自営業者と公的年金制度

文献情報

文献番号
200601022A
報告書区分
総括
研究課題名
自営業者と公的年金制度
課題番号
H17-政策-一般-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岩村 正彦(東京大学大学院法学政治学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 関 ふ佐子(横浜国立大学大学院国際社会科学研究科)
  • 関根 由紀(神戸大学大学院法学研究科)
  • 渡邊 絹子(東海大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
4,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、現在公的年金の一元化の議論において焦点となっている国民年金の第1号被保険者のうち、とくに自営業者に着目して、比較法的観点も取り入れつつ、公的年金制度の自営業者への適用、給付水準、保険料(率)水準、保険料徴収の方法等について、今後の法制度設計の方向性を模索・検討することを目的とする。
研究方法
 本研究で用いる研究方法は、①わが国の公的年金制度の下での自営業者の扱いに関する文献・資料収集、既存の研究業績の検索・分析、②フランス・アメリカ合衆国・ドイツ等の欧米主要国における自営業者の公的年金制度の位置づけに関する調査・研究、という要素で構成され、この2つの研究の成果を基礎に、わが国の自営業者に関する公的年金制度の特徴と問題点の解明、および比較法的な検討の成果にもとづいた今後の法制度設計の方向の模索・検討行う。
結果と考察
わが国の基礎年金制度における第一号被保険者の仕組みには、被保険者集団像と地域保険的な構造との乖離という問題があり、社会保険事務所が適用・保険料徴収業務を担当するようになって以降、その問題が増幅している。外国法研究からは、つぎのようなことが明らかとなった。自営業者という職域に着目した制度をとる国(フランス、ベルギー)では、適用・保険料徴収が自営業者独自の管理機関によってデータベースや税務情報をもとに厳格に行われ、被用者、自営業者を区別しない公的年金制度を採用するアメリカも保険料不払いには罰則がかかるなど厳格な対応を講じている。ドイツでは、自営業者は基本的に任意加入であり、強制加入の被用者かそうでない自営業者に該当するかについて多くの判例の蓄積がある。また、近年独立で活動する芸術家等については独自の社会保険制度(年金制度含む)が構築される等興味深い発展が見られる。イタリアは、自営業者と被用者との峻別する公的年金制度から出発したが、その後、両者を同等に処遇する制度へと変容してきており、その背景には、就業形態との関係で中立的な公的年金制度を構築しようという考え方があったとみることができる。
結論
第一号被保険者については、被保険者集団像と地域保険的な構造との乖離をいかに解消するかが問題解決の一つの鍵であることが示唆された。外国法研究の知見からは、いずれの国でも、自営業者について適用・保険料徴収について厳格な運営・監督を可能とする仕組みが整備されていること、就業形態との関係で中立的な公的年金制度を指向する方向性もあることなどの示唆を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
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