老化関連遺伝子klothoによるカルパイン活性制御機構の解明および関連疾患の予防と治療に関する研究

文献情報

文献番号
200619021A
報告書区分
総括
研究課題名
老化関連遺伝子klothoによるカルパイン活性制御機構の解明および関連疾患の予防と治療に関する研究
課題番号
H17-長寿-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 玉夫((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 老化ゲノム機能研究チーム)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
klotho変異マウスは多彩な老化症状を呈することから、klotho遺伝子が老化の制御に深く関与することが考えられている。最近klotho蛋白質にβ-グルクロニダーゼ活性があることが報告され、klotho蛋白質が糖分解酵素として機能している可能性が示唆された。しかし、klotho蛋白質の糖分解酵素としての具体的な作用点や基質に関してはほとんど分かっていない。昨年度の当研究事業において、klotho変異マウスの腎臓と肺で異常糖鎖が発現することを明らかにしたことから、本年度は異常糖鎖の発現とklotho蛋白質の関連について検討した。また、老化関連疾患の予防や治療への応用を目指して、klotho蛋白質の発現制御に関わる物質のスクリーニング方法を検討した。
研究方法
(1) klotho変異マウスの腎臓と肺から異常糖鎖を含む膜画分蛋白質を調製し、組換え型klotho蛋白質を用いて、異常糖鎖とklotho蛋白質の相互作用を調べた。(2) 我々が見いだしたklotho蛋白質を発現しているヒト尿細管由来細胞を用いたスクリーニングの有効性を調べるため、個体レベルでklotho遺伝子の発現への影響が報告されているビタミンD3の影響を調べた。
結果と考察
(1) 肺および腎臓由来の膜画分蛋白質を組換え型klotho蛋白質と反応させた結果、異常糖鎖に対する抗体およびレクチンの反応性が減少した。一方、熱処理したklotho蛋白質では反応性に変化はみられなかった。この結果は、異常糖鎖がklotho蛋白質によって分解されることを示唆している。(2)尿細管細胞へのビタミンD3の添加によりklotho蛋白質の発現とカルシウム輸送量が増加した。この結果から、本細胞が尿細管の性質を保持していること、ビタミンD3は細胞に直接作用してklotho蛋白質の発現を増加させることが明らかとなった。
結論
klotho蛋白質が糖分解酵素として機能している可能性が示された。尿細管由来細胞を用いたklotho蛋白質の発現制御物質のスクリーニングが有効であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-11-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200619021B
報告書区分
総合
研究課題名
老化関連遺伝子klothoによるカルパイン活性制御機構の解明および関連疾患の予防と治療に関する研究
課題番号
H17-長寿-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 玉夫((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 老化ゲノム機能研究チーム)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
klotho変異マウスは多彩な老化症状を呈することから、klotho遺伝子が老化制御に深く関与すると考えられている。最近、klotho蛋白質にβ-グルクロニダーゼ活性があることが報告され、klotho蛋白質が糖分解酵素として機能している可能性が示唆された。しかし、klotho蛋白質の糖分解酵素としての具体的な作用点や基質に関してはほとんど分かっていない。そこで、klotho蛋白質と糖鎖の関係を明らかにするため、klotho遺伝子の変異によって生じる糖鎖変化を網羅的に解析した。また、老化関連疾患の予防や治療への応用を目指して、klotho蛋白質の発現制御に関わる物質のスクリーニング方法を検討した。
研究方法
(1)野生型マウス、klotho変異マウスの各臓器から膜画分蛋白質を調製し、ウェスタンブロット、レクチンブロット、ELISA等の方法により糖鎖の変化を調べた。(2) klotho変異マウスの腎臓と肺から異常糖鎖を含む膜画分蛋白質を調製し、組換え型klotho蛋白質を用いて、異常糖鎖とklotho蛋白質の相互作用を調べた。(3) 我々が見いだしたklotho蛋白質を発現しているヒト尿細管由来細胞を用いたスクリーニングの有効性を調べるため、個体レベルでklotho遺伝子の発現への影響が報告されているビタミンD3の影響を調べた。
結果と考察
(1)klotho変異マウスの肺と腎臓で野生型マウスに比較して顕著に増加している糖鎖が検出された。肺と腎臓の異常糖鎖は、抗体やレクチンに対する反応性が異なることから、糖鎖構造が違うことが分かった。(2)異常糖鎖と組換え型klotho蛋白質を反応させることにより、異常糖鎖に対する抗体およびレクチンの反応性が減少した。この結果は、異常糖鎖がklotho蛋白質によって分解されることを示唆している。(3)尿細管細胞へのビタミンD3の添加によりklotho蛋白質の発現とカルシウム輸送量が増加した。この結果から、本細胞が尿細管の性質を保持していること、ビタミンD3は細胞に直接作用してklotho蛋白質の発現を増加させることが明らかとなった。
結論
klotho遺伝子変異マウスでは肺と腎臓で異常糖鎖が蓄積していた。klotho蛋白質がこれらの異常糖鎖を分解する可能性が示唆された。尿細管由来細胞を用いたklotho蛋白質の発現制御物質のスクリーニングが有効であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-11-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
klotho遺伝子の変異により肺と腎臓で特異的に異常糖鎖が蓄積することを明らかにした。この異常糖鎖がklotho蛋白質で分解されることを示し、klotho蛋白質の糖分解酵素機能と基質となる糖鎖構造を見いだした。また、肺と腎臓の異常糖鎖の構造が異なったことから、klotho蛋白質の機能が臓器により異なることが示唆された。klotho蛋白質は老化抑制因子と考えられており、klotho蛋白質の機能、さらには老化の分子メカニズムを解明する上で重要な成果である。
臨床的観点からの成果
klotho蛋白質の酵素機能と基質分子の発見は、関連疾患の病態を理解し、予防や治療法を開発する上で重要である。klotho蛋白質の発現に影響する物質のスクリーニング方法を開発した。klotho蛋白質は老化抑制因子と考えられていることから、発現に影響する物質を明らかにすることで、老化や関連疾患の予防や治療に貢献できる。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-