ドライ比色法による微量血液分析在宅診断チップ

文献情報

文献番号
200609011A
報告書区分
総括
研究課題名
ドライ比色法による微量血液分析在宅診断チップ
課題番号
H16-ナノ-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
堀池 靖浩(独立行政法人物質・材料研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 黒田 大介(鈴鹿高等工業専門学校)
  • 小川 洋輝(アドビック株式会社)
  • 中西 淳(独立行政法人物質・材料研究機構)
  • 小川 涼(独立行政法人物質・材料研究機構)
  • 守本 祐司(防衛医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者人口は増加の一途にあり、高齢者が元気で過ごすためには疾病の予防が重要である。そこで本研究は、健康管理を在宅で行なうため、無痛針より採取された微量血液を分析し出来るだけ多くのマーカを診断するチップを創製することを目指す。その実現のため、(1)NiフリーSUS細管による無痛針による電子採血、(2)ドライ比色法の確立、(3)多項目診断チップとその小型測定装置を完成させ、(4)前臨床試験に入る。
研究方法
(1)では、NiフリーSUSの丸棒から細管化し、窒素吸収処理と熱処理による相変態を組み合わせて高剛性化し、無痛針を試作する。(2) ドライ比色用試薬液の長期保存化をめざし、TG、TC、HDLの3項目の試薬液にトレハロースを包含させ凍結乾燥し、使用時には乾燥分と同量の水で薬液に戻す方法を開発。(3)では、 本ドライ試薬を用いた上記3項目の測定可能を目標に、血球分離と同時に血漿秤量、高混合比ミキシング、全遠心力駆動などで動作する全自動計測装置を開発。(4)では、被検者から得られた血液から上記3項目を診断チップと従来検査法により測定して比較分析する。
結果と考察
(1)では、NiフリーSUSの外径100μm無痛針作製に成功したが、座屈や靭性に課題を残した。一方、外径150μmSUS304細管による無痛針痛針を開発し、更に近赤外光の偏光と皮膚表面と針との電位変化より静脈の位置を計測して画面を見ながら素人でも容易に採血できる電子システムを開発した。(2)では、TG、TC、HDLの3項目の試薬に対して、トレハロース濃度を0、1、3、10、20%と変え、標準と異常の各レベルに対して調べた結果、3項目共通に3-5%のトレハロース濃度が最適と分かった。現在6ヶ月を経ても劣化が無く、長期保存性を確認した。(3)では、昨年度報告のチップで血球分離部分を細管流路法を導入して改良し、その結果、極めて良好に秤量が達成。(4)では、診断チップと従来検査法の両方法共に測定値の間には高い相関性が認められたが、HDL値に若干の変動が見られ、その理由はHDL試薬の粘性が高いため、チップ内で血清の混合が不十分な可能性があり、チップ内壁処理などの対策を鋭意行なっている。
結論
NiフリーSUS管による無痛針はまだ課題が残るが、SUS304を用いた無痛針による電子採血、診断チップ、ドライ比色試薬及び全自動計測装置の4点をセットすることにより在宅診断が実現可能な域にまで到達させ、今後、前臨床実験を続けながら、学会を通じて広く本チップの有益性を訴えることにより、社会に新医療システムを提案していく。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200609011B
報告書区分
総合
研究課題名
ドライ比色法による微量血液分析在宅診断チップ
課題番号
H16-ナノ-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
堀池 靖浩(独立行政法人物質・材料研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 黒田 大介(鈴鹿高等工業専門学校)
  • 小川 涼(独立行政法人物質・材料研究機構)
  • 中西 淳(独立行政法人物質・材料研究機構)
  • 沖 明男(独立行政法人物質・材料研究機構)
  • 小川 洋輝(アドビック株式会社)
  • 守本 祐司(防衛医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者人口は増加の一途にあり、高齢者が元気で過ごすためには疾病の予防が重要である。そこで本研究は、健康管理を在宅で行なうため、無痛針より採取された微量血液を分析し出来るだけ多くのマーカを診断するチップを創製することを目指す。その実現のため、(1)NiフリーSUS細管による無痛針による電子採血、(2)ドライ比色法の確立、(3)多項目診断チップとその小型測定装置を完成させ、最終年度には(4)防衛医大において前臨床試験に入る。
研究方法
まず(1)では、NiフリーSUSの丸棒を熱間・冷間鍛造、結晶粒制御、高剛性化プロセスにより細管化し、無痛針を作製する。(2)では、流路に比色用試薬を包含したゼラチンの導入によるチップドライケミストリー開発する。 (3)では、6μL の全血から3項目の比色法診断チップを開発すると共に、全自動計測装置を開発する。(4)では、被検者の血液からTG、TC、HDLの3項目測定を診断チップと従来検査法で比較する。
結果と考察
(1)では、NiフリーSUS細管を窒素吸収処理と熱処理により高剛性化した外径100 m無痛針を試作した。しかし、表面性状悪化や靭性低下などの問題が判明。一方、外径150μmSUS304細管による無痛針痛針を開発し、近赤外光の偏光と皮膚表面と針との電位変化より静脈の位置を計測する電子採血を開発。(2)では、チップ流路に導入したゼラチンへの試薬包含が困難と判明し、試薬にトレハロース包含し、凍結乾燥によるドライ試薬の研究に変更し、TG、TC、HDLの試薬の共通に3-5%のトレハロース濃度が最適と判明。現在数ヶ月の長期保存性を確認。(3)では、本ドライ試薬を用い、中性脂肪値の抑制剤投与効果を4ヶ月のモニターで治療効果を観察し、開発した全自動計測装置を用い、(4)で、被検者の血液から上記3項目を診断チップと従来検査法により測定して比較分析し、TGとTCに関しては、非常に高い相関係数が算出されたが、HDL測定では、相関係数が必ずしも大きくなく、これは、HDL試薬の粘性が高いため、チップ内貯留槽において血清と十分に混合していなかったと考えられ、現在対策中である。
結論
