野生動物由来狂犬病およびリッサウイルス感染症の汚染把握を目的とした国際疫学調査

文献情報

文献番号
200628036A
報告書区分
総括
研究課題名
野生動物由来狂犬病およびリッサウイルス感染症の汚染把握を目的とした国際疫学調査
課題番号
H18-新興-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 健夫(日本大学生物資源科学部獣医衛生学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤琢也(日本大学生物資源科学部獣医衛生学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国は、現在、狂犬病の清浄国であるが、2006年11月に36年ぶりに国内で患者が発生し、本病が再興感染症となる危険性がある。海外の狂犬病発生地域から本病の侵入を阻止するためには、コウモリをはじめ野生動物の間で病原体が維持されている実態、特に不明な点が多い森林型狂犬病の感染環および自然宿主を明らかにする必要がある。したがって、我が国周辺諸国ならびに常在国で多発している本病に対して、疫学情報が乏しい地域を選定し、野生動物由来狂犬病および類似疾患であるリッサウイルス感染症の疫学調査を行った。
研究方法
ブラジルの共同研究拠点および各地の診断センターの協力を得て、コウモリをはじめキツネ等の野生動物の狂犬病ウイルス試料を確保した。また、中国の北東部、北西部および南部において、共同研究者の協力を得て疫学調査を行った。南部の広西自治区では野外狂犬病のウイルス試料を確保し、そのウイルスからゲノムRNAを抽出し、それらの遺伝子および系統樹解析を行った。
結果と考察
1)ブラジルにおけるウシ分離株の遺伝子系統は、地域に依存した複数のウイルスグループによって構成され、各グループの分布は吸血コウモリの分布地域を反映した。
2)ブラジル北部の森林地帯で流行したヒト狂犬病の分子疫学的調査の結果、その発生の多くが吸血コウモリに由来したが、同時に同地域ではイヌ由来の狂犬病が発生していた。
3)ブラジル北東部に生息するキツネは、既知のイヌ型狂犬病株と異なる遺伝子系統のウイルスを保有していることが示唆された。
4)ヒトおよびイヌ狂犬病が多発している中国南部において、家畜から分離された狂犬病ウイルスはイヌ株由来であることが明らかになった。
結論
1)ブラジルの家畜狂犬病に代表される吸血コウモリ由来狂犬病の流行阻止には、地域ごとの吸血コウモリ集団の制御が有効であることが示唆された。多様性が認められる野生動物由来狂犬病ウイルスの疫学的背景を明らかにするには、今後、さらに広範な疫学調査が必要であると判断された。
2)イヌの予防接種および繋留措置等が不十分な地域では、野生動物のみならずイヌにおける対策が本病の制御を図る上で不可欠であることが再認識された。
3)ヒトおよびイヌ狂犬病が多発している中国南部では、イヌを宿主および伝播動物とする都市型狂犬病対策がその予防に重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
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