文献情報
文献番号
200612010A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子発現の網羅的解析によるワクチンの新しい安全評価に関する研究
課題番号
H17-トキシコ-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山口 一成(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
- 渡辺慎哉(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 臨床インフォマティクス講座)
- 野村信夫(産業技術総合研究所 生物情報解析研究センター)
- 浜口功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 トキシコゲノミクス研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
27,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
これまでに国立感染症研究所では、動物にワクチン接種した後にみられる体重の変化、血液学的および病理学的変化を指標にワクチンの安全性の評価を行ってきた。しかしながら、ワクチン接種に伴う副反応のメカニズムに関してはこれまで十分に明らかにされていない。今回われわれは、トキシコゲノミクスの手法を用いてワクチンの毒性に関連する遺伝子を特定し、ワクチンが生体に与える反応を分子レベルで解明するとともに、あらたなワクチンの安全性評価法の確立を目指す。平成18年度は特に緊急性の高い新型インフルエンザワクチン(H5N1)を含めたインフルエンザワクチンについて解析を行なう。
研究方法
ラットに全粒子型インフルエンザワクチン、新型インフルエンザワクチン(H5N1)、HAワクチン、および生理食塩水を接種し、体重の変化、血液学的解析、病理学的解析を行なった。また接種したラットから肝臓、脳、肺、血液を接種後1-4日に採取し、合計192サンプルについて、DNAマイクロアレイ解析を行ない、合計5346個のラット遺伝子の発現をクラスター解析した。
結果と考察
全粒子型インフルエンザワクチンおよび新型インフルエンザワクチン(H5N1)を接種されたラットでは、接種1日目に著明な体重減少と白血球減少を認めた。また接種ラットから摘出した肺での網羅的遺伝子発現を経時的に解析したところ、接種1日目において全粒子型インフルエンザワクチンおよび新型インフルエンザワクチン(H5N1)と、HAワクチン、生理食塩水との間で明確に遺伝子発現の違いを示す遺伝子を同定した。またこれらの遺伝子セットを用いて、インフルエンザワクンの安全性評価法への応用が可能であることを明らかにした。
結論
ワクチン接種後1日目のラット肺より、全粒子型インフルエンザワクチンおよび新型インフルエンザワクチン(H5N1)接種により、発現量に大きな変化をきたす遺伝子セットを同定した。ラットに接種した際に見られる著明な体重減少や白血球の減少も接種後1日目に顕著に認められており、これらの遺伝子の中にはワクチンの毒性とも関連する遺伝子が含まれると考えられる。またこれまでの解析より、マイクロアレイによる遺伝子群の発現量の変化は鋭敏かつ特異性が高いことが明らかとなっており、異常毒性否定試験に変わる新しい国家検定試験としての安全性の評価法確立を目指している。
公開日・更新日
公開日
2007-03-27
更新日
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