食後血糖上昇の抑制による心筋梗塞二次予防に関する大規模薬剤介入臨床研究

文献情報

文献番号
200624008A
報告書区分
総括
研究課題名
食後血糖上昇の抑制による心筋梗塞二次予防に関する大規模薬剤介入臨床研究
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-021
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
北風 政史(国立循環器病センター臨床研究開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター)
  • 中谷 敏(国立循環器病センター)
  • 山岸 正和(金沢大学大学院 医学研究科)
  • 金 智隆(国立循環器病センター)
  • 吉政 康直(国立循環器病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血糖の上昇は酸化ストレスを引き起こすことが知られており、食後高血糖のみがすでに大血管障害のリスクとなり、心筋梗塞の発症リスクを高めることがわかっている(Donahue RP, et al. Diabetes 36: 689-692,1987)。そこで心筋梗塞後の症例に対して、αグルコシダーゼ阻害薬により食後の血糖上昇を抑えることが、心筋梗塞二次予防につながると考え我々は本研究を立案した。当該患者数が相当数にのぼる治療法は、当然のことながら検討段階から安全な薬剤の使用が必須である。われわれが考慮しているαグルコシダーゼ阻害薬は、血中には原則取り込まれず、消化管にとどまり糖分の吸収を抑える薬剤であるため、幅広い患者層への適用が可能であると考えられる。
研究方法
心筋梗塞後患者の食後の血糖上昇を抑えることが、心筋梗塞二次予防につながると考え、我々は本研究を立案した。本研究は急性心筋梗塞で入院した症例に対してαグルコシダーゼ阻害薬を投与し、その心血管イベントの抑制効果の有無を全国100施設と共同した多施設大規模臨床試験にて検討する。
結果と考察
H18年度は、目標症例数を目指しエントリーを推進した。今後も目標症例数の4000症例までエントリーを継続する予定である。現在までの登録症例の観察では心臓死・急性心筋梗塞発症症例は全体として12症例であり急性心筋梗塞を扱ったJ-WIND1試験より少ないイベント発生率となっていた。割付群別ではαGI群4例、対照群8例(p=0.25)でありαGI群でイベント発生が少ない傾向にあった。
結論
かかる結果より、以下の結果が期待される。
1.心筋梗塞の二次予防により慢性心不全患者の増加を抑制できれば、厚生行政面においては大幅な医療費抑制効果が期待され、また医療面においては患者のQOLの著明な改善、健康寿命の延長が期待できる。
2.包括医療制度の導入により急性心筋梗塞を含めた心血管イベントの発症数の減少は、そのまま医療費の抑制につながる。
目標症例数と予定観察期間が達成されていないが、αGI群においてイベントが少ない傾向が認められており、本研究の完遂が待たれるところである。

