周産期からの生育環境が思春期の心身の健康に及ぼす影響の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200620036A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期からの生育環境が思春期の心身の健康に及ぼす影響の評価に関する研究
課題番号
H17-子ども-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
安梅 勅江(筑波大学人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 埋橋 玲子(神戸女子大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、周産期からの生育環境が思春期の子どもの心身の健康にどのような影響を及ぼすのか実証的な根拠を得るとともに、国内外の文献を体系的にまとめ、日本における生育環境整備のモデルを構築することを目的としている。
研究方法
本研究は、全国の98箇所の夜間および昼間保育園において追跡調査している子どもについて、子どもと保護者に対する継続調査を実施した。2年度は小学生への調査として、担当専門職および専門調査員による子どもの心身の健康状態に関する面接・質問紙評価、保護者に対する質問紙調査、専門調査員による家庭環境評価、面接調査、環境評価を実施した。回収された質問紙調査票は271名であった。複数の関連要因を用いて思春期の子どもの心身の状態に影響する要因について、多変量解析により影響度の強さを明らかにした。
 また各国の経年研究に関する論文を体系的に整理した。
結果と考察
多重ロジスティック回帰分析の結果、幼児期に「家庭で遊ぶ機会に乏しい」場合、機会のある場合に比較して、学童期に「あまり頑張れない」とした者が、性別や学年の影響を除いても3.23倍多くなっていた。また幼児期に保育園への適応状態として「通園をいやがっている」場合、「楽しみにしている」場合に比較して、学童期に「さびしい」が9.40倍多くなっていた。一方、カイ二乗検定の結果では、幼児期に「子どもと一緒に歌を歌う機会がめったにない」場合、ある場合と比較して、学童期に「あまり頑張れない」が有意に多く、また「公園に行く機会がほとんどない」場合、ある場合と比較して、学童期に「頭痛がする」が有意に多くなっていた。子ども側の要因では、幼児期の微細運動がゆっくりの場合、学童期の「なんとなく心配」、きょうだいがいない場合、学童期の「疲れやすい」が有意に多くなっていた。
また、欧米における過去50年にわたる思春期の心身の健康に関する複数の評価法を体系的に整理し、もっとも適合性の高いものを用い、毎年子どもの担当専門職および専門調査員により子どもの心身の健康状態について客観的に評価し、精度の高い成果を得ることが可能となった。
結論
学童期の子どもの心身の健康と、幼児期の家庭における遊びの機会、保育園への適応状態、家庭における適切なかかわり、子どもの発達状態との関連性が示された。子どもと保護者を対象にした子育て支援の重要性が示唆されるとともに、微細運動がゆっくり傾向の子どもに対する適切な対応等、保育の質のさらなる充実の必要性が示された。最終年度には欧米の影響評価研究の成果を加え、周産期からの生育環境整備のあり方につき具体的なモデルを提案する予定である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-19
更新日
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