生殖補助医療の安全管理および心理的支援を含む統合的運用システムに関する研究

文献情報

文献番号
200620006A
報告書区分
総括
研究課題名
生殖補助医療の安全管理および心理的支援を含む統合的運用システムに関する研究
課題番号
H16-子ども-一般-006
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 泰典(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 石原 理(埼玉医科大学産婦人科)
  • 齊藤 英和(国立成育医療センター周産期部不妊診療科)
  • 苛原 稔(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部女性医学分野)
  • 柳田 薫(国際医療福祉大学臨床医学研究センター)
  • 緒方 勤(国立成育医療センター研究所・小児思春期発達研究部)
  • 久慈 直昭(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室)
  • 朝倉 寛之(財団法人田附興風会医学研究所・第3研究部)
  • 森岡 由起子(大正大学人間学部人間福祉学科)
  • 森 和子(文京学院大学人間学部)
  • 岩崎 美枝子(社団法人家庭養護促進協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
配偶子提供を含む新しい生殖補助医療(以下ART)を前提に、ART治療の品質管理・安全管理・関係者への心理的支援体制の整備を含む統合的運用システムを構築する。
研究方法
品質管理の面では、ART実施医療機関で実際にこれに携わる胚培養士の具備すべき実技および知識基準、培養液を含む消耗品の管理についての問題点を抽出した。安全管理の面では、とくに出生児の登録制度の構築、ARTに由来する多胎妊娠の現状調査、imprinting機構異常によるIUGR発生への実証的研究を行った。配偶子提供を含むARTへの精神的支援の面では、治療を受けるカップルと、生まれてくる子供へのカウンセリング体制を考案した。さらに海外におけるART枠組みの動向調査を行うとともに、特定不妊治療助成制度について医師・患者へアンケート調査を行った。
結果と考察
ART品質管理上の問題点として、実際にARTを行う胚培養士の有すべき知識基準が明らかでなく、また胚培養士への消耗品を中心とする情報提供体制に改善すべき点がある。安全管理上の問題点として、児の長期予後follow up体制の整備が遅れており、またARTによる社会遺伝学的なリスク蓄積の調査が必要である。配偶子提供については、親となる夫婦に対する妊娠前から育児中まで継続する精神的援助体制が必要であるとともに、うまれた子供や、提供者への援助も必要である。配偶子提供でうまれた子どもに親が告知をするためのガイドを作成した。最近配偶子提供の匿名性を廃止した英国では、様々な変化がおこっており、わが国が今後この問題を考える上で注目に値する。現行では利用者の過半数が利用していない特定不妊治療助成制度については、その所得制限枠、支給額、支給期間に継続的議論が必要である。
結論
我が国のART治療は、現行の枠組み内では全体として支障なく行われているが、品質管理や安全管理では、今後長期的には誰にでもわかりやすいガイドラインを作成し、様々な情報を遅滞なく必要な部署に伝達し、その結果を不妊夫婦や社会に明らかにしていく枠組み構築が必要である。また、特に配偶子提供による不妊治療をうける夫婦や、うまれてきた子供へのカウンセリングについては、これから早急に精神的支援体制を整備する必要があるとともに、また海外でおこっている状況について今後も注目していく必要があることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200620006B
報告書区分
総合
研究課題名
生殖補助医療の安全管理および心理的支援を含む統合的運用システムに関する研究
課題番号
H16-子ども-一般-006
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 泰典(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 石原 理(埼玉医科大学産婦人科)
  • 齊藤 英和(国立成育医療センター周産期部不妊診療科)
  • 苛原 稔(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部女性医学分野)
  • 柳田 薫(国際医療福祉大学臨床医学研究センター)
  • 緒方 勤(国立成育医療センター研究所・小児思春期発達研究部)
  • 久慈 直昭(慶應義塾大学医学部産婦人科)
  • 朝倉 寛之(財団法人田附興風会医学研究所・第3研究部)
  • 森岡 由起子(大正大学人間学部人間福祉学科)
  • 森 和子(文京学院大学人間学部)
  • 岩崎 美枝子(社団法人家庭養護促進協会)
  • 久保 春海(東邦大学不妊予防協会理事長)
  • 宮島 清(日本社会事業大学福祉マネジメント研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
配偶子提供を含む新しい生殖補助医療(以下ART)を前提に、その品質管理・安全管理・関係者への心理的支援体制の整備を含む統合的運用システムを構築する。
研究方法
第一に、ART実施医療機関が有すべき設備・人員の基準、培養液を含む消耗品の管理体制について問題点を抽出した。第二に、とくに出生児の登録制度の構築、ARTに由来する多胎妊娠の現状調査、不妊形質の遺伝やimprinting機構異常による社会遺伝学的リスク発生の実証的研究を行った。第三に配偶子提供治療への精神的支援の面では、治療を受けるカップルと、生まれてくる子供へのカウンセリング体制を考案した。第四に、海外におけるART枠組みの動向調査を行った。
