると考えられた
(2) SNP解析の結果、感染感受性遺伝子として、HCVが肝細胞表面に最初に吸着するヘパラン硫酸プロテオグリカンへ硫酸基を転移する一酵素をコードする遺伝子、コレステロール生合成系の一酵素をコードする遺伝子に着目し、機能解析を含めてHCV感染感受性への関与について検索した。また、プロラクチンがHCV感染における免疫担当ホルモンとして作用していることを明らかにした。
(3) HCV genotype 1bにおいて、高発がん株が存在することを見出した。HCV NS3領域のアミノ酸残基を決定し、その2次構造よりAグループとBグループに分け、Bグループで有意に累積発がん率が高いことを示した。
結論
(1) 私どもが新規開発したラジカルイミュノアッセイ法は、国内外を問わず、B型肝炎ウイルスの感染病態の解明に役立つことを明らかにした。
(2) C型肝炎ウイルス感受性候補遺伝子をSNP解析から抽出し、今年度はコレステロール生合成に関与するTM7SF2遺伝子とProlactin(PRL)遺伝子を解析し、両遺伝子はHCV感染感受性(防御)に関わっている可能性を明らかにした。
(3) HCV genotype 1bにおけるNS3領域のサブグループの中に高発がん性のものがあることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2007-05-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200630001B
報告書区分
総合
研究課題名
B型及びC型肝炎ウイルスの新たな感染予防法の確立のための感染病態解明に関する研究
課題番号
H16-肝炎-一般-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
河田 純男(山形大学医学部 消化器病態制御内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 一幸(岩手医科大学 第一内科)
  • 佐田 通夫(久留米大学医学部 第二内科)
  • 田中 榮司(信州大学医学部 内科学第二)
  • 加藤 通夫(国立大阪医療センター 消化器科)
  • 荒瀬 康司(虎の門病院 消化器内科)
  • 青山 正明(山形県産業技術振興機構 RADIAプロジェクト)
  • 新澤 陽英(山形県立日本海病院 消化器内科)
  • 冨樫 整(山形大学保健管理センター)
  • 斎藤 貴史(山形大学医学部 消化器病態制御内科学)
  • 林 純(九州大学大学院研究院 感染環境医学)
  • 今井 康陽(市立池田病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型及びC型肝炎ウイルスは慢性化し、長年月を経て肝硬変に進展し、更に肝細胞がんの発症に至る。B型及C型肝炎ウイルスの感染病態を解明するために、本研究班ではとくに感染成立にかかわるウイルス要因と遺伝素因に着目した。本プロジェクトにおいて、B型及びC型肝炎ウイルス感染病態を解明し、国民の保健・医療・福祉の向上に寄与することを目的とする。
研究方法

(1) HBs抗原の超微量自動化測定法を開発し、国内外で低濃度B型肝炎ウイルス感染病態を明らかにする。
(2) HBVコア関連抗原(HBcr抗原)測定の開発を行う。
(3) 急性B型肝炎の慢性化機序を解明する。
(4) C型肝炎ウイルス感染防御にかかわる遺伝子のSNPについて検索する。
(5) HCV genotype 1bにおいて、HCV NS3領域のN-末端120アミノ酸残基の2次構造の差から、臨床的意義について検討した。
(6) C型肝炎に関する疫学調査と感染病態を解明する。
結果と考察

(1) 低濃度HBs抗原測定は、潜在性B型肝炎ウイルスの診断に有用であった。
(2) HBcr抗原測定により、ラミブジン中止後の肝炎再燃を予測できた。
(3) B型急性肝炎の慢性化に関わる遺伝子型はA、F及びHであった。
(4) C型肝炎感染感受性に関わる候補として10遺伝子を見出した。
(5) HCV遺伝子型IbのNS3領域の解析から、高発がん性のウイルスの存在を推定した。
(6) インスリン抵抗性は、肝細胞癌の予後を規定する因子であった。
(7) C型肝炎における酸化ストレス評価にHODE、7-OHChが有用であった。
結論
B型及びC型肝炎ウイルスの感染病態を解明するため、感染成立に関わるウイルス要因と遺伝素因について検討した。
(1) 超高感度全自動化HBs抗原分析装置を開発し、その特異性を確認した。HBV DNA 10コピー/ml以下の低ウイルス量の血液においてもHBs抗原が検出できる可能性を示し、潜在性B型肝炎の病態解明に役立つことが推測された。
(2) HCV genotype 1bにおけるNS3領域のサブグループの中に高発がん性のものがあることが示唆された。
(3) C型肝炎ウイルス感受性候補遺伝子をSNP解析から抽出し、特許申請を行った。

