新規センダイウイルスベクターを用いた臍帯血幹細胞増幅法の開発

文献情報

文献番号
200607071A
報告書区分
総括
研究課題名
新規センダイウイルスベクターを用いた臍帯血幹細胞増幅法の開発
課題番号
H18-遺伝子-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
花園 豊(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 誠(ディナベック(株))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
22,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臍帯血造血幹細胞の増幅技術を確立する.現在,臍帯血移植は小児だけでなく成人に対しても普及しつつある.しかし,HLAが適合し十分な細胞数を有する臍帯血は少なく,移植後の生着不全が問題である.安価で安全な臍帯血増幅法の確立が望まれる.
研究方法
(1) 導入遺伝子: HOXB4遺伝子を用いる. HOXB4は,造血幹細胞の増幅効果が明らかな上,ES細胞から造血幹細胞を誘導する作用を併せ持つ.
(2) 細胞:ヒトやサルの臍帯血幹細胞は量が限られる上,個体ごとのロット差が大きいことから,遺伝子導入効率を比較・評価する本年度の実験には,株化幹細胞であるサルES細胞を用いた.
(3) ベクター:センダイウイルス(SeV)ベクターを利用する.SeVベクターは,ヒトへの病原性がなく,DNAを介さない細胞質型RNAベクターである. HOXB4遺伝子が必要な期間だけ発現した後は消滅する,新しい遺伝子導入技術をSeVベクターを利用して実現する.
(4) 評価系:造血幹細胞の増幅やES細胞の造血分化をin vivoで評価する大型動物実験系として,サルとヒツジの子宮内胎仔への幹細胞移植の系を開発する.
結果と考察
(1) SeVベクターは,サルES細胞への遺伝子導入に非常に優れていた.1回のベクター添加で約60%の細胞に遺伝子導入が可能であった.これは,ES細胞への遺伝子導入効率がもっとも優れているレンチウイルスベクターによる遺伝子導入効率に匹敵する.
(2) SeVベクターで導入した遺伝子の発現を,抗ウイルス剤(リバビリンなど)やKSRの添加によって調節するという,薬剤による遺伝子発現調節法を検討した.また現在,導入遺伝子が自動的に消滅する新しいSeVベクターを開発中である.
(3)サルES細胞由来の造血細胞を,サル胎仔やヒツジ胎仔に移植すると,生後,ES由来の造血を一部にもつ造血キメラ動物の産出が可能である.この移植系を利用すれば,臍帯血の増幅やES細胞の造血分化の有効性や安全性を的確に評価できる.
結論
(1) SeVベクターは,サルES細胞へきわめて効率よく遺伝子導入できる.
(2) 遺伝子導入細胞から,薬剤によるSeVベクターの除去法を検討した.
(3)サル胎仔およびヒツジ胎仔への幹細胞移植法を確立し,本技術の有効性と安全性を大型動物で評価する系を開発した.

公開日・更新日

公開日
2007-04-05
更新日
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