結果と考察
ARTの品質管理については、採卵件数が50件以下の施設の妊娠率が低いこと、機器の保守点検などの問題点がある。また、ARTを実際におこなう胚培養士の品質管理の必要がある。一方ほとんどを海外からの輸入である培養液等の消耗品は、製造者、使用者からの製品品質変化の情報を遅滞なく全実施施設に伝達する機構が必要である。
安全管理において、長期予後を含む出生児予後調査を可能とする機構整備の必要がある。多胎妊娠に対しては胚移植数を制限する他、減数手術に対する実態調査をふまえた議論が必要である。
配偶子提供を中心とした不妊治療当事者への精神的支援については、提供者やその家族への出自を知る権利を行使した場合の影響や、精子提供者と卵子提供者の違い等を勘案したうえで、匿名性を最近廃止した英国など海外で起こっている事象を考慮して慎重に議論を進める必要がある。しかし、告知の重要性やしなかった場合のリスクを夫婦に伝える必要もあり、子どもに告知をする際のガイドブックを試作した。とくに配偶子提供の様に微妙な問題において、精神的支援を有る程度統一的な方向で行う上では、一般の不妊カウンセリングとは行う機関も、職種も、分けて考える必要があるかもしれない。
結論
我が国のART治療体系において、品質管理・安全管理上、実効的で明快なガイドラインを作成し、また様々な情報を遅滞なく伝達し、かつ児の長期予後などの結果を不妊夫婦や社会に明らかにしていく必要がある。また、特に配偶子提供による不妊治療をうける夫婦や、うまれてきた子供へのカウンセリングについて、海外の状況を参考にしつつ、早急に体制整備の必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200620006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
生殖補助技術(以下ART)由来出生児は我が国全出生の1%以上を占め、次世代への影響も含め本技術の品質管理・安全管理体制構築は極めて重要である。本研究ではわが国全体のARTを一定水準以上に品質管理するために、実効的ガイドライン作成とともに、その問題点を抽出した。また、不妊形質がARTで遺伝することによる社会遺伝学的リスクをKallmannn症候群を例に実証するとともに、体外受精・体外培養によって惹起される可能性があるimprinting機構異常によるIUGR発生についての研究を行った。
臨床的観点からの成果
ARTに使用される精子・卵子培養のための培養液をはじめとする消耗品はそのほとんどを海外からの輸入に頼っている。本研究ではこれらARTに使用される消耗品の品質管理に関して検討し、製造国で供給される品質の変化を含む情報をわが国の使用者に遅滞なく伝達する機構が必要であることを明らかにした。
ガイドライン等の開発
厚生科学審議会生殖補助医療部会報告(平成15年)にも示されるように、今後我が国においても配偶子提供を用いたARTが行われる可能性は高いが、その際形成される関係者に対する心理的なサポート体制は全く整っていない。本研究では不妊夫婦、うまれてくる子供、そして提供者に対する精神的支援の枠組み構築を行うとともに、海外で使用されているパンフレットを参考にこのような親が子どもに配偶子提供の事実を告知する才のガイドブックを試作した。
その他行政的観点からの成果
海外でもARTの枠組みは国により様々であるが、最近配偶子提供の匿名性について枠組みを大きく変更した英国の状況を調査し、有益な情報を得た。また、現在わが国で行われている特定不妊治療助成制度に対する利用者および医師の意見をアンケート調査し、所得制限枠、支給額、支給期間等について継続的な議論が必要なことを明らかにした。
その他のインパクト
わが国のART施設の設備基準やその問題点については、新聞等にて報道された。また各分担研究者は各々、生殖医学・カウンセリングあるいは医療全般の学会において招請講演演者として発表を行っている。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sato N,Hasegawa T,Hori N,etal.
Gonadotropin therapy in kallmann syndrome caused by heterozygous mutations of the gene for fibroblast growth factor receptor1:report of three families
Hum Reprod , 20 (8) , 2173-2178  (2005)
原著論文2
石原理,岡垣竜吾,梶原健
海外における卵子提供プログラムとその問題点
産科と婦人科 , 72 (10) , 1251-1258  (2005)
原著論文3
石原理
生殖補助医療の規制-ガイドラインか法規制か、それとも?
医学のあゆみ , 213 (3) , 175-178  (2005)
原著論文4
石原理,出口顯
生殖医療をめぐる最近の話題-第三者配偶子を用いる治療の法的規制について-
産婦人科治療 , 90 (1) , 1-6  (2005)
原著論文5
森和子
生殖補助医療により生まれた子どもへの社会的支援についての研究-児童福祉および母子保健相談機関の職員へのアンケート調査を通して-
身延山大学仏教学部紀要(身延山大学仏教学部2006) ,  (7) , 97-114  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-