アジア・太平洋地域におけるHIV・エイズの流行・対策状況と日本への波及に関する研究

文献情報

文献番号
200629025A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア・太平洋地域におけるHIV・エイズの流行・対策状況と日本への波及に関する研究
課題番号
H18-エイズ-一般-016
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
武部 豊(国立感染症研究所エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 駒野 淳(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 草川 茂(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 椎野 禎一郎(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 近藤真規子(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 加藤 真吾(慶応大学医学部 微生物学教室)
  • 花房 秀次(荻窪病院 血液科)
  • 小島 洋子(大阪府立公衆衛生研究所 ウイルス課)
  • 千々和 勝己(福岡県保健環境研究所 保健科学部ウイルス課)
  • 澤田 幸治(北海道立衛生研究所 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
分子疫学手法を用いた我が国とアジア諸地域におけるHIV感染症 の最新動向の解析とそれによる研究・政策提言
研究方法
(1) 国内外の共同研究ネットワークをベースとするHIV感染症の 分子疫学的調査研究。(2) アジア型HIV-1株の分離と全ゲ ノム情報に関するデータベースの拡充。(3) 血友病感染者コホー ト(花房)における長期未発症者と中和抗体との関連性を解析。
結果と考察
[アジアにおける新規動向](1) CRF07_BCによるIDU間の outbreak(台湾)。 (2)サブタイプB'とCRF01_AE間 の組換え型流行株[CRF15, CRF34 (タイ); CRF33 (マレー シア)]の出現。(3) 売血による感染者からの一般集団へ の侵淫拡大の兆候(中国東北部)などの新知見が得られた(武部)。
[我が国における新規動向]我が国全体では、感染者の75%程度 がサブタイプB, 約20%がCRF01_AEと考えられるが、 東京・大阪などの大都市圏ではBが優勢である(貞升・小島・ 千々和)。(1) しかし神奈川県では、CRF01_AEが 40%近くまで拡大していること(近藤)。さらに特筆すべき知見とし て。我が国中央地域でCRF01_AEの極めて特徴的なクラスターが発 見され、アジアとのつながりが明確に示された。(3) CRF01_AE感 染の広がりを反映して、CRF01_AEとBの間の新たなタイプ の組換えウイルスが3種はじめて報告された(近藤・加藤・武部)。一 方、(3) 我が国はじめての日本人HIV-2感染者が同定さ れ、ウイルス分離とその遺伝子解析がなされた(草川)。これに関連し て、(4) HIV-2ウイルスRNA量測定のための高感度・高精度 の測定系が開発された(加藤)。
[血友病コホート]我が国血友病患者にみられる長期未発症者の中に極 めて高いしかもクロス・クレードの中和抗体力価をもつ感染者が有意に 高い頻度で見出されることが明らかにされた(駒野・花房・加藤)。こ れは、エイズ発症に対して中和抗体が防御的に働くことを示す極めて重 要な知見と考えられる。
結論
(1) 分子疫学的アプローチによって、我が国を含むアジア地域における エイズ流行の最新動向が明らかにされた。
(2) エイズ未発症血友病患者の約30%に広範なHIV-1株感 染を強力に阻止する中和抗体を見いだし、今後の抗体医薬・ワクチン開 発に重要な示唆を与えた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-18
更新日
-