在宅でできる血液検査診断チップシステムを目指し、NiフリーSUS管による無痛針はまだ課題が残るが、SUS304を用いた無痛針による電子採血、小型自動計測装置を用いての上記3項目の計測技術を確立し、患者の血液を用いた全臨床実験も開始し、検討すべき問題点はあるものの、臨床前試験によって、本診断チップが誤差・精度に関して実用的には十分な信頼性をもっていることを示した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200609011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
微小流体力学(microfludic)やμTAS(micro total analysis system)等の近年、盛んに研究が行われている分野での個々の成果を有機的に構築し、痛み無く微量血液を採取する技術、この採取した血液から複数の項目を同時に分析するチップを開発した。これらの技術は当該専門分野での一実用化例として、今後産業化に結びつく可能性を示すことが出来た。
臨床的観点からの成果
無痛で微量の血液を簡単に採取する技術は、もちろん薬事法の範疇のため実用のためには様々な課題があるが、人類永遠の夢であり、このような技術を世に示すことが出来たことにより、採血はもちろんのこと、薬液注入など様々な応用の可能性を示すことができた。またこのような微量の血液から複数項目を検査することが出来るチップは、無医村や緊急時などの遠隔診断を行う際の重要な診断ツールとして有効である。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
平成18年7月21日、日本経済新聞紙上にて、”自宅で簡単に測定”と題し、本研究のチップを使い、総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロールの血中脂質3項目を測定する例が紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
15件
著書・解説・総説など
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計6件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
A. Oki, H. Ogawa, M. Nagai, et al.
Development of healthcare chips checking life-style-related diseases
Materials Science and Engineering C , 24 (6) , 837-843  (2004)
原著論文2
高井まどか、新橋里美、小川洋輝、他
多項目同時測定ヘルスケアチップ用マイクログルコースセンサ-の創製
高分子論文集 , 61 (10) , 555-560  (2004)
原著論文3
A. Yamamoto, Y. Kohyama, D. Kuroda, et al.
Cytocompatibility evaluation of Ni-free stainless steel manufactured by nitrogen adsorption treatment
Materials Science & Engineering C Biomimetic and Supramolecular Systems , 24 , 737-743  (2004)
原著論文4
D. Kuroda, T. Hanawa, T. Hibaru, et al.
Torsion and Tensile Properties of Thin Wires of Nickel-Free Austenitic Stainless Steel with Nitrogen Absorption Treatment
Materials Transactions , 45 , 112-118  (2004)
原著論文5
C.H. Chang, H. Ogawaa, A. Oki, et al.
Healthcare Chip Based on Integrated Electrochemical Sensors Used for Clinical Diagnostics of Bun
Japanese Journal of Applied Physics , 45 , 4241-4247  (2006)
原著論文6
R. Ogawa, H. Ogawa, A. Oki, et al.
Fabrication of nano-pillar chips by a plasma etching technique for fast DNA separation
Thin Solid Films , 515 , 5167-5171  (2006)
原著論文7
N. Kaji, R. Ogawa, A. Oki, et al.
Study of water properties in nanospace
Anal. Bioanal. Chem. , 386 , 759-764  (2006)
原著論文8
黒田大介、檜原高明、黒田秀治、他
無痛針用Niフリーステンレス鋼細管の機械的特性
高等専門学校の教育と研究 , 30-36  (2006)
原著論文9
黒田大介
Niフリーステンレス鋼
金属  (2007)
原著論文10
S. Fukumoto, T. Mastuo, D. Kuroda, et al.
Micro-Resistance Spot Welding of Nickel Free Austenitic Stainless Steel
Materials Science Forum , 4081-4086  (2006)
原著論文11
T. Yamada, T. Uezono, K. Okada, et al.
In Vivo Batteryless Wireless Communication System for Bio-MEMS Sensors
Japanese Journal of Applied Physics , 44 , 2879-2882  (2005)
原著論文12
T. Yamada, T. Uezono, K. Okada, et al.
RF Attenuation Characteristics for In Vivo Wireless Healthcare Chip
Japanese Journal of Applied Physics , 44 , 5575-5577  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-