公開日・更新日

公開日
2007-05-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
200630001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新規のB型肝炎ウイルス診断法を確立した。本法により、潜在性B型肝炎の簡便な診断法となることを明らかにした。HCV RNA持続陽性に関わる遺伝子のSNPについて解析した。10遺伝子の多型性が、HCV感染防御に関わっていると推測された。また、C型肝炎ウイルス(1b)に高発がん株が存在することを世界に先駆け報告した。その成果について、論文発表がなされた。本プロジェクトは、B型及びC型肝炎ウイルスの新たな感染病態解明に直結し、高い学術的評価を得られた。
臨床的観点からの成果
B型肝炎ウイルス感染後の慢性化要因を解析し、①免疫抑制剤使用、②遺伝子型A、FおよびH、③ALT値が1000IU/L未満の症例であることを明らかにした。またB型慢性肝炎では、①ラミブジン治療における早期反応群は非早期反応群に比し、HBV DNA量が有意に低値で、AST/ALT値は有意に高値であり、②ラミブジン中止してもHBcr抗原の上昇がない症例はラミブジン中止が可能であることを明らかにした。C型肝炎患者の耐糖能異常の機序を解明した。
ガイドライン等の開発
3ヵ年にわたる研究班での成果から、ガイドライン等の開発はない。今回の研究により臨床的にも有意義な成果が得られたので、今後ガイドライン等の開発のきっかけとしたい。
その他行政的観点からの成果
本プロジェクトの成果を遵守してB・C型肝炎ウイルス感染病態を解明することにより、次に起こる肝病態を予測できるので、国民に提供する医療の質の向上に直結する。C型肝炎ウイルス慢性化に関わる候補遺伝子の同定により、C型肝炎ウイルス感染防止・治療のための創薬開発の第一歩となる。また本プロジェクトの成果より、B型・C型肝炎に対し科学的根拠に基づいたより適切な治療法の選択がなされ、国民の健康・医療・福祉の向上に寄与することが期待される。
その他のインパクト
アラブ・エジプト共和国の進行したC型肝炎患者において、低濃度HBs抗原陽性率は、92%と驚異的に高値であった。C型肝炎の進展にB型肝炎が関与していると考えられるが、その病因の解明と、開発途上国への医療面での支援が必要であると考えられる。国際誌への論文発表、国内外の学会での発表、市民公開講座等により、研究成果を情報提供する。また、企業等との連携により、低濃度HBs抗原測定法の普及、C型肝炎ウイルスの感染防止・治療への創薬に努めたい。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
114件
その他論文(和文)
38件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
500件
学会発表(国際学会等)
150件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
特許:「C型肝炎ウイルス感染者の経過に関する遺伝子およびその利用」〔特願2004-13667  識別番号:No. 504026465〕
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
30件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tanaka Y, Takahashi K, Orito E, et al.
Molecular tracing of Japan-indigenous hepatitis E viruses
J Gen Virol , 87 (4) , 949-954  (2006)
原著論文2
Misawa N, Matsumoto A, Tanaka E, et al.
Patients with and without loss of hepatitis B virus DNA after hepatitis B e antigen seroconversion have different virological characteristics
J Med Virol , 78 (1) , 68-73  (2006)
原著論文3
Rokuhara A, Matsumoto A, Tanaka E, et al.
Hepatitis B virus RNA is measurable in serum and can be a new marker for monitoring lamivudine therapy
J Gastroenterol , 41 (8) , 785-790  (2006)
原著論文4
Tanaka E, Matsumoto A, Suzuki F, et al.
HBV Core-Related Antigen Study Group. Measurement of hepatitis B virus core-related antigen is valuable for identifying patients who are at low risk of lamivudine resistance
Liver Int , 26 (1) , 90-96  (2006)
原著論文5
Hiramatsu N, Oze T, Tsuda N, et al.
Should aged patients with chronic hepatitis C be treated with interferon and ribavirin combination therapy?
Hepatol Res , 35 (3) , 185-189  (2006)
原著論文6
Oze T, Hiramatsu N, Kurashige N, et al.
Early decline of hemoglobin correlates with progression of ribavirin-induced hemolytic anemia during interferon plus ribavirin combination therapy in patients with chronic hepatitis C
J Gastroenterol , 41 (9) , 862-862  (2006)
原著論文7
Suzuki F, Akuta N, Suzuki Y, et al.
