高齢者の排便機能障害評価法と尊厳の回復に関する研究

文献情報

文献番号
200619010A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の排便機能障害評価法と尊厳の回復に関する研究
課題番号
H16-長寿-一般-026
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
萱場 広之(秋田大学医学部医学科統合医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 茆原 順一(秋田大学医学部医学科統合医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
2,667,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の排便障害の改善、生活の質と尊厳の回復を目的とし、以下を3本柱とした。
①高齢者に外来でできる排便機能評価法を応用し排便障害の病態生理を分析するとともに病態に即した介護や治療を推進する。
②排便障害を有する高齢者の生活の質の向上、介護者の負担軽減のための器具・設備の考案と作製。
③排便障害に対処する社会的・医学的基盤形成。
研究方法
①直腸肛門機能および排便機能評価法:直腸肛門内圧、Salne enema test・Fecoflowmetry(SET-FFM)連携法を主に用い、直腸肛門運動、感覚、排便状況の解析を行う。
②排便障害者用排便自助具や設備・介護用品の作成:個々の事例への対応から商品として提案できるものを抽出し、作製する。
③排便障害に対処する社会的・医学的基盤形成:排便介護の現場、社会基盤整備状況の調査をアンケート、実地検分で行う。
結果と考察
①排便機能評価:肛門管圧と直腸圧の協調運動は、I型、II型、II、V型に分類され、正常、失禁、便秘、慢性便秘の特殊型に対応した。脊髄障害例では早期に排便反射が惹起され、生理食塩水の保持が困難であった。Fecoflowmetryは排便状況を反映し、塊状型(正常)、分節型(便秘)、平坦型(失禁)に分類された。肛門管のUltra Slow Waveのみられる例では高度の便秘や巨大結腸、肛門管圧の異常高値などを伴う新しい症候群を形成する可能性が示唆された。
②排便自助具作製:高度失禁例で逆行性洗腸を容易に行える器具を開発した。
③介護現場へのアンケート調査:介護施設における排泄介助の必要な高齢者は約半数の施設では80%以上にのぼり、60%以上の介護者は排泄介助が大きな負担だと回答した。
④街角調査:収集情報を写真と解説つきの街角トイレマップとして製本し、公表した。
⑤産官学共同研究事業:海外企業等との共同研究の交渉を開始した。
結論
①SET、FFMは高齢者にも安全に施行できる。
②高齢者の排便障害の病態は単一疾患ではなく、直腸肛門のみならず、運動器、中枢神経など複合的な理解が必要である。
③排便や介護改善のための器具・設備の開発は産官学共同事業の有望な課題である。
④排泄介助業務の軽減は社会全体にとっても大きな利益をもたらすと予想される。

公開日・更新日

公開日
2007-03-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200619010B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の排便機能障害評価法と尊厳の回復に関する研究
課題番号
H16-長寿-一般-026
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
萱場 広之(秋田大学医学部医学科統合医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 茆原 順一(秋田大学医学部医学科統合医学講座 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の排便障害の改善、生活の質と尊厳の回復を目的とし、以下を3本柱とした。
①高齢者に外来でできる排便機能評価法を応用し排便障害の病態生理を分析するとともに病態に即した介護や治療の推進
②排便障害を有する高齢者の生活の質の向上、介護者の負担軽減のための器具・設備の考案と作製
③排便障害に対処する社会的・医学的基盤形成
研究方法
①直腸肛門機能および排便機能評価法:直腸肛門内圧、Salne enema test・Fecoflowmetry(SET-FFM)連携法を主に用い、直腸肛門運動、感覚、排便状況の解析を行う。
②排便障害者用排便自助具や設備・介護用品の作成:個々の事例への対応から商品として提案できるものを抽出し、作製する。
③排便障害に対処する社会的・医学的基盤形成:排便介護の現場、社会基盤整備状況の調査をアンケート、実地検分で行う
結果と考察
①排便機能評価:肛門管圧と直腸圧の協調運動は、I型、II型、III型、IV型に分類され、正常、失禁、便秘、慢性便秘の特殊型に対応した。脊髄障害例では早期に排便反射が惹起され、生理食塩水の保持が困難であった。Fecoflowmetryは排便状況を反映し、塊状型(正常)、分節型(便秘)、平坦型(失禁)に分類された。肛門管のUltra Slow Waveのみられる例では高度の便秘や巨大結腸、肛門管圧の異常高値などを伴う新しい症候群を形成する可能性が示唆された。
②排便自助具作製:高度失禁例で逆行性洗腸を容易に行える器具を開発した。
③介護現場へのアンケート調査:介護施設における排泄介助の必要な高齢者は約半数の施設では80%以上にのぼり、60%以上の介護者は排泄介助が大きな負担だと回答した。
④街角調査:収集情報を写真と解説つきの街角トイレマップとして製本し、公表した。
⑤産官学共同研究事業:海外企業等との共同研究の交渉を開始した。
結論
①SET、FFMは高齢者にも安全に施行できる。
②高齢者の排便障害の病態は単一疾患ではなく、直腸肛門のみならず、運動器、中枢神経など複合的な理解が必要である。
③排便や介護改善のための器具・設備の開発は産官学共同事業の有望な課題である。
④排泄介助業務の軽減は社会全体にとっても大きな利益をもたらすと予想される。

