文献情報
文献番号
200620003A
報告書区分
総括
研究課題名
育児機能低下と乳児虐待の評価パッケージの作成と、それを利用した助産師と保健師による母親への介入のための教育と普及
課題番号
H16-子ども-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 敬子(九州大学病院 精神科神経科)
研究分担者(所属機関)
- 山下 洋(九州大学病院 精神科神経科)
- 鈴宮 寛子(福岡市早良区保健福祉センター 早良保健所)
- 江井 俊秀(財団法人母子衛生研究会)
- 上別府 圭子(東京大学大学院 医学系研究科 家族看護学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
2,268,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
出産後の母親の精神面評価を行い、育児困難の状況を把握し、乳児虐待などに対して早期に支援や予防的介入を行うことは重要である。本研究班では、この目的ため質問票を活用した育児支援マニュアルを作成し、それを教材にして地域の育児支援担当者に研修を行った。さらに各地域での育児支援の普及、実践およびその効果に関する研究を行ってきた。
研究方法
本研究の最終年度である今年度は、育児支援を行う地域の保健師や助産師を対象に、全国規模のフォローアップセミナーを企画・実施した。今年度はさまざまな状況に幅広く対応できる実践型の研修内容を工夫した。すなわち、育児不安、産後うつ病、および虐待が危惧される母親の場合まで実際に遭遇するケースを想定して講義内容を作成し、事例検討も各地域の実例を募り公開スーパーバイズ方式で行った(企画:吉田、山下、鈴宮、準備と実施:江井ら)。
結果と考察
これらの参加者を対象に、各地域での育児支援の実態調査と分析を行い、また研究連携地区として北海道を対象に、同様のセミナーと調査を行った。産後うつ病の平均検出率は、全国では13%であったが、訪問対象や時期、質問票の使用状況、うつ病検出率などは地域により異なった。一方、北海道での縦断調査では、育児支援マニュアルは順調に導入され、また地域の実情に応じた病院連携など、独自の展開もみられた(山下)。本育児支援法の先行実施地域である福岡市では、エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)によるうつ病の検出率の5年間の経年的変化を調べ、検出率が13%から8%へと減少した。また同一ケースにおけるEPDSと対児感情・態度の得点の変化を調べると、経時的に両得点とも改善していたが、改善に寄与した要因についてはさらなる検討が必要であると思われた。産後4カ月の健診時の調査では、否定的な感情、育児の疲れ、孤立などは、EDPS高得点者に高頻度に見られ、支援のニーズがあることが確認された(鈴宮)。
さらに昨年度および今年度のセミナーに参加した訪問支援者を対象に、教育効果の判定を行った。2年間継続受講者内では、特に対人支援スキル得点が昨年度から今年度で有意に上昇し、さらに事業所の事業化を示す得点も有意に上昇しており、研修の効果が認められた(上別府)。
さらに昨年度および今年度のセミナーに参加した訪問支援者を対象に、教育効果の判定を行った。2年間継続受講者内では、特に対人支援スキル得点が昨年度から今年度で有意に上昇し、さらに事業所の事業化を示す得点も有意に上昇しており、研修の効果が認められた(上別府)。
結論
本研究の最終的な到達目標は1)育児支援担当者への研修と技術の向上、2)各地域の母子保健システムの実情に即した育児支援のモデル作り、3)研修の効果判定である。本研究を通して、産後うつ病の減少、不適切な育児や乳児虐待への予防的な育児支援のありかた、および地域での支援の事業化への貢献はできたと考える。
公開日・更新日
公開日
2008-03-12
更新日
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