文献情報
文献番号
200602007A
報告書区分
総括
研究課題名
パネル調査(縦断調査)に関する総合的分析システムの開発研究
課題番号
H18-統計-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
金子 隆一(国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
- 北村 行伸(一橋大学経済研究所)
- 釜野 さおり(国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 統計情報総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
1,691,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生労働省は国民生活に関する諸施策の策定に必要な情報収集のために、政府統計初のパネル調査(21世紀出生児縦断調査、成年者縦断調査、中高年者縦断調査)を実施し、従来の横断調査とは異なる因果関係に着目した要因の把握を目指している。しかし、パネル調査はデータ管理法や分析方法において横断調査とは異なる。本研究の目的は、パネル型データの有効で実際的な管理法と統計分析手法とを融合したシステムを検討・開発し、21世紀縦断調査に適用することによって、年々蓄積されるデータを適切に管理し、また有効な分析結果を導くことである。
研究方法
調査事例および分析法のサーベイを進め、情報ベースとして閲覧システムを整備し、標本設計ならびに統計的分析手法に関する検討を進め、さらに標本の脱落・復活や移動等のデータの特性に関する検討を進めた。また、出生児調査、成年者調査の主要な事項(出生児の成長、結婚・出生の意識・意欲と行動、家事育児・就業、健康リスク、地域)について、先行研究レビューを行い統計的分析の基礎となるデータ・変数等の整備を行い、基礎的分析を行った。
結果と考察
欧米中心に調査情報収集を進め、公開用閲覧システムを整備した。標本設計、イベントヒストリー手法の基礎ならびにマイクロシミュレーション法を検討し、後者は基礎システムを開発した。データの基礎特性については、脱落の特徴(父母が低年齢、低所得など)が明らかとなり、また復活が比較的多く重要であること、多数回融合データでは回答者・保育者が母親でないケースが想定外に多いこと、出生児の成長は横断調査結果と合致し、標本特性に問題がないことなどがわかった。分析事例では、第1子出生遅延と婚前妊娠や就業などとの関係、出生意欲による出生予測の可能性、夫の家事・育児時間が長いことが次の出生を促し、育児の経済的負担では実態と意識で齟齬があり、低所得層で負担感が高いわけではなく、専業主婦、非正規就業、正規雇用の母親では負担感の内容が異なること、再就労は都市で少ないこと、低所得と出生年齢や喫煙の関係などがわかった。これらは重要なテーマの基礎を網羅しているため、次年度の統合的応用分析が期待される。
結論
縦断調査結果は、適切な統計分析によって次世代の健全育成や少子化傾向等の国民生活の動態とそのメカニズム解明に寄与することが示された。自治体のヒアリングにおいても次世代育成支援見直し等への示唆を得ることへの期待が高い。
公開日・更新日
公開日
2007-05-21
更新日
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