公開日・更新日

公開日
2007-03-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200619010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
排便は、便を排泄に適切な場所と時に至るまで保持できることとその排出が要点である。直腸肛門領域に注目すると、便を排出する力として直腸収縮と同期する肛門の弛緩が重要であり、排便反射がおこる前後での便の保持能も重要である。本研究ではそれらの因子を評価する方法としてSaline enema test-Fecoflowmetry連携法が高齢者にも適用できる評価法として確立され、さらに新たな病態として肛門管のUltra Slow Waveに随伴する一連の症候群の存在が示唆されるなどの成果が得られた。
臨床的観点からの成果
排便機能障害を総体的に、簡便に評価できる方法はなかったが、Fecoflowmetryによって客観的評価法が確立されたといってよい。いままで現場に任せ切りであった排便ケアに、病態生理に基づいた適切なケアを供給することが可能になることは成果といえる。さらに、本方法によって直腸肛門機能、排便能にさほど異常がないながら、臨床的には高度の失禁と判定されている例もあり、介護現場の人的、設備的要因も含めた直腸肛門以外の要因の関与が浮き彫りになる場合もある。
ガイドライン等の開発
「あきた街角トイレマップ」
高齢者は無論、若年者であっても排便機能障害に悩み、それが生活や社会進出の妨げになっている場合が少なくない。たとえ、排便障害があっても生活の場や社会基盤の整備、さらにそれに関する情報を得ることで患者の行動範囲が広げられると考えられる。我々は秋田市と周辺において利用機会の多い街角のトイレ整備状況を写真と地図、文章で解説した携帯の「あきた街角トイレマップ」を作製し、一般に供した。
その他行政的観点からの成果
前述した「あきた街角トイレマップ」作製に際しては、秋田市のNPO組織アキタバリアフリネットワーク、秋田オストミー協会、秋田県庁、秋田市役所、をはじめ、多くの商店街や官公庁関連施設の協力を得た。現在、ハートビル法によって新しい建築物には一定基準のトイレを設置するものも増加しており、今後このマップの改定が軌道に乗れば行政・市民レベルで徐々にではあっても成果が挙がるのではないかと考える。
その他のインパクト
○秋田の地域的新聞「週間アキタ(2006)年」に排便機能障害者への社会基盤整備の記事掲載
○「メディカルトリビューン誌(2007年3月8日)」に高齢者の排便機能障害に関する研究として報道
○秋田県医師会の公式雑誌「秋田医報(2005年1234号)」に排泄問題に関する記事掲載
○脊椎疾患による高度失禁改善のための逆行性洗腸補助具の特許申請1件


発表件数

原著論文(和文)
3件
1件は印刷中
原著論文(英文等)
4件
4件中1件は印刷中、1件は投稿中、1件は執筆中
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
日本臨床病理学会〈4回)、日本小児栄養消化器肝臓学会〈1回)、日本小児消化管機能研究会(2回)、秋田産官学共同研究フォーラムなど
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
逆行性洗腸補助具
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件
一般向け〈週刊アキタ)、医家向け情報誌(秋田医報、メディカルトリビューン)ナドへの記事掲載、秋田オストミー協会集会参加、あきた街角トイレマップ作製、心身障害児療育施設での実践活動など

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshino H, Kayaba H, Hebiguchi T, et al.
Megacolon, Hemorrhoids and Constipation: Multiple Clinical Presentations of Anal Ultra Slow Waves and High Anal Pressure.
Tohoku J Exp Med , 211 (2) , 127-132  (2007)
原著論文2
Yoshino H, Kayaba H, Hebiguchi T, et al.
Anal ultra slow waves and high anal pressure in childhood: A clinical condition mimicking Hirschsprung’s disease.
J Pedistr Surg (in press) , 42  (2007)
原著論文3
Kayaba H, Hebiguchi T, Yoshino H, et al.
Investigation into the actual condition of the bowel management in nursing care facilities in a rural area of Japan - Emerging serious social problems in an aging society –
in preparation  (2007)
原著論文4
Kayaba H, Hebiguchi T, Yoshino H, et al.
Broomstick colonic irrigator for bowel control in spina bifida
J Urol(submitted)  (2007)
原著論文5
萱場広之、伊藤亘、山口一考、他
高齢者の排便障害の病態分析
臨床病理 , 55 (2) , 105-111  (2007)
原著論文6
萱場広之
排便機能障害の客観評価と病態分析
日本小児栄養消化器肝臓学会雑誌(in press)  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-