遺伝子治療を目指した新規バキュロウイルスベクターの開発

文献情報

文献番号
200607033A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子治療を目指した新規バキュロウイルスベクターの開発
課題番号
H17-遺伝子-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 善治(大阪大学微生物病研究所分子ウイルス分野)
研究分担者(所属機関)
  • 森石 恆司(大阪大学微生物病研究所分子ウイルス分野)
  • 武田 直和(国立感染症研究所ウイルス第2部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
34,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子治療の成否を握るのは、安全に効率よく標的細胞へ遺伝子を導入でき、しかも大きな組み込み容量を持った遺伝子導入ベクターの開発である。本研究はバキュロウイルスの特性を高度に利用して、持続感染症やがんに対する遺伝子治療用のベクターの開発を目的とする。
研究方法
1)C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した細胞でのみインターフェロン誘導遺伝子が稼働するバキュロウイルスベクターを作製し、遺伝子導入細胞を死滅させることなく、慢性持続感染細胞からHCVを排除可能なバキュロウイルスベクターの開発を試みた。2)アジュバント活性を兼ね備え、自然免疫と獲得免疫を誘導できる新規ワクチンベクターとしてのバキュロウイルスベクターの開発を試みた。3)E型肝炎ウイルス(HEV)のウイルス様中空粒子(HEV-LP)を用いた経粘膜遺伝子導入ベクターの開発を試みた。
結果と考察
1)HCVのプロテアーゼが自然免疫の誘導に必須なアダプター分子を切断して、宿主の免疫機構から逃避していることが知られている。そこで、HCVのプロテアーゼによって特異的に認識されるアミノ酸配列を検討し、HCV蛋白質が発現している細胞でのみ効率よく切断されて活性化されるように設計した組換えバキュロウイルスを構築した。2)バキュロウイルスの自然免疫誘導機構の解析し、TLR非依存的な自然免疫誘導機構の存在が示唆された。3) 遺伝子型 1 のキメラE型肝炎ウイルス粒子を作製した。VLP形成に必須な最小アミノ酸配列はこれまでの111~608からさらに絞り込んだ125~601残基であった。1型HEV ORF2のN末端から124アミノ酸をそれぞれORF3のN末端16アミノ酸、33アミノ酸、およびORF3全長に置き換えたコンストラクトを組換えバキュロウイルスで発現したところ、ORF3蛋白はキメラウイルス粒子の表面に配置していることが明らかになった。
結論
1)HCVのプロテアーゼによって特異的に認識されるアミノ酸配列を検討し、HCV感染細胞でのみ効率よく活性化されるように設計した組換えバキュロウイルスを構築した。2)バキュロウイルスによる、TLR非依存的な自然免疫誘導機構が示唆された。3)HEV ORF2のN末端を外来アミノ酸に置き換えたVLPを作製できた。4)組換えバキュロウイルスで遺伝子型 1のORF3蛋白をN末端に連結した構造蛋白を発現することによって、ネイティブな粒子とほぼ同じ直径を持つVLPを作製することができた。N末に連結したORF3は粒子の外側に配置しているように思われた。

公開日・更新日

公開日
2007-03-27
更新日
-