薬物の毒性発現を決める薬物動態・効果制御分子の推定と毒性回避を指向したスクリーニング系の開発

文献情報

文献番号
200612006A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物の毒性発現を決める薬物動態・効果制御分子の推定と毒性回避を指向したスクリーニング系の開発
課題番号
H17-トキシコ-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 雄一(東京大学 大学院薬学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 家入 一郎(九州大学 大学院薬学研究院)
  • 徳永 勝士(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 トキシコゲノミクス研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
31,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬物の薬効・毒性発現を決める因子を、遺伝子ノックアウト動物や遺伝子発現細胞などを用いて、薬物動態や薬効関連遺伝子の個々の相対的な重要性について明らかにし、さらにin vitro実験系を通じた定量的な予測法の確立を目指す。さらにそれらの結果に基づき、個々の遺伝子の多型と薬効・毒性との関連を探る臨床研究を行い、候補SNPsを迅速に診断できるチップの開発を行うことで、臨床医療に成果を還元できるように努める。
研究方法
Adefovirの腎毒性メカニズムの検討では、腎臓における輸送を決定するトランスポーターの同定を遺伝子発現系・ヒト腎スライス・ノックアウト動物を用いて行うとともに、毒性発現に必須なリン酸化に関与する分子を細胞に導入して細胞の増殖効率を観察した。BCRPノックアウト動物を用いて脳・精巣における薬物の臓器分布を見た。また、MRP3, MRP4ノックアウト動物を用いて体内動態の変化を観察した。また、pitavastatinの血中濃度とOATP1B1, BCRPの遺伝子多型ならびにmetforminの治療効果とOCT1の遺伝子多型の臨床解析を行った。また、SNP判定法として昨年よりさらに改良したDigiTag2法を確立し検証実験をした。
結果と考察
Adefovirの腎毒性の決定因子として、腎臓のトランスポーターであるOAT1, MRP4の重要性とリン酸化酵素として、adenylate kinase 2,4が重要であることを見出した。また、BCRPは、水溶性が高くアニオン性を示す薬物や内分泌かく乱物質の脳・精巣における曝露を決定する因子となることを明らかにした。またMRP3については、種々のグルクロン酸抱合体やmethotrexateの血中動態に影響を与えることがin vivo実験から明らかになった。Pitavastatinの血中動態は、BCRPの多型には影響されず、OATP1B1*15保持者では高値を示すこと、metforminの治療効果に、OCT1の遺伝子多型が正の相関を示すことが臨床研究から示された。DigiTag2法では、高い精度、コール率でSNPを同時に解析することができることが、実際のヒト検体を用いた検討から実証された。
結論
Adefovirの腎毒性に関わる分子群を明らかにした。体内動態に影響を与えないが、局所の分布に影響を与えることが想定されるトランスポーターを複数同定することに成功した。さらに生活習慣病治療薬の薬効・薬物動態と関連するトランスポーターのSNPsを見出した。また、新たなSNP迅速タイピング法を構築し、有用であることを実証した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
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