厚生労働省多目的コホート班との共同による糖尿病実態及び発症要因の研究

文献情報

文献番号
200624016A
報告書区分
総括
研究課題名
厚生労働省多目的コホート班との共同による糖尿病実態及び発症要因の研究
課題番号
H16-循環器等(生習)-028
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
門脇 孝(東京大学大学院医学系研究科内科学専攻 糖尿病・代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 光彦(国立国際医療センター内分泌代謝科、臨床検査部)
  • 井上 真奈美(国立がんセンター がん予防・検診研究センター予防研究部)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科 生物統計学)
  • 上島 弘嗣(滋賀医科大学福祉保健医学講座)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病センター予防検診部)
  • 佐藤 眞一(大阪府立健康科学センター健康測定部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病対策は生活習慣病克服の大きなテーマである。本研究では糖尿病の実態を、コホート調査により、糖尿病発症と生活習慣との関係や、循環器疾患、脳卒中や発癌に対するリスクとしての視点から分析し、さらに、糖尿病の発症率を明らかにすることを目的としている。
研究方法
「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」班の維持するコホートにおいて、糖尿病をエンドポイントとし、発症率と発症要因を検討するため、平成10-12年度および5年後(平成15-17年度)に質問票及びHbA1c、血糖値の測定による調査を行った。また、糖尿病を曝露要因とし、がんや大血管合併症の発症との関連を調査するため、同コホートにおける疾患登録システムによる罹患データを参照し解析を行う。
結果と考察
本年度は特に糖尿病を曝露要因として発癌との関連を調査した。1048474人・年の追跡期間(平均追跡期間は10.7年)において、全体で6422名の癌発症を同定した(うち、男性3907名 女性2555名)。Cox比例ハザードモデルを用いて検討したところ、男性について、癌全体における自己申告糖尿病の年齢・地域調整(保健所単位)後ハザード比は1.30(95%信頼区間(CI):1.17-1.45)であり、上記に加えて脳卒中の既往、虚血性心疾患の既往、喫煙、エタノール摂取量、BMI、余暇の運動頻度、緑色野菜、コーヒー摂取頻度を調整した場合のハザード比は1.27(95%CI:1.14-1.42)であった。部位別にみると、肝癌、腎癌、膵癌、結腸癌について有意なリスク上昇を示した。女性について、年齢・地域調整(保健所単位)後ハザード比1.24(95%CI:1.01-1.50)であり、さらに男性同様の多変量調整後のハザード比は1.21(95%CI:0.99-1.47)であった。ただし、部位別にみると、女性において肝癌・胃癌に有意なリスク上昇が認められた。以上、男性については糖尿病が癌全体のリスクとなることが示されたが、女性については有意でないもののその傾向を認めた。他のコホート研究と異なる点もあり、例えば男性の腎癌のリスクを上昇させることが示された点は新しい知見である。今後糖尿病が発癌リスクとなるメカニズムをさらに検討する必要がある。
結論
糖尿病が癌全体の発症リスクを男性で27%、女性で21%程度上昇させることが判明した。

公開日・更新日

公開日
2007-10-29
更新日
-

文献情報

文献番号
200624016B
報告書区分
総合
研究課題名
厚生労働省多目的コホート班との共同による糖尿病実態及び発症要因の研究
課題番号
H16-循環器等(生習)-028
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
門脇 孝(東京大学大学院医学系研究科内科学専攻 糖尿病・代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 光彦(国立国際医療センター内分泌代謝科、臨床検査部)
  • 井上 真奈美(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 予防研究部)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科 生物統計学)
  • 上島 弘嗣(滋賀医科大学 福祉保健医学講座)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病センター 予防検診部)
  • 佐藤 眞一(大阪府立健康科学センター 健康度測定部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病対策は生活習慣病克服の大きなテーマである。本研究では糖尿病の実態を、コホート調査により、糖尿病発症と生活習慣との関係や、循環器疾患、脳卒中や発癌に対するリスクとしての視点から分析し、さらに、糖尿病の発症率を明らかにすることを目的としている。
研究方法
「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」班の維持するコホートにおいて、糖尿病をエンドポイントとし、発症率と発症要因を検討するため、平成10-12年度および5年後(平成15-17年度)に質問票及びHbA1c、血糖値の測定による調査を行った。また、糖尿病を曝露要因とし、がんや大血管合併症の発症との関連を調査するため、同コホートにおける疾患登録システムによる罹患データを参照し解析を行う。
結果と考察
二戸保健所・横手保健所・佐久保健所・石川保健所地域(コホートI)における10年間での糖尿病発症率および糖尿病発症要因の解析を行った。解析対象は男性12913名、女性15980名の合計28893名である。10年間での自己申告糖尿病発症率は男性全体で5.4%、女性全体で3.0%となり、40-59歳という中年層では男性が女性の約2倍の発症率を示した。発症率に大きな地域差は認められなかった。発症に有意に関連する危険因子の解析では、年齢・body-mass index(肥満度)・高血圧・糖尿病の家族歴が独立して有意な危険因子であった。また、喫煙について、現在一日20本以上喫煙している場合は男女とも糖尿病のリスクが有意に上昇し、男性のリスク比は非喫煙者に対して1.37、女性では2.94であった。女性の喫煙の研究が非常に少なかったが、本研究によってそれが明らかとなったことの意義は大きい。飲酒については、肥満者と非肥満者で効果が異なり、BMI22以下の標準もしくはやせ型の男性においては、飲酒による糖尿病発症リスクが上昇し、特にエタノール換算で49g/日以上の場合にリスク比が2.89と著しく上昇することが判明した。さらに、糖尿病を曝露要因として発癌との関連を検討したところ、糖尿病が癌全体の発症リスクを男性で27%、女性で21%程度上昇させることが判明した。
結論
糖尿病発症率、発症に関わる生活習慣が明らかになり、特に日本人においてエビデンスの少なかった女性に関するデータを得た。また糖尿病が発癌の危険因子となることが示された。

公開日・更新日

公開日
2007-10-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200624016C