電算機的アプローチを活用したRNaseH活性を標的とするHIV-1複製阻害剤開発に関する研究(若手育成型)

文献情報

文献番号
200629031A
報告書区分
総括
研究課題名
電算機的アプローチを活用したRNaseH活性を標的とするHIV-1複製阻害剤開発に関する研究(若手育成型)
課題番号
H18-エイズ-若手-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
駒野 淳(国立感染症研究所エイズ研究センター第3室)
研究分担者(所属機関)
  • 星野 忠次(千葉大学・大学院薬学研究院・物理化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズ患者/HIV-1感染者の救済は厚生労働省に求められる重要な緊急課題の一つである。近年、多剤併用療法に抵抗性を示す薬剤耐性ウイルスが世界的に蔓延の兆しを見せており、日本も例外ではない。これに対し迅速かつ有効な対応策の一つは新規抗HIV薬の開発を推進することである。新規抗HIV薬開発が重要である3つの主な理由は、ワクチン開発の早急な実現が困難、既存の抗エイズ薬と併用による効果増強、薬剤耐性ウイルスに対しても治療効果が期待できるためである。HIV-1の逆転写酵素が持つRNaseH活性の阻害剤は未だ実用化されていない。我々は3年間の開発期間中に電算機によるタンパク質立体構造解析手法を有効に活用し、RNaseHを標的とするHIV複製阻害剤の開発を行う。
研究方法
小分子化合物ライブラリーからRNaseH活性を阻害するものをスクリーニングして阻害剤先導化合物を得る。RNase Hドメイン立体構造と先導化合物とのドッキングシミュレーションを行う。実験結果と電算機シミュレーション結果を相互に比較して酵素-阻害剤結合モデルを導出する。並行してリード化合物のウイルス複製への影響を測定する実験系の樹立を行う。
結果と考察
RNase H活性を簡便かつ迅速に測定する実験系の樹立に成功し、これを用いて2万の小分子化合物ライブラリーからRNase H活性を抑制する化合物を3種類同定した。本実験系はウイルス学的解析だけでなく、B型肝炎ウイルスに対する複製阻害剤開発にも応用できると考えられる。実験データと電算機ドッキングシミュレーションを相互に比較することにより、先導化合物が酵素活性中心に配位することが示唆された。阻害剤の最適化やRNase H阻害剤耐性ウイルスの解析への貢献が期待される。HIV複製阻害を迅速かつ感度よく検出・定量する実験系を確立した。これはRNase H阻害剤だけでなく、中和抗体を含む抗ウイルス活性物質の評価への応用が期待できる。
結論
RNase H阻害剤スクリーニング系を樹立し、構造の異なる複数のRNase H阻害剤リード化合物を同定した。電算機による立体構造解析データに基づく第一次最適化を施行し、誘導体化合物の中に抗HIV活性を有しるものを同定した。実験データと電算機解析を並行して行うことにより、短期間で薬剤最適化の方向性が示された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-