テーラーメイド医療用全自動DNAチップ診断機器の開発

文献情報

文献番号
200609007A
報告書区分
総括
研究課題名
テーラーメイド医療用全自動DNAチップ診断機器の開発
課題番号
H16-ナノ-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
源間 信弘(株式会社東芝研究開発センター事業開発室DNAチップ事業開発プロジェクト担当)
研究分担者(所属機関)
  • 東 純一(大阪大学大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
34,425,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品の有効性や副作用発現の個体差を予測するために、薬物代謝酵素や薬物標的分子の遺伝子多型の判定および特定の遺伝子発現量の変動解析に関するデータが蓄積されつつある。今後これら遺伝子情報を基にしたテーラーメイド医療が普及していくと考えられているが、既存の遺伝子解析機器は非常に高価で且つ操作に高い専門性が必要なため、一般の医療現場で使うにはまだまだハードルが高い。本研究は、テーラーメイド医療の実践を加速するために、迅速、安価、高信頼性のDNAチップおよび全自動DNAチップ診断機器を開発することを目的とする。
研究方法
(1)全自動DNAチップ診断機器の開発
昨年度行なったプロトタイプ1号機での検証実験を受けて、本年度はユーザビリティも考慮した2号機を開発し、ヒト血液からの全自動でのDNA検出を検証した。

(2)薬物動態予測用DNAチップの開発
昨年全自動DNAチップ診断機器で使用する核酸増幅法にLAMP法の採用を決めたことを受けて、これまでPCR法で開発してきたCYP2D6チップについてLAMP法への対応を図った。また、昨年度までに開発済みのCYP2C9、CYP2C19、NAT2チップについても継続して実検体での検討を進め、実用性の評価を行った。
結果と考察
全自動DNAチップ診断機器の開発では、ユーザビリティを向上させた2号機を完成させ、ヒト血液を用いて全自動でのDNA検出を検証した。また、薬物動態予測用DNAチップの開発では、LAMP法に対応したCYP2D6解析用チップを開発し、臨床検体を使った評価で実用性を検証することができた。DNAチップを用いた小型の全自動DNA検査システムは世界的にも殆ど例がなく、今後テーラーメイド医療への貢献が大いに期待されると考えている。
結論
平成18年度は本研究事業の最終年度であったが、ほぼ計画通りに目標を達成することができた。今後、臨床診断機器としての信頼性向上に向けて、継続して臨床検体を使った評価を行い、早期実用化に繋げたい。

公開日・更新日

公開日
2007-04-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200609007B
報告書区分
総合
研究課題名
テーラーメイド医療用全自動DNAチップ診断機器の開発
課題番号
H16-ナノ-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
源間 信弘(株式会社東芝研究開発センター事業開発室DNAチップ事業開発プロジェクト担当)
研究分担者(所属機関)
  • 東 純一(大阪大学大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品の有効性や副作用発現の個体差を予測するために、薬物代謝酵素や薬物標的分子の遺伝子多型の判定や、特定の遺伝子発現量の変動解析に関するデータが蓄積されつつある。本邦当局でもファーマコゲノミクスの利用に向けた準備が進められるなど、今後は遺伝子情報を基にしたテーラーメイド医療が普及していくと考えられているが、既存の遺伝子解析機器は非常に高価で且つ操作に高い専門性が必要なため、一般の医療現場で使うにはまだまだハードルが高い。本研究は、テーラーメイド医療の実践を加速するために、迅速、安価、高信頼性のDNAチップおよび全自動DNAチップ診断機器を開発することを目的とする。
研究方法
(1)全自動DNAチップ診断機器の開発
主任研究者らが開発した電流検出型DNA解析技術および完全密閉型構造の反応容器をベースに、血液から全自動でDNAの解析が行える診断機器を試作し、ヒト血液を用いて機能検証を行った。

(2)薬物動態予測用DNAチップの開発
代表的な薬物代謝酵素CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、NAT2の遺伝子多型を解析するための電流検出型DNAチップを開発し、その実用性を臨床検体を使い評価した。
結果と考察
(1)全自動DNAチップ診断機器の開発
検査で必要な核酸抽出、増幅、ハイブリダイゼーション、検出、解析の5ステップのプロセスを完全全自動で行なうためのシステムを開発した。また、核酸増幅産物によるコンタミネーションの抑制が欠かせないと考え、DNAチップを内蔵した密閉型の使い捨てカセットを作製し、カセット内で一連の反応を行うデバイスも開発した。ヒト血液を用いて、NAT2遺伝子の一塩基多型(SNP)を検出した結果、従来法(PCR-RFLP)による解析結果と一致しており、全自動での検査が可能であることを検証できた。

