マイクロロボティクスを応用したナノテク心筋の開発

文献情報

文献番号
200609027A
報告書区分
総括
研究課題名
マイクロロボティクスを応用したナノテク心筋の開発
課題番号
H17-ナノ-若手-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
白石 泰之(東北大学加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山家 智之(東北大学加齢医学研究所)
  • 西條 芳文(東北大学加齢医学研究所)
  • 梅津 光生(早稲田大学理工学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
心臓が組織の需要に見合うだけの十分量の血液を駆出できない場合や、また、充分な血液を拍出しているものの心室の充満圧が上昇する場合、内科的もしくは外科的に治療がなされる。現在、このような心不全状態がとくに重篤であれば、心臓移植を最終手段として、補助人工心臓を用いた循環の補助が行われる。しかしながら、世界的に見てもドナー臓器の不足は深刻な問題となっており、国内では移植待機期間が数年にもわたる状況がつづいている。
 このような中で、心不全に対する補助循環の治療メタコンセプトは、低下した心臓ポンプ機能の心筋収縮をサポートすることによって達成されると考え、微細形状記憶合金を応用して高度に生体と協働する機能を持った人工心筋システムの開発研究を進めた。
研究方法
心臓全体を取り囲む形状を持ち、工学的にはパラレルリンク構造と呼ばれる形状であり、システムとして冗長な性質をもちながらそれぞれのユニットを個別に制御することにより心筋補助バンドの局所にかかる収縮力を調節する機能を持つ設計とした。循環系の力学的モデルによって効果を調べ、動物実験によって循環動態に対する人工心筋装置による収縮支援時の血行力学的有効性を検討した。平成18年度はとくに心臓を多層構造を構成する心筋の解剖学的走行を模擬する補助形態を具現化することを目標として研究をすすめた。
結果と考察
微細機械式アクチュエータを用いて心室収縮を外部から力学的に支援することによって、健常成山羊を用いた動物実験では、人工心筋駆動時に約20%の一回拍出量の増大が得られ、有効な血液拍出補助効果が得られることが示された。また、心室壁心筋走行を考慮した斜方からの収縮補助により、さらに有効な流量補助が行われる完全埋込システムが構築できることが示された。
結論
微細機械式アクチュエータにより心室収縮を外部から力学的に支援することによって有効な血液拍出補助効果が得られることが示された。これらの基盤技術によれば、体格の小さな患者にも胸腔内に埋め込むことのできる補助装置となりうる。次年度の設計到達目標は心室駆出率に相当する補助最大率を40%と設定して開発をさらにすすめる。機械的なサポートを受ける側の自由度を任意に設定でき、それを限定もしくは低減させないことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2007-10-04
更新日
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