リケッチア感染症の国内実態調査及び早期診断体制の確立による早期警鐘システムの構築

文献情報

文献番号
200628043A
報告書区分
総括
研究課題名
リケッチア感染症の国内実態調査及び早期診断体制の確立による早期警鐘システムの構築
課題番号
H18-新興-一般-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岸本 壽男(国立感染症研究所ウイルス第一部第五室)
研究分担者(所属機関)
  • 猪熊 壽(帯広畜産大学畜産学部獣医学科臨床獣医学講座)
  • 大橋 典男(静岡県立大学 環境科学研究所)
  • 高田 伸弘(福井大学医学部病因病態医学講座)
  • 川端 寛樹(国立感染症研究所細菌第一部第四室)
  • 堤 寛(藤田保健衛生大学医学部第一病理学)
  • 岩崎 博道(福井大学医学部病態制御医学講座内科学(1)領域)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所ウイルス第一部第五室)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 藤田博己(大原綜合病院附属大原研究所)
  • 倉田 毅(富山県衛生研究所)
  • 田原 研司(島根県保健環境科学研究所保健科学部)
  • 古屋 由美子(神奈川県衛生研究所微生物部)
  • 山本 正悟(宮崎県衛生環境研究所微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
つつが虫病(以下TD)、増加する日本紅斑熱(以下JSF)、新たなリケッチア症、エーリキア症やアナプラズマ症(以下ED、AD)等への対応のため、疫学、検査診断、予防治療の研究を総合的に進め、リケッチア症の国内実態解明、早期診断と警鐘システムを構築する。
研究方法
TD、JSF発生状況の集約、マダニ等ベクター、病原体、動物の全国調査、国内侵入の点からアジア大陸の現地調査を実施した。医師の本症の認知度を調査した。診断ツール候補抗原、免疫組織染色法を検討した。TDとJSFの現行検査法の検証改良を行い、AD、EDの新規遺伝子検出法を試みた。重篤例とイヌ感染実験で病態解析を行なった。
結果と考察
患者把握から地理的条件の再検討の必要性が分かり、ハザード地図作成のための推定感染地の野外調査からTD、JSFの新知見を集積、疫学調査の重要性が再確認された。野外材料から新規紅斑熱群菌種を検出、犬猫の調査でJSF症例のない地域の個体でR.japonica特異抗体が確認され、マダニからAD病原体A.phagocytophilumが検出された。近隣国でもアジア大陸共通紅斑熱の情報を得た。医師の認知度に差があり、調査と啓発方法の改善が必要である。診断ツール候補RickAを解析、材料作成と臨床応用の準備を行った。生検組織等の免疫染色によるJSF迅速診断法にはより特異性の高い抗体が必要である。TD遺伝子検出系では感度が低いGilliam型PCRを改良して検出感度を上げ、血清診断系では反応性の違いを示した。AD、EDのRealTimePCR等の新規開発で基礎的成績を得た。ベクター同定は、情報集約と野外データの補完で難しいマダニ同定の要点を整理、表と画像による迅速同定法を示した。症例の重症度を層別化、サイトカイン変動との関連性検討の前段階である。JSF剖検例の病理学的解析では皮膚と対照的に内臓病変の炎症反応が軽く、血管内皮に抗原が証明された。JSFイヌ感染実験では血清抗体価は上昇したが、身体所見の異常はなく追加検討する。
結論
リケッチア症の近年の国内情報は不足し、患者や病原体の新知見が初年度から得られたことより、患者、ベクター、病原体等の情報収集・解析を進める必要がある。新情報の利用が患者発生の予防啓発に役立つことが期待される。検査診断の改良と新規開発、集積症例の病態解析と治療への還元が迅速な診断と治療に繋がる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
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