(2)薬物動態予測用DNAチップの開発
LAMP法に対応した4遺伝子の多型検出用チップを開発し、臨床検体を使って評価した結果、従来法(PCR-RFLP等)による解析結果と一致しており、遺伝子型を精度良く解析できることが検証できた。
結論
血液1滴から簡単にDNAを解析できる小型の全自動DNAチップ診断機器を開発し、ヒト血液からのSNPs検出を検証した。DNAチップを用いた小型の全自動DNA検査システムは世界的にも殆ど例がなく、今後テーラーメイド医療の実践に貢献できる様、製品化に向けて開発を加速したい。

公開日・更新日

公開日
2007-04-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200609007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
血液1滴から簡単にDNAを解析できる小型の全自動DNAチップ診断機器は世界的にも例がなく、今後テーラーメイド医療への貢献が期待される。また、検出が非常に難しいとされている薬物代謝酵素CYP2D6の遺伝子欠損/重複を、DNAチップを使って精度良く検出できたことは大きな成果と考えている。
臨床的観点からの成果
ワルファリン臨床試験(薬物代謝酵素CYP2C9の遺伝子多型判定による薬物動態予測)や、禁煙指導に関わる臨床研究(薬物代謝酵素CYP2A6の遺伝子多型判定による喫煙行動のとの関連性)から、安全な薬物療法の実践、さらには予防医学にも繋がる有用な成果が得られた。
ガイドライン等の開発
次世代医療機器評価指標検討会(厚生労働省)/医療機器開発ガイドライン評価検討委員会(経済産業省)合同検討会(2006/6/15)で、「テーラーメイド医療用DNAチップ診断機器」が新たな分野として選択され、医療機器としての評価指標ガイドライン策定に向けた活動が開始された。
その他行政的観点からの成果
第1回医療テクノロジー推進会議(2006/9)で、医療機器重点開発促進テーマとして「ゲノム科学・タンパク質科学やIT分野技術等を活用した遺伝子チップ等の簡易診断機器」が選ばれたことを受け、DNAチップの実用化に向けた具体的な戦略の検討を行なった。
その他のインパクト
「薬剤感受性・副作用判定DNAチップ・システムの研究・開発について」と題して、本研究事業への取り組みを2004年7月27日に新聞発表。日経産業新聞、日刊工業新聞、化学工業新聞、時事通信などに取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
4件
臨床薬理、TDM研究、医学のあゆみ
原著論文(英文等)
6件
British J Clin Pharmacol, Int Clin Psychopharmacol, Drug Metab Pharmacokinet, 他
その他論文(和文)
3件
書籍:バイオ解析/診断技術のテーラーメイド医療の応用(CMC)、バイオ電気化学の実際(CMC)、DNAチップとリアルタイムPCR(講談社)
その他論文(英文等)
1件
書籍:Pharmacogenomics and Proteomics(AACC)
学会発表(国内学会)
21件
日本臨床薬理学会、日本TDM学会、日本臨床検査医学会、医療薬学フォーラム、日本薬物動態学会、他
学会発表(国際学会等)
6件
PRACP(2005/4,2006/6), ISSCC(2006/2), WCCPT(2004/8),他
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計15件
その他成果(特許の取得)
0件
国内出願:9件(含、予定1件) 外国出願:6件(含、予定4件)
その他成果(施策への反映)
1件
「テーラーメイド医療用DNAチップ診断機器」評価指標ガイドライン(作成中)
その他成果(普及・啓発活動)
7件
CEATEC(2005/10)、ナノサイエンスサマー道場(2005/8)、オルガテクノ(2006/7)、総合科学技術会議成果報告会(2007/12)、ナノメディシン研究成果報告会(3回)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakamura N, Ito K, Hongo S, et al.
Determination of single nucleotide polymorphisms in N-acetyltransferase2 gene using an electrochemical DNA chip and an automated DNA detection system
臨床病理 , 55 (3) , 216-223  (2007)
原著論文2
Ikenaga Y, Fukuda T, Fukuda K, et al.
The frequency of candidate alleles for CYP2D6 genotyping in the Japanese population with an additional respect to the -1584C to G substitution
Drug Metab Pharmacokinet , 20 (2) , 113-116  (2005)
原著論文3
Kato M, Ikenaga Y, Wakeno M, et al.
Controlled clinical comparison of Paroxetine and Fluvoxamine considering the serotonin transporter promoter polymorphism
Int Clin Psychopharmacol , 20 (3) , 151-156  (2005)
原著論文4
Kubota R, Ohno M, Yasunaga M, et al.
Tentative treatments for tuberculosis based on N- acetyltransferase gene polymorphism
Jpn J Therapeutic Drug Monitoring , 22 (4) , 336-340  (2005)
原著論文5
Nonen S, Okamoto H, Akino M, et al.
No positive association between adrenergic receptor variants of α2cDel322-325, β1Ser49, β1Arg389 and the risk for heart failure in Japanese population
British J Clin Pharmacol , 60 (4) , 414-417  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-