ユビキチンシステムの多機能性を活用した脳神経系加齢性病態の克服

文献情報

文献番号
200607030A
報告書区分
総括
研究課題名
ユビキチンシステムの多機能性を活用した脳神経系加齢性病態の克服
課題番号
H17-ゲノム-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
和田 圭司(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第4部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
38,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ユビキチンシステムが不用蛋白質の分解系として機能するだけでなく、多数の蛋白質の活性制御に関与し様々な生命現象に深く係わるという多機能性を活用し、脳神経系の老化ならびに老化がもたらす痴呆などの病態について、ユビキチンシステム、特に脱ユビキチン化酵素から見た克服法を開発する。
研究方法
脱ユビキチン化酵素UCH-L1の発現を欠くマウスを使用してシナプス可塑性、記憶学習行動を野生型と比較した。またUCH-L1と結合する蛋白質を免疫沈降法にて解析し、同定された蛋白質とUCH-L1の結合性を変異UCH-L1などを用いて解析した。また、UCH-L1と相同性があるUCH-L3の遺伝子欠損マウス網膜における神経細胞の変性を機能形態学的、生化学的に解析した。さらにUCH-L1の3次元構造のデータをもとにin silico drug screeningの系を構築した(倫理面への配慮)動物を使用する研究計画はすべて国立精神・神経センター神経研究所動物実験倫理問題検討委員会で審議され承認を受けた。
結果と考察
UCH-L1の発現を欠くマウスでは野生型対照に比べシナプス可塑性が変動しており、記憶学習行動の低下が認められた。またUCH-L1と結合する蛋白質Aを見出した。蛋白質AとUCH-L1の結合性はUCH-L1の変異の有無などにより変動することが見出された。UCH-L3欠損マウス視細胞ではカスパーゼ非依存的神経細胞死が亢進していることが示された。
脱ユビキチン化酵素が脳機能とその維持に重要な役割を担うことが示された。神経細胞老化がもたらす痴呆などの病態の修復法を開拓するため脱ユビキチン化酵素、UCH-L1とUCH-L3を機軸にした神経細胞老化の分子メカニズムの解明と脱ユビキチン化酵素の機能モニタリングによる神経系老化の評価系の構築をめざすが今回の成果はその基盤形成に貢献するものである。今後、脱ユビキチン化酵素を標的にした新たな創薬を通した神経系加齢性病態克服への方向性が展望できるようになった。
結論
UCH-L1ならびにUCH-L3は神経系老化の重要な調節因子である可能性を見いだした。

公開日・更新日

公開日
2007-03-27
更新日
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