軽度認知症高齢者の介護予防及び症状緩和システム開発に関する研究

文献情報

文献番号
200619048A
報告書区分
総括
研究課題名
軽度認知症高齢者の介護予防及び症状緩和システム開発に関する研究
課題番号
H17-長寿-一般-038
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
内藤 佳津雄(日本大学 文理学部)
研究分担者(所属機関)
  • 石原 治(静岡福祉大学 社会福祉学部)
  • 下垣 光(日本社会事業大学 社会福祉学部)
  • 小野寺 敦志(認知症介護研究・研修東京センター)
  • 阿部 哲也(認知症介護研究・研修仙台センター)
  • 檮木 てる子(静岡福祉大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険制度見直し後の介護予防通所介護事業所に対する全国調査を実施した。調査は、事業所調査および利用者調査であり、事業所調査の結果から、制度見直し後の事業所における軽度認知症高齢者の人数分布を明らかにすることを、利用者調査から軽度認知症に該当する利用者と認知症でない利用者の状態像の比較を行い、軽度認知症高齢者の状態像の特徴を明らかにすることを目的とした。
研究方法
2007年1月時点において、WAM NETに登録されている全国の介護予防通所介護事業所および介護予防認知症対応型通所介護事業所からランダムに2500か所を抽出して、調査対象事業所を選定した。調査は、事業所調査、利用者調査の2種類を同封し、郵送で調査を依頼し、全種の調査をまとめて郵送で返送してもらうことで回収を行った。
結果と考察
事業所調査は回収545事業所(回収率21.8%)のうち、介護予防通所介護事業所503か所について解析した。要支援の利用者中、認知症高齢者は、332事業所(71.4%)で0名という結果であった。該当者がいる場合でもほとんどが4名以内であり少数であった。併設の通所介護事業所の経過的要介護・要介護1の利用者中の認知症自立度Ⅰの人数を加えると該当者がいない事業所は134か所(28.7%)となり、人数も割合も増加した。利用者調査については、1285例を回収し、そのうち要支援1または要支援2の者について認知症なしと認知症自立度Ⅰの状態像を比較した。その結果、記憶機能・見当識、コミュニケーション、環境の適応性、IADL、活動・参加において多くの項目で有意差が認められた。また身体介護の必要性、BPSDの一部においても差が認められた。

結論
調査時点では、見直し後の認定を受けた要支援者には、認知症高齢者は少ないという結果であった。しかし経過的要介護・要介護1の中には認知症自立度Ⅰ程度の軽度認知症高齢者が含まれており、今後、認定がどのように進んでいくのか未確定な部分もあるが、人数分布については今後も追跡が必要であろう。要支援の軽度認知症高齢者と非認知症者の状態像と比較すると、身体介護の必要性、IADLにおいて有意な差が認められ、介護予防的なサービス提供においても、身体および日常生活上の自立を達成するための配慮やサービスが必要あると考えられる。コミュニケーション、環境の適応性、活動・参加においても多くの項目で有意差が認められ、介護予防における働きかけにあたっては、こうした環境への適応の困難さに配慮しなければならないといえよう。

公開日・更新日

公開日
2007-06-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200619048B
報告書区分
総合
研究課題名
軽度認知症高齢者の介護予防及び症状緩和システム開発に関する研究
課題番号
H17-長寿-一般-038
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
内藤 佳津雄(日本大学 文理学部)
研究分担者(所属機関)
  • 石原 治(静岡福祉大学 社会福祉学部)
  • 下垣 光(日本社会事業大学 社会福祉学部)
  • 小野寺 敦志(認知症介護研究・研修東京センター)
  • 阿部 哲也(認知症介護研究・研修仙台センター)
  • 檮木 てる子(静岡福祉大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、介護予防通所介護事業所を中心に、軽度認知症高齢者の分布と状態像を明らかにし、軽度認知症高齢者向けのサービスモデルを作成するための基礎資料とすることを目的とした調査を行った。
研究方法
平成17年度は制度改正前の通所介護事業所と認知症対応型共同生活介護事業所を対象として、制度見直し後に要支援となるであろう認知症高齢者の分布、状態像、介護家族の意識と行動に関する調査を行った。平成18年度は介護予防通所介護事業所を対象として、制度改正後の要支援者について、認知症高齢者の分布、状態像について調査した。
結果と考察
事業所における軽度認知症高齢者(要支援で認知症である)の分布は、制度開始前の調査から見た予想と比べると、新認定の普及が十分でないこともあり、平成18年度調査では「いない」または低い割合に留まっていた。介護予防・介護サービスの両方をあわせれば、軽度な認知症高齢者が人数で1-9名、割合で10-30%程度いる事業所が多いことが明らかになった。決して無視できない人数ではあるものの、事業所全体の中では相対的に少数であり、グループを形成して行う通所サービスのなかでのサービス提供の方法について課題があると考えられる。軽度認知症高齢者の状態像については、IADLの課題、意欲や参加の低下が多くみられ、生活機能の支援、意欲への働きかけが共通の重要課題であると考えられた。また、IADL、記憶、コミュニケーション、意欲・参加については、要介護1該当者と比べ、良好であり、それを活かすことが必要であろう。また、気分の変動、BPSDは、軽度認知症高齢者では出現率は低いが、個人差に留意する必要性がある内容と考えられる。このような状態像の特徴を把握できるアセスメントが有用であろう。
結論
軽度認知症高齢者の状態像に配慮したサービス像として、コミュニケーションや記憶に関する課題を持っていることへの配慮すること、意欲や活動性が低いが生活不活発とは異なる状態像の可能性を理解すること、IADLの課題を持つ者の割合が高く生活機能向上がサービスの目的となりうるが、一方で自発性や活動性の低い場合にアプローチに注意が必要であること、ADL、重度の記憶障害、気分の変動、BPSDなどについては該当率はそれほど高くなかったが、個別にアセスメントし、該当者には配慮すること、などを挙げた。

公開日・更新日

公開日
2007-06-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619048C

成果

専門的・学術的観点からの成果
介護保険制度の見直し後に要支援認定を受けることが想定される軽度認知症高齢者について、平成17年度の調査において全国の通所介護事業所および認知症対応型共同生活介護事業所における人数分布を明らかにするとともに、状態像の特徴や居宅で介護する家族の心理的特性を検討し、その特徴を明らかにすることができた。また、18年度の調査では、制度見直し後の軽度認知症高齢者の人数分布及び介護予防サービスの中での軽度認知症高齢者の状態像の特徴を明らかにした。
臨床的観点からの成果
臨床研究ではないので直接の効果はないが、軽度認知症高齢者の状態像の特徴を明らかにし、その評価指標として活用可能な項目を開発したことによって、軽度認知症高齢者に対する介護予防および介護サービスの提供において活用が可能である。18年度の研究において、開発した指標を用い事例検討を行い、有効性を検討した。
ガイドライン等の開発
軽度認知症高齢者に対する評価項目の内容および各項目における該当率を明らかにし、認知症の特徴に配慮しながらも介護予防を達成することを目標とするサービスのあり方について明らかにした。

その他行政的観点からの成果
軽度認知症高齢者の人数分布および状態像を明らかにすることによって、制度見直し後の要支援認定についての基礎資料とすることが可能である。また、介護予防事業所(とくに介護予防通所介護事業所)におけるサービスの質の確保について、検討する材料となる。

その他のインパクト
とくになし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-