老化に伴う神経変性疾患の長期縦断疫学研究;ALSについて

文献情報

文献番号
200619042A
報告書区分
総括
研究課題名
老化に伴う神経変性疾患の長期縦断疫学研究;ALSについて
課題番号
H17-長寿-一般-031
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 道勇 学(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 田中 章景(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 渡辺 宏久(名古屋大学医学部附属病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
11,375,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病(PD)に代表される老化に伴う神経変性疾患について、我が国における横断的な臨床像の特徴を明らかにする。
2.前向き縦断的臨床像を明らかにし、我が国における病像を捉え直す。
3.患者のQuality of Life(QOL)、ケアの状態、自覚的症状などの情報を経時的に収集、蓄積し、診療、福祉、介護、行政の現場に還元できるシステム構築を行う。
4.遺伝子検体を併せて蓄積し、病態解明研究のための研究リソースを構築する。
5.発症、進行、予後に関与する臨床的、遺伝子的因子を明らかにする。
研究方法
 前年度に引き続き、ALS患者の多施設共同長期縦断自然歴把握システム、匿名化システム、データセンター、遺伝子保存・管理センターシステムの構築、運営を行い、症例登録を進めた。長期縦断像把握のために臨床研究コーディネーター(CRC)による日本版ALSFRS-R電話調査システムを構築し、医師による診察室での評価との整合性、妥当性の評価を行った。PDについても同様の多施設協同長期縦断自然歴把握システムおよび遺伝子収集システムを構築した。また診療現場にフィードバック可能な患者・家族へのアンケートシステムを構築した。実施にあたっては関連する倫理指針を遵守し、すべての研究実施施設で倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
 CRCによる日本版ALSFRS-R電話調査と医師による診察室での評価との整合性について27例のALS患者で評価し、相関係数0.967(p<0.001)と良好な一致を示した。CRCによる電話調査は十分な妥当性を有すると判断した。現在までに121例のALS患者を登録し、同数のゲノムDNAを保存した。自然歴調査からは球症状で発症した患者は上肢筋力低下発症の患者に比して有意に重症度の進行が速いことが示された。登録した250例のPD患者の横断像調査から、PDでは多彩な非運動機能異常を認め、QOLと密接な関連があることが示された。
結論
 ALS、PDについて長期縦断自然歴把握システムを構築した。電話等による予後把握システムを取り入れたことにより臨床現場の負担を増やさず、転医症例についても長期予後を把握可能である。得られる前向き臨床像と遺伝子リソースの組み合わせは、今後長きにわたり、我が国発の神経変性疾患研究を支える資源となる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200619042B
報告書区分
総合
研究課題名
老化に伴う神経変性疾患の長期縦断疫学研究;ALSについて
課題番号
H17-長寿-一般-031
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 道勇 学(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 田中 章景(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 渡辺 宏久(名古屋大学医学部附属病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病(PD)に代表される老化に伴う神経変性疾患について、我が国における横断的な臨床像の特徴を明らかにする。
2.前向き縦断的臨床像を明らかにし、我が国における病像を捉え直す。
3.患者のQuality of Life(QOL)、ケアの状態、自覚的症状などの情報を経時的に収集、蓄積し、診療、福祉、介護、行政の現場に還元できるシステム構築を行う。
4.遺伝子検体を併せて蓄積し、病態解明研究のための研究リソースを構築する。
5.発症、進行、予後に関与する臨床的、遺伝子的因子を明らかにする。
研究方法
 ALSおよびPDについて、多施設共同長期縦断自然歴把握システム、患者・家族へのアンケートシステム、匿名化システム、データセンター、遺伝子保存・管理センターの構築運営を行った。ALSの長期縦断像把握のために臨床研究コーディネーター(CRC)による電話調査システムを構築した。PDについては診療現場に還元可能な患者・家族への経時的アンケートシステムを構築した。我が国におけるALS患者の横断像把握のために、特定疾患治療研究事業におけるALS臨床調査個人票の解析を行った。関連する倫理指針を遵守し、全研究実施施設で倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
 121例のALS患者、250例のPD患者を登録し、遺伝子を保存した。ALSの自然歴調査から球症状で発症した患者は上肢筋力低下発症の患者に比して有意に重症度の進行が速いことが示された。PDでは多彩な非運動機能異常を認め、うつ、睡眠障害、排尿障害、消化器症状などはQOLに対して強く影響することが明らかとなった。ALS臨床調査個人票データからは我が国における気管切開した上での人工呼吸器装着(TPPV)患者の割合は欧米に比して著しく高いこと、発症からTPPVまでの時間の平均値は全体で3.26年であるが高齢になるほど短くなること、TPPV導入後に年数が経つと陰性症状とされる眼球運動障害の発現頻度が上がり、導入後9年で約30%に達することが示された。
結論
 本研究において構築された長期縦断自然歴把握システムから日常診療、治療介入研究の計画、医療福祉行政施策策定などの基礎になる有用な情報を提供できる。また遺伝子リソースとの組み合わせから、今後長きにわたり我が国発の神経変性疾患研究を支える基盤となりうる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619042C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 老年病としての神経変性疾患に対して、長期縦断自然歴把握システムを構築した。CRCからの電話による予後把握システムにより、臨床現場の負担を増やすことなく経時的な情報収集が可能であり、転医による脱落例を最小限にして長期予後を把握できる。このシステムは多くの神経変性疾患患者の長期像把握に応用可能である。さらに匿名化された遺伝子リソースを結びつけており、疾病の発症のみならず、進行、臨床病型、予後と遺伝子多型との相関を解析する基盤が整備された。今後長きにわたり、我が国発の研究を支える資源となりうる。
臨床的観点からの成果
 ALSの横断像および縦断像解析から我が国におけるALS患者の重症度、病型、症状、療養状況、侵襲処置の有無等に関する情報が得られ、日常診療、治験計画策定等に活用することができる。長期予後の情報は診療現場でのインフォームドコンセントにおいて極めて重要である。PDの横断像よび縦断像解析から非運動機能障害とQOLとの関連が明らかになり、治療介入研究の推進につながりうる。いずれも、研究で得られる縦断的臨床像情報を現場に直接還元できるシステムを構築しており、日常診療の質の向上につながりうる。
ガイドライン等の開発
現在のところなし。
その他行政的観点からの成果
 我が国におけるALS患者横断像の解析から、人工呼吸器装着や経管栄養を実施しながら療養する重症度の高い患者の割合が欧米に比して著しく多い現状などが明らかとなり、行政面での重要な基礎資料を提供した。また今後のALS、PDに代表される神経変性疾患の長期縦断像情報の蓄積は高齢化社会を踏まえた適切な医療・介護体制整備をはかるための医療福祉行政的観点から重要である。
その他のインパクト
 研究の概要をホームページ(http://www.jacals.jp/)上で公開し、広く閲覧可能にした。我が国における代表的なALSに関する患者団体である日本ALS協会に対して研究計画を説明し、機関誌 JALSA 68号(平成18年5月12日発行)にて研究計画を紹介した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-