国際比較パネル調査による少子社会の要因と政策的対応に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200601028A
報告書区分
総括
研究課題名
国際比較パネル調査による少子社会の要因と政策的対応に関する総合的研究
課題番号
H17-政策-一般-021
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
西岡 八郎(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿藤 誠(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 津谷 典子(慶應義塾大学 経済学部)
  • 福田 亘孝(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
13,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成14年度から16年度に実施した「「世代とジェンダー」の視点からみた少子高齢社会に関する国際比較研究」プロジェクトを踏まえた上で,新たにパネル調査の実施や政策効果に関する研究を行う総合的研究を企図する.日本を含む国際比較可能なマクロ・ミクロ両データの分析に基づいて,家族形成,出生力などの先進国間の共通性と日本的特徴を把握し,日本の未婚化・少子化の要因分析と政策提言に資することを目的とする.
研究方法
国連ヨーロッパ経済委員会(UNECE)人口部が企画実施中の「世代とジェンダー・プロジェクト(GGP)」に参加し,この国際共同プロジェクトの中核部分であるパネル調査(「世代とジェンダーに関するパネル調査」)を日本で実施し,少子化のミクロ的側面に関するパネル・データと雇用・労働政策や家族・子育て支援策などの少子化のマクロ的側面に関するコンテキスト・データを連結させて因果関係を分析する新手法による.
結果と考察
日本と同様に超低出生率国であるイタリアとの比較分析から以下の結果を得た.まず第一に日本,イタリアとも未婚化が少子化の重要な要因の一つであり,若年の非正規雇用者で未婚率が高くなる傾向がある.第二に女性就業と少子化について,イタリアと比べて日本ではパート就業者の出生率が相対的に低い.第三にイタリア,日本とも夫の労働時間が短く,妻の家事・育児に積極的に関与する場合で,出生意欲も出生率も高くなる傾向がある.性別役割意識の強い社会では,夫の長時間労働は,妻に家庭役割と就業役割の二重負担をもたらし,出産意欲の低下を引き起こす可能性が高い.第四に出生意欲に関して,イタリアでは高学歴者,フル・タイム就業者は出生児数だけでなく出生意欲自体も低いが,日本は出生児数が少ない高学歴者,フル・タオム就業者でも出生意欲は高いことなどが明らかになった.
結論
第一に伝統的家族観が強く,「男性=稼ぎ手」意識の根強い日本やイタリアでは,とりわけ男性の安定した雇用を保障する施策の実施で結婚が促進され,未婚化が抑制される可能性がある.第二に日本では,パート就業の女性に対して,より積極的子育て支援策の実施で,仕事と子育てを柔軟に組み合わせることが可能となり,出生率の上昇が期待される.第三に日本やイタリアなどの性別役割意識の強い社会では,男性の職場での労働時間の短縮を積極的に進め,よりファミリー・フレンドリーな就業形態にすることで,妻の二重負担が軽減され出生率が上昇する可能性がある.第四にイタリアに比べ出生意欲の高い日本では適切な子育て支援施策を講じることで,出生率回復の可能性が高い.

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
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