文献情報
文献番号
200619038A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性閉塞性肺疾患に対する漢方治療の有用性評価
研究課題名(英字)
-
課題番号
H17-長寿-一般-027
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
福地 義之助(順天堂大学・医学部)
研究分担者(所属機関)
- 巽 浩一郎(千葉大学大学院医学研究院 加齢呼吸器病態制御学)
- 中山 勝敏(東北大学大学院医学系研究科 老年・呼吸器病態学)
- 礒濱 洋一郎(熊本大学大学院医学薬学研究部 薬物活性学分野)
- 永井 厚志(東京女子医科大学 第一内科)
- 杉山 幸比古(自治医科大学 呼吸器内科)
- 三嶋 理晃(京都大学大学院医学研究科 呼吸器内科学)
- 一ノ瀬 正和(和歌山県立医科大学 第三内科)
- 相澤 久道(久留米大学医学部 第一内科)
- 瀬山 邦明(順天堂大学医学部 呼吸器内科)
- 植木 純(順天堂大学 医療看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
11,625,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、高齢者におけるQOLを障害する自覚症状の一つである労作時呼吸困難を主訴とする疾患である。COPD患者では、栄養障害や体重減少は予後の悪化や増悪と密接に関連しており、特に生理機能や免疫機能の低下している高齢者にとっては問題となる。しかし、COPDに対して有効な栄養療法は確立されていない。一方、漢方薬には食欲不振の改善や体力増強に効果を示す「補剤」と呼ばれる薬剤があり、体力や免疫能の改善により、体重の低下抑制や感染症の罹患率を低下させることが経験的に報告されている。本研究では、COPDに対する漢方治療として、補中益気湯投与の効果と安全性を研究した。
研究方法
安定期COPD患者に対して、封筒法による無作為化試験により、補中益気湯投与の有無により2群に分類した。COPDのPhenotypeは考慮せず、また漢方治療の際の「証」は考慮せずに分類した。補中益気湯群;従来の治療に補中益気湯を併用投与した。Control群;従来の治療を継続した群とした。試験開始前および治療開始6ヶ月後において、気虚症状の変化、炎症・栄養指標を評価した。
結果と考察
漢方医学的な気虚の概念である、身体のだるさ、気力、疲れやすさ、食欲いずれの項目においてもControl群では改善を認めなかったが、補中益気湯群で有意な症状の改善を認めた。また、感冒回数および増悪回数は補中益気湯群で有意に低値であった。体重は、補中益気湯群で6ヶ月に有意な増加がみられた。試験開始前のすべてのCOPD症例を対象とすると、栄養指標であるプレアルブミン値とBMI値には正の相関関係を認めた。プレアルブミン値は、補中益気湯投与群でのみ有意な増加を認めた。栄養指標であり、脂肪細胞由来と考えられるレプチンとBMI値の間にも、正の相関関係を認めた。全身の炎症指標である血清の高感度CRP、TNF-α、IL-6とCOPDの重症度を表す%予測一秒量との間には、いずれも負の相関関係を認めた。補中益気湯群で高感度CRP、TNF-α、IL-6は有意な低下を認めた。脂肪細胞から分泌され動脈硬化の進展にも関与するとされているアディポネクチン値は、BMI値と負の相関関係があり、補中益気湯投与にて有意な増加を認めた。
結論
高齢COPDの全身性炎症および栄養状態の低下に対して、補中益気湯は有用であることが示された。
公開日・更新日
公開日
2007-03-29
更新日
-