生合成解析と遺伝子組換え技術を基盤とする薬用植物の活用に関する研究

文献情報

文献番号
200607064A
報告書区分
総括
研究課題名
生合成解析と遺伝子組換え技術を基盤とする薬用植物の活用に関する研究
課題番号
H18-ゲノム-指定-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
木内 文之(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 柴田 敏郎(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター  北海道研究部)
  • 飯田 修(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター  種子島研究部)
  • 吉松 嘉代(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター  筑波研究部)
  • 渕野 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター  筑波研究部)
  • 関田 節子(徳島文理大学香川薬学部)
  • 鎌田 博(筑波大学大学院生命環境科学研究科)
  • 野口 博司(静岡県立大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
31,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬用植物成分を創薬に有効利用するための基盤作りを目的として,薬用植物成分の生合成やそれに関与する酵素並びに遺伝子の解析,薬用植物への遺伝子導入法並びに遺伝子組換え薬用植物の評価法等に関する基礎研究を行った.
研究方法
カンゾウ並びにジンコウノキにおける2次代謝成分の生合成過程を明らかにし,ポリケタイド合成酵素による新規化合物の生成を検討した.また,薬用植物への遺伝子導入法を検討するとともに,組換え体の成分評価と環境影響評価手法を検討した.更に,薬用植物種子の発芽適温等のデータを収集した.
結果と考察
グリチルリチン生合成には, β-アミリンの11位と30位がそれぞれ先に水酸化される二つの経路が存在することを明らかにし,ジンコウノキの障害による樹脂化過程では,時間経過とともにセスキテルペン,エポキシクロモン類,テトラヒドロクロモン及びクロモン類がこの順番で生成することを明らかにした.今回の結果を基に,これらの変化に関与する酵素遺伝子の解析が進展するものと期待される.
ダイオウ由来ベンザルアセトン合成酵素(BAS)は,本来の基質ではないアントラニルCoAから,生理活性キノリノンアルカロイドを与え,アロエ由来のペンタケタイド合成酵素のエンジニアリングにより,これまで植物由来III型PKSでは得られたことのない縮合環系であるナフタレンが得られた.これらの結果は,酵素の新しい利用法や酵素のエンジニアリングによって,化合物ライブラリの多様性を拡張する道を拓くことができることを示すものである.
ケシ種子への遺伝子導入では,導入遺伝子の発現は確認できず,形質転換効率の改善のための検討が必要であった.BAS遺伝子を導入したシロイヌナズナでは,酵素反応生成物の存在は確認できず,代謝物解析用のソフトウェアを用いたLC-MS測定により,わずかな成分の変化を検出することができた.ベラドンナ形質転換体を用い,サンドイッチ法,抽出アッセイ法,ディッシュパック法によるアレロパシー活性評価を行い,これらの手法が,遺伝子組換え薬用植物の環境影響評価の標準法として利用可能であることを示した.
結論
薬用植物有効成分の生合成過程の解明と生合成酵素を用いた新規化合物の生成,薬用植物への遺伝子の導入とその際の成分変化の評価並びに環境への影響評価に関する成果を上げるとともに,問題点も明らかにした.

公開日・更新日

公開日
2007-04-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200607064C

成果

専門的・学術的観点からの成果
カンゾウにおけるグルチルリチンの生合成中間体の解明は,今後の酵素並びに遺伝子の解析の基盤となる.また,ジンコウノキの樹脂化過程を明らかにできた点は,資源が枯渇しつつある沈香の人工的な生成に向けた研究としても重要である.薬用植物二次代謝酵素のエンジニアリングによる新規化合物の生成は,酵素のエンジニアリングによって望みの化合物を生成させるための基礎研究としての意義が大きい.薬用植物種子の保存・発芽条件等は,今後薬用植物資源を保存・活用していくために必須のものである.
臨床的観点からの成果
グルチルリチン生合成過程の解明は,カンゾウの栽培において現在課題となっている,日本薬局方で規定するグリチルリチン含量(2.5%以上)の確保の糸口になることが期待される.また,植物二次代謝酵素の新しい利用法並びに酵素エンジニアリングによって,新規化合物を得ることができることを示したことは,新しい医薬品開発のための創薬シード化合物ライブラリの拡充に貢献するものである.
ガイドライン等の開発
遺伝子組換え薬用植物の環境に与える影響の評価項目の一つとしてのアレロパシー試験法について,3種類の試験法を検討し,具体的評価手法として設定可能とした.
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
I. Abe, T. Abe, K. Wanibuchi, et al.
Enzymatic Formation of Quinolone Alkaloids by a Plant Type III Polyketide Synthase
Organic Letters , 8 (26) , 6063-6065  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-