がんの生物学的特性の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200621006A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの生物学的特性の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
H16-3次がん-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
横田 淳(国立がんセンター研究所生物学部)
研究分担者(所属機関)
  • 清野 透(国立がんセンター研究所ウイルス部)
  • 落谷 孝広(国立がんセンター研究所がん転移研究室)
  • 堺 隆一(国立がんセンター研究所細胞増殖因子研究部)
  • 神奈木 玲児(愛知県がんセンター研究所分子病態学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
81,083,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、多様性のあるがんの生物学的特性を、ゲノム・リン酸化蛋白質・細胞接着糖鎖などの情報と、細胞不死化・幹細胞の樹立とがん化・分化誘導など、細胞がん化機構解明に重要な情報と手法を組み合わせて解明し、がんの個性診断や分子標的療法の開発に有用な情報を得ることである。
研究方法
細胞不死化や幹細胞培養の技術とゲノム情報を組み合わせて多段階的な発がん過程の再現による分子基盤の解明を試みるとともに、ゲノム解析では解決できない蛋白質リン酸化や細胞接着糖鎖に関する解析も進め、がんの新たな制御法の開発を行う。
結果と考察
MYO18Bの結合蛋白質としてHOMER2を同定し、MYO18Bの足場非依存性増殖抑制能を増強する作用があることを明らかにした。肺がんの原発腫瘍と転移腫瘍に蓄積しているゲノム異常の類似性と不均一性を明らかにし、候補転移抑制遺伝子の染色体部位を同定した。LKB1遺伝子の変異は喫煙等が原因で起こり、肺がん細胞の分化抑制を引き起こすと考えられた。子宮頸がんのin vitro発がんモデルを作製した。即ち、TERTで不死化した子宮頸部上皮細胞にHPV16-E6E7を導入すると3次元培養で上皮内がん様組織像を呈し、軟寒天培地中で微少コロニーを作るようになった。さらに、HrasV12を導入すると造腫瘍能を獲得して3次元培養で浸潤像を呈し、c-mycを導入すると造腫瘍性の強い細胞集団が樹立された。独自に開発した分化誘導システムを用いて、脂肪由来のヒト間葉系幹細胞から肝細胞の性質を有する細胞を作製した。この細胞はアルブミン産生やアンモニア解毒能を有し、肝障害モデルマウスに移植すると肝臓に生着して肝機能を改善することが分った。肺がん細胞の足場非依存性増殖に関わるリン酸化蛋白質としてCDCP-1を同定した。CDCP-1は浮遊状態で誘導されるアポトーシスを抑制し、その発現を抑えると腫瘍の転移能が著明に低下した。糖鎖の硫酸化が低下している大腸がんでは非がん大腸上皮細胞に比べて硫酸基のトランスポーターDTDSTのmRNAが著明に低下していることを見出した。
結論
ゲノム解析や不死化細胞培養系、リン酸化蛋白質解析、細胞接着糖鎖の解析から、新たな診断・治療の標的分子が同定された。ヒト肝細胞の分化誘導系を確立し、新たな標的分子同定のシステムを構築した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200621006B
報告書区分
総合
研究課題名
がんの生物学的特性の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
H16-3次がん-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
横田 淳(国立がんセンター研究所生物学部)
研究分担者(所属機関)
  • 清野 透(国立がんセンター研究所ウイルス部)
  • 落谷 孝広(国立がんセンター研究所がん転移研究室)
  • 堺 隆一(国立がんセンター研究所細胞増殖因子研究部)
  • 神奈木 玲児(愛知県がんセンター研究所分子病態学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、多様性のあるがんの生物学的特性を、ゲノム・リン酸化蛋白質・細胞接着糖鎖などの情報と、細胞不死化・幹細胞の樹立とがん化・分化誘導など、細胞がん化機構解明に重要な情報と手法を組み合わせて解明し、がんの個性診断や分子標的療法の開発に有用な情報を得ることである。
研究方法
細胞不死化や幹細胞培養の技術とゲノム情報を組み合わせて多段階的な発がん過程の再現による分子基盤の解明を試みるとともに、ゲノム解析では解決できない蛋白質リン酸化や細胞接着糖鎖に関する解析も進め、がんの新たな制御法の開発を行う。
結果と考察
候補がん抑制遺伝子MYO18Bの結合蛋白質としてHOMER2を同定し、MYO18Bの足場非依存性増殖抑制能を増強する作用があることを明らかにした。肺がんの原発腫瘍と転移腫瘍に蓄積しているゲノム異常の類似性と不均一性を明らかにし、候補転移抑制遺伝子の染色体部位を同定した。LKB1遺伝子の変異は男性喫煙者の低分化肺腺がんで高頻度に起こっていることを明らかにした。子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がんのin vitro発がんモデルを作製した。また、ウイルスの代わりにbmi-1やp16-shRNAを用いて、乳腺上皮、肺気管支上皮、皮膚角化細胞などを不死化する方法を開発した。独自に開発した分化誘導システムを用いて、脂肪由来のヒト間葉系幹細胞から肝細胞の性質を有する細胞を作製した。遺伝子改変ラット作製に必用なラットES細胞の培養系を確立した。CDCP1が足場喪失時の細胞死を抑制すること、ephrin-B1がメタロプロテアーゼ分泌を促進すること、パキシリンが腫瘍の細胞運動と転移能を促進すること、どれもSrcファミリーの基質としてチロシンリン酸化を受けながら、腫瘍の悪性化を促進することが分った。HIFは糖鎖関連遺伝子の転写を誘導し、シアリルルイスa/x糖鎖の発現やN-グリコリルシアル酸含有糖鎖の出現のような糖鎖異常を起こすことを明らかにした。低酸素で転写誘導される遺伝子はがん組織でも転写が増大しており、新規腫瘍マーカーになると考えられた。
結論
ゲノム解析や不死化細胞培養系、リン酸化蛋白質解析、細胞接着糖鎖の解析から、新たな診断・治療の標的分子が同定された。ヒト肝細胞の分化誘導系を確立し、新たな標的分子同定のシステムを構築した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200621006C