糖利用の正常化は、新しい心血管疾患の治療法になりうると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200624008B
報告書区分
総合
研究課題名
食後血糖上昇の抑制による心筋梗塞二次予防に関する大規模薬剤介入臨床研究
課題番号
H16-循環器等(生習)-一般-021
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
北風 政史(国立循環器病センター臨床研究開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター)
  • 中谷 敏(国立循環器病センター)
  • 山岸 正和(金沢大学大学院 医学研究科)
  • 金 智隆(国立循環器病センター)
  • 吉政 康直(国立循環器病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業【がん、心筋梗塞、脳卒中を除く】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血糖の上昇は酸化ストレスを引き起こすことが知られており、食後高血糖のみがすでに大血管障害のリスクとなり、心筋梗塞の発症リスクを高めることがわかっている(Donahue RP, et al. Diabetes 36: 689-692,1987)。そこで心筋梗塞後の症例に対して、αグルコシダーゼ阻害薬により食後の血糖上昇を抑えることが、心筋梗塞二次予防につながると考え我々は本研究を立案した。当該患者数が相当数にのぼる治療法は、当然のことながら検討段階から安全な薬剤の使用が必須である。われわれが考慮しているαグルコシダーゼ阻害薬は、血中には原則取り込まれず、消化管にとどまり糖分の吸収を抑える薬剤であるため、幅広い患者層への適用が可能であると考えられる。
研究方法
心筋梗塞後患者の食後の血糖上昇を抑えることが、心筋梗塞二次予防につながると考え、我々は本研究を立案した。本研究は急性心筋梗塞で入院した症例に対してαグルコシダーゼ阻害薬を投与し、その心血管イベントの抑制効果の有無を全国100施設と共同した多施設大規模臨床試験にて検討する。
結果と考察
マウスTACモデルおよび慢性非虚血性心不全症例においてボグリボースが心不全を改善することが示唆された。また臨床研究では、目標症例数を目指しエントリーを推進した。今後も目標症例数の4000症例までエントリーを継続する予定である。現在までの登録症例の観察では心臓死・急性心筋梗塞発症症例は全体として12症例であり急性心筋梗塞を扱ったJ-WIND1試験より少ないイベント発生率となっていた。割付群別ではαGI群4例、対照群8例(p=0.25)でありαGI群でイベント発生が少ない傾向にあった。
心機能と生体の糖利用は密接な関係にあることが基礎医学の成果として明らかになりつつあったが本研究では臨床的にもかかる傾向が確認された。
結論
糖利用の正常化は、新しい心血管疾患の治療法になりうると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200624008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
血糖の上昇は酸化ストレスを引き起こすことが知られており、食後高血糖のみがすでに大血管障害のリスクとなり、心筋梗塞の発症リスクを高めることがわかっている(Donahue RP, et al. Diabetes 36: 689-692,1987)。そこで心筋梗塞後の症例に対して、αグルコシダーゼ阻害薬により食後の血糖上昇を抑えることが、心筋梗塞二次予防につながる可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
心筋梗塞の二次予防により慢性心不全患者の増加を抑制できれば、厚生行政面においては大幅な医療費抑制効果が期待され、また医療面においては患者のQOLの著明な改善、健康寿命の延長が期待できる。
ガイドライン等の開発
当研究と平行して、ヨーロッパ心臓学会のガイドラインに心筋梗塞後の耐糖能異常発見に関して75gOGTTの施行が推奨された。
その他行政的観点からの成果
包括医療制度の導入により急性心筋梗塞を含めた心血管イベントの発症数の減少は、そのまま医療費の抑制につながる。
その他のインパクト
2006年度米国心臓病学会、late breaking clinical trial session にて成果を報告、注目を集め、学会トピックスとしてマスコミにも取り上げられた。加えて学会より、研究の詳細を報告すべく寄稿要請がなされた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
62件
その他論文(和文)
23件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計10件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
日本循環器学会公認の臨床試験として認証され、参加医師に専門医認定単位が与えられるようになった。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yulin Liao, Seiji Takashima, Masafumi Kitakaze. et al.
Control of plasma glucose with alpha-glucosidase inhibitor attenuates oxidative stress and slows the progression of heart failure in mice
Cardiovascular Research , 70 (1) , 107-116  (2006)
原著論文2
Hiroshi Asanuma, Tetsuo Minamino, Masafumi Kitakaze. et al.
Blockade of histamine H2 receptors protects the heart against ischemia and reperfusion injury in dogs
Journal of Molecular and Cellular Cardiology , 40 (5) , 666-674  (2006)
原著論文3
Yulin Liao, Masanori Asakura, Masafumi Kitakaze. et al.
Benidipine, a long-acting calcium channel blocker,inhibits cardiac remodeling in pressure-overloaded mice
Cardiovascular Research , 65 (4) , 879-888  (2005)
原著論文4
Yulin Liao, Seiji Takashima, Masafumi Kitakaze. et al.
Exacerbation of heart failure in adiponectin-deficient mice due to impaired regulation of AMPK and glucose metabolism
Cardiovascular Research , 67 (4) , 705-713  (2005)
原著論文5
Noriaki Iwahashi, Satoshi Nakatani, Masafumi Kitakaze. et al.
Cardiac Tumor as an Initial Manifestation of Acquired Immunodeficiency Syndrome
Circulation Journal , 69 (2) , 243-245  (2005)
原著論文6
Yan Li, Tetsuo Minamino, Masafumi Kitakaze. et al.
Ablation of MEK Kinase 1 Suppresses Intimal Hyperplasia by Impairing Smooth Muscle Cell Migration and Urokinase Plasminogen Activator Expression in a Mouse Blood-Flow Cessation Model
Circulation , 111 (5) , 1672-1678  (2005)
原著論文7
Masashi Fujita, Tetsuo Minamino, Masafumi Kitakaze. et al.
Aldosterone Nongenomically Worsens Ischemia Via Protein Kinase C-Dependent Pathways in Hypoperfused Canine Hearts
Hypertension , 46 (1) , 113-117  (2005)
原著論文8
Yulin Liao, Masanori Asakura, Masafumi Kitakaze. et al.
Amlodipine ameliorates myocardial hypertrophy by inhibiting EGFR phosphorylation
Biochemical and Biophysical Research Communications , 327 (4) , 1083-1087  (2005)
原著論文9
Yoshihiro Asano, Seiji Takashima, Masafumi Kitakaze. et al.
Lamrl functional retroposon causes right ventricular dysplasia in mice
Nature genetics , 36 (2) , 123-130  (2004)
原著論文10
Shoji Sanada, Hiroshi Asanuma, Masafumi Kitakaze. et al.
Optimal Windows of Statin Use for Immediate Infarct Limitation 5’-Nucleotidase as Another Downstream Molecule of Phosphatidylinositol 3-Kinase
Circulation , 110 (15) , 2143-2149  (2004)
原著論文11
Yasunori Shintani, Koichi Node, Masafumi Kitakaze. et al.
Opening of Ca2+-activated K+channels is involved in ischemic preconditioning in canine hearts
Journal of Molecular and Cellular Cardiology , 37 (6) , 1213-1218  (2004)
原著論文12
Hiroshi Asanuma, Tetsuo Minamino, Masafumi Kitakaze. et al.
β-Adrenoceptor Blocker Carvedilol Provides Cardioprotection via an Adenosine-Dependent Mechanism in Ischemic Canine Hearts
Circulation , 109 (8) , 2773-2779  (2004)
原著論文13
Yulin Liao, Masanori Asakura, Masafumi Kitakaze. et al.
Celiprolol,A Vasodilatory β-Blocker,Inhibits Pressure Overload-Induced Cardiac Hypertrophy and Prevents the Transition to Heart Failure via Nitric Oxide-Dependent Mechanisms in Mice
Circulation , 110 (10) , 692-699  (2004)
原著論文14
Shoji Sanada, Hiroshi Asanuma, Masafumi Kitakaze. et al.
Protein Kinase A as Another mediator of Ischemic Preconditioning Independent of Protein Kinase C
Circulation , 110 (1) , 51-57  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-