重度の起立性低血圧による寝たきりを防止するバイオニック血圧制御装置の要素技術の開発及びその臨床応用

文献情報

文献番号
200609009A
報告書区分
総括
研究課題名
重度の起立性低血圧による寝たきりを防止するバイオニック血圧制御装置の要素技術の開発及びその臨床応用
課題番号
H16-ナノ-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
谷 俊一(高知大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 文靖(高知大学 医学部附属病院)
  • 宍戸 稔聡(国立循環器病センター研究所)
  • 宮脇 義徳(オムロンヘルスケア株式会社 新規事業開発センター)
  • 佐藤 隆幸(高知大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
21,675,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中高年を好発年齢とする進行性の神経変性疾患、例えば、シャイ・ドレーガー症候群・パーキンソン病などでは、生命維持に極めて重要な血管運動中枢が侵され、動脈圧受容器を介した交感神経系による血圧調節機能が廃絶するため、重度の起立性低血圧や起立性失神発作をおこすようになり、ついには、寝たきり状態となり、生活の質が著しく障害される。さらに、嚥下性肺炎や尿路感染症を繰り返し死にいたることが多いが、現在のところ治療の手だては全くない。そこで、本研究では、血管運動中枢機能を代替するデバイス、圧受容器を代替する圧バイオセンサー、交感神経遠心路を代替する神経刺激用マイクロ電極の3要素の開発を行い、その評価を実験的臨床研究にて行う。今年度は、血管運動中枢の機能を代行する装置の設計と体外式のものを試作開発することを重点化した。
研究方法
機能廃絶した血管運動中枢の代替装置を開発し、血圧を常時監視しながら、実時間演算で交感神経の電気刺激頻度を決定し、交感神経を電気刺激する。すなわち、圧バイオセンサーによる血圧計測→血管運動中枢を代替する人工的血管運動中枢代替デバイス→交感神経遠心路を代替する神経刺激用マイクロ電極→交感神経節後線維→血管床からなるフィードバック血圧制御装置を開発する。
結果と考察
外傷性脊髄損傷により座位ですら低血圧発作を起こし寝たきりとなっている患者に対して、フィードバック血圧制御を行うことにより、車イスで散歩ができるようになった。
結論
ヒトの血圧をサーボ制御するためのシステムの試作開発に成功した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200609009B
報告書区分
総合
研究課題名
重度の起立性低血圧による寝たきりを防止するバイオニック血圧制御装置の要素技術の開発及びその臨床応用
課題番号
H16-ナノ-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
谷 俊一(高知大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 文靖(高知大学 医学部附属病院)
  • 宍戸 稔聡(国立循環器病センター研究所)
  • 小椋 敏彦(オムロンヘルスケア株式会社 新規事業開発センター)
  • 宮脇 義徳(オムロンヘルスケア株式会社 新規事業開発センター)
  • 佐藤 隆幸(高知大学 医学部)
  • 安藤 元紀(岡山大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経変性疾患や外傷性脊髄損傷などでは、血管運動中枢が侵されたり、交感神経遠心路が断たれるために動脈圧反射機能が廃絶し、重度の起立性低血圧や起立性失神発作をおこすようになる。そして最期には、寝たきり状態となり、生活の質が著しく障害される。さらに、嚥下性肺炎や尿路感染症を繰り返し死にいたることが多いが、現在のところ治療の手だては全くない。そこで、本研究では、起立性低血圧を克服するための機能再建装置「バイオニック動脈圧反射装置」を試作し、臨床研究によりその有効性を検証した。
研究方法
バイオニック動脈圧反射装置の動作原理は、「血圧を常時監視しながら、実時間演算で交感神経の電気刺激頻度を決定する」というものである。すなわち、本装置は、圧センサー→人工的血管運動中枢→電気刺激装置→交感神経→血管床からなるフィードバック血圧制御装置である。
結果と考察
1.脊髄交感神経刺激に対する血圧応答は、二次の低域通過型の伝達関数で近似され、定常ゲインは0.4、減衰係数は2.6、固有周波数は0.06 Hz、ラグ時間は9秒であった。シュミレーション解析により、比例補償係数を1、積分補償係数を0.1にすることによって、血圧制御装置の最適設計が可能であるという結果を得た。
2.大腿部の圧迫止血帯の急速解除は中心静脈圧の低下を伴い、起立性低血圧とよく似た血行動態変化を誘発することが確認された。
3.設計したバイオニック動脈圧反射装置により、大腿部圧迫止血帯の急速解除による血圧低下を防止可能であることが確認された。
4.座位低血圧による意識消失発作を伴う頚髄損傷患者にバイオニック装置を適用し、血圧制御することができた。
5.直径1mmのテフロンカテーテルに微細加工技術を用いて、5極の電極を配置し、任意の電極間インピーダンスを常時監視しながら、最適な刺激強度を決定することが可能な電極システムを開発した。
結論
1.全身麻酔下の臨床的起立性低血圧モデルの症例でバイオニック装置の有効性が確認された。
2.意識下の脊髄損傷患者にバイオニック装置を適用し、座位低血圧による意識消失発作を防止することができた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200609009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、従来、定性的な解明にとどまっていた動脈圧反射の機能を伝達関数というきわめて定量的な手法を用いて同定し、その動作原理を機能再建装置に移植するという「統合と合成」による機能再建の技術が用いられる。国の内外にこのような着想での血圧制御装置の開発に関する研究はみあたらない。
臨床的観点からの成果
血圧を外部装置を用いて、フィードバック制御する手法は、術中の血圧自動管理に応用された。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
日経産業新聞2004年6月1日号の創造主義宣言という特集の中で、新しい医療技術として紹介された。
共同通信社2004年10月12日号の医療新世紀という特集の中で、最新医療情報として紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
19件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
5件
著書、総説
その他論文(英文等)
1件
著書
学会発表(国内学会)
108件
学会発表(国際学会等)
26件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
新聞報道

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamasaki F, Ushida T, Sato T, et al
Artificial baroreflex: Clinical application of a bionic baroreflex system.
Circulation , 113 , 634-639  (2006)
原著論文2
Ando M,Yamasaki F, Sato T,et al
Efferent vagal nerve stimulation protects heart against ischemia-induced arrhythmias by preserving connexin43 protein
Circulation , 112 , 164-170  (2005)
原著論文3
Zhang Y,Ando M,Yamasaki F, Sato T,et al
Acetylcholine inhibits the hypoxia-induced reduction of connexin43 protein in rat cardiomyocytes
J Pharmacol Sci , 101 , 214-222  (2006)
原著論文4
Kuwabara M,Ando M,Yamasaki F, Sato T,et al
Nitric oxide stimulates vascular endothelial growth factor production in cardiomyocytes involved in angiogenesis
J Physiol Sci , 56 , 95-101  (2006)
原著論文5
Yamasaki F, Sato T,et al
Association between arterial stiffness and platelet activation
J Hum Hypertens , 19 , 527-533  (2005)
原著論文6
Kakinuma Y, Yamasaki F, Sato T,et al
Acetylcholine from vagal stimulation protects cardiomyocytes against ischemia and hypoxia involving additive nonhypoxic induction of HIF-1alpha
FEBS Lett , 579 , 2111-2118  (2005)
原著論文7
Kudo Y, Sato T, et al
HIF-1 alpha is involved in the attenuation of experimentally induced rat glomerulonephritis
Nephron Exp Nephrol , 100 , 95-103  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-