Clinical and virological features of non-breakthrough and severe exacerbation due to lamivudine-resistant hepatitis B virus mutants
J Med Virol , 78 (3) , 341-352  (2006)
原著論文8
Arase Y, Ikeda K, Suzuki F, et al.
Long-term outcome after hepatitis B surface antigen seroclearance in patients with chronic hepatitis B
Am J Med , 119 (1) , 9-16  (2006)
原著論文9
Akuta N, Suzuki F, Sezaki H, et al.
Predictive factors of virological non-response to interferon-ribavirin combination therapy for patients infected with hepatitis C virus of genotype 1b and high viral load
J Med Virol , 78 (1) , 83-90  (2006)
原著論文10
Kobayashi M, Akuta N, Suzuki F, et al.
Virological outcomes in patients infected chronically with hepatitis B virus genotype A in comparison with genotypes B and C
J Med Virol , 78 (1) , 60-67  (2006)
原著論文11
Ikeda K, Arase Y, Saitoh S,
Anticarcinogenic impact of interferon on patients with chronic hepatitis C: a large-scale long-term study in a single center
Intervirology , 49 (1) , 82-90  (2006)
原著論文12
Kobayashi M, Suzuki F, Akuta N, et al.
Response to long-term lamivudine treatment in patients infected with hepatitis B virus genotypes A, B, and C
J Med Virol , 78 (10) , 1276-1283  (2006)
原著論文13
Uka K, Suzuki F, Akuta N, et al.
Efficacy of interferon monotherapy in young adult patients with chronic hepatitis C virus infection
J Gastroenterol , 41 (5) , 470-475  (2006)
原著論文14
Koyama R, Arase Y, Ikeda K, et al.
Efficacy of interferon therapy in elderly patients with chronic hepatitis C
Intervirology , 49 (3) , 121-126  (2006)
原著論文15
Ikeda K, Arase Y, Kobayashi M, et al.
A long-term glycyrrhizin injection therapy reduces hepatocellular carcinogenesis rate in patients with interferon-resistant active chronic hepatitis C: a cohort study of 1249 patients
Dig Dis Sci , 51 (3) , 603-609  (2006)
原著論文16
Sezaki H, Suzuki F, Hosaka T, et al.
Long-term follow-up of HBeAg-positive young adult Japanese patients treated with corticosteroid withdrawal therapy for chronic hepatitis B
Intervirology , 49 (6) , 339-345  (2006)
原著論文17
Ikeda K, Arase Y, Saitoh S, et al.
Long-term outcome of HBV carriers with negative HBe antigen and normal aminotransferase
Am J Med , 119 (11) , 977-985  (2006)
原著論文18
Kobayashi M, Ikeda K, Hosaka T, et al.
Dysplastic nodules frequently develop into hepatocellular carcinoma in patients with chronic viral hepatitis and cirrhosis
Cancer , 106 (3) , 636-647  (2006)
原著論文19
Ikeda K, Arase Y, Saitoh S, et al.
Prediction model of hepatocarcinogenesis for patients with hepatitis C virus-related cirrhosis. Validation with internal and external cohorts
J Hepatol , 44 (6) , 1089-1097  (2006)
原著論文20
Zhang B, Maeda N, Okada K, et al.
Association between fast-migrating low-density lipoprotein subfraction as characterized by capillary isotachophoresis and intima-media thickness of carotid artery
Atherosclerosis , 187 (1) , 205-212  (2006)

公開日・更新日

公開日
2016-07-11
更新日
-