疾患関連遺伝子の機能解明のための疾患モデル動物資源の開発と高度化に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200607069A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患関連遺伝子の機能解明のための疾患モデル動物資源の開発と高度化に関する総合的研究
課題番号
H18-ゲノム-指定-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
松田 潤一郎(独立行政法人医薬基盤研究所 生物資源研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 葛西 孫三郎(高知大学 農学部 )
  • 中潟 直己(熊本大学 生命資源研究・支援センター)
  • 横山 峯介(新潟大学 能研究所附属生命科学リソース研究センター)
  • 鈴木 治(独立行政法人医薬基盤研究所 生物資源研究部)
  • 小倉 淳郎(独立行政法人理化学研究所 バイオリソースセンター)
  • 岡部 勝(大阪大学 遺伝情報実験センター)
  • 加藤 秀樹(浜松医科大学 医学部附属動物実験施設)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
53,479,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトゲノム研究用資源としての疾患モデル動物の系統維持、胚・配偶子等の保存、供給、遺伝学的及び微生物学的品質管理などに関する総合的研究を行い、疾患モデル動物バンクの基盤整備を進め、ゲノム医学、創薬などの発展を推進する。
研究方法
マウス、ラット、スナネズミ、コモンマーモセットなどの実験動物を使用し、繁殖学、生殖工学、遺伝学、微生物学などの手法を用いて次項の研究を行った。
結果と考察
(1)疾患モデル動物の維持管理、胚・配偶子等の保存、供給に関しては、(ア)疾患モデルマウスやスナネズミなどの特殊実験動物について、効率良い繁殖維持法の改良、開発を行うとともに、マウスの体外受精能に関与する蛋白質を同定した。医薬基盤研究所において疾患モデル動物バンクを構築し、本格的な運用を開始した。(イ)胚凍結保存法の改良を目指し、マウス胚における耐凍剤透過性チャンネルの発現を解明した。(ウ)凍結マウス精子のドライアイスによる簡便な輸送法開発を行った。(エ)幼若ラットからの効率的採卵法を開発した。(オ)採取する卵子の高品質化を目指して品質(発生能)に影響を与える分子(遺伝子・蛋白質・microRNA)の探索を行った。(カ)近交系マウス卵子のガラス化保存の実用化に成功し、マウス体細胞クローンの遺伝子発現異常を解明するとともに、マウス新生仔卵巣から多数の発育期卵子を得、体外発育に成功した。(キ)X-GFPマウスを用いることで容易に雌雄キメラマウスを作製することができ、さらに顕微授精の応用することで相同組換えマウスの効率的作製法開発が進んだ。(2)遺伝学的及び微生物学的品質管理については、(ア)新たな霊長類の実験動物としてのコモンマーモセットの遺伝的マーカーとして、酵素・蛋白の遺伝的多型を明らかにした。(イ)リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)汚染検査をより確実に行うための、同居マウスからの汚染検出条件を明らかにした。
結論
疾患モデル動物研究資源の基盤整備に関して、系統維持、胚・配偶子等の保存、供給、遺伝学的及び微生物学的品質管理などの分野で多くの成果を得た。これらの成果に基づき医薬基盤研究所に疾患モデル動物バンクを構築することができるなど、ゲノム医学等の発展に貢献した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200607069C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ヒトゲノム研究用資源としての疾患モデル動物の系統維持、胚・配偶子等の保存、供給、遺伝学的及び微生物学的品質管理などに関する総合的研究を行い、疾患モデルマウスの効率良い繁殖維持法の改良、マウスの体外受精能に関与する蛋白質の同定、凍結マウス精子の簡便な輸送法開発、近交系マウス卵子のガラス化保存の実用化、人獣共通感染症であるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)汚染検査法開発などを行い、成果は多数の国際的学術誌に掲載された。
臨床的観点からの成果
本研究は、疾患モデル動物がゲノム医学、ゲノム創薬などの研究にスムーズに有効に利用されるための実験動物研究資源の基盤整備を科学的に支えるためのものである。先進的な治療法や画期的な医薬品開発のためには、臨床応用の前に必ず動物実験を行い、その有効性や副作用などを検討する必要がある。臨床応用を目指した動物実験に、疾患モデル動物が高品質で迅速に研究者に供給される体制作りを整備することで、本研究は臨床研究を大いに推進するものである。
ガイドライン等の開発
直接は該当なし。但し、実験動物を生体や凍結胚・精子などで世界的に輸出入を行う場合に、人獣共通感染症の病原体の拡散蔓延防止策などが必要になってくることが想定され、その場合には本研究で得られた微生物学的な検査技術や実績が、ガイドライン等の開発に応用されるものと思われる。
その他行政的観点からの成果
科学技術基本計画などで「生物遺伝資源の戦略的・体系的な整備を促進する」ことが謳われており、医学研究や創薬研究を支援する疾患モデル動物資源バンクの構築は、厚生労働行政上も重要な課題であり、今後、長期的、安定的な体制の整備を持続的に行うための基盤研究が着実に推進された。
その他のインパクト
関連研究として、疾患検査法の特許出願を1件行った。実験動物学会、遺伝学会などで厚生労働省傘下の実験動物バンクとしてパネル展示を行い、パンフレットを配布するなど広く広報宣伝活動を行った。さらに、実験動物バンクのホームページ(http://animal.nibio.go.jp/)を開設し、成果の普及、利用を行った。また、各専門学会で成果の発表を多数行った。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
37件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
47件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
http://animal.nibio.go.jp/

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shinsuke Seki, Toshimitsu Kouya, Ryoma Tsuchiya, etal.
The permeability to water and cryoprotectants of immature and mature oocytes in the zebrafish (Danio rerio).
Cryobiology , 54 (1) , 121-124  (2007)
原著論文2
Ono R, Nakamura K, Inoue K, etal.
Deletion of Peg10, an imprinted gene acquired from a retrotransposon, causes early embryonic lethality.
Nat Genet , 38 , 101-106  (2006)
原著論文3
Kawai Y, Hata T, Suzuki O, etal.
The relationship between sperm morphology and in vitro fertilization ability in mice.
J Reprod Dev , 52 (4) , 561-568  (2006)
原著論文4
Suzuki O, Koura M, Noguchi Y, etal.
Analyses of the cDNA and genomic DNA sequences encoding the luteinizing hormone β-subunit precursor protein in the rabbit.
Gen Comp Endocrinol , 150 (3) , 514-519  (2007)
原著論文5
Inoue K, Noda S, Ogonuki N, etal.
Differential developmental ability of embryos cloned from tissue-specific stem cells.
Stem Cells  (2007)
原著論文6
Ogonuki N, Mochida K, Miki H, etal.
Spermatozoa and spermatids retrieved from frozen reproductive organs or frozen whole bodies of male mice can produce normal offspring.
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. , 103 , 13098-13103  (2006)
原著論文7
Shinmen A, Honda A, Ohkawa M, etal.
Efficient production of intersubspecific hybrid mice and embryonic stem cells by intracytoplasmic sperm injection.
Mol. Reprod. Dev.  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-