人口減少に対応した国際人口移動政策と社会保障政策の連携に関する国際比較研究

文献情報

文献番号
200601009A
報告書区分
総括
研究課題名
人口減少に対応した国際人口移動政策と社会保障政策の連携に関する国際比較研究
課題番号
H16-政策-一般-022
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部)
研究分担者(所属機関)
  • 小島 宏(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部)
  • 勝又幸子(国立社会保障・人口問題研究所企画部)
  • 井口 泰(関西学院大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、先進諸国等における国際人口移動と移動者の社会的統合の実態・政策、それに伴って必要となる社会保障政策との連携に関する分析を行い、各国の実態・政策の比較検討を行うことにより、人口減少に直面するわが国における国際人口移動政策と社会保障政策の連携の可能性を検討することを目的とする。
研究方法
本研究の主要な研究方法としては①各種文献・ヒアリングに基づく理論分析、②マクロデータの実証分析、③既存のミクロデータの実証分析、④ミクロデータの収集と分析、⑤研究会がある。本年度は資料収集・分析・研究会を継続した。収集された先進諸国等の資料・データに基づく比較分析を行い、実地調査の分析結果や外国人研修生制度・技能実習生制度の実態に関するヒアリングの結果を踏まえ、わが国における国際人口移動と移動者の社会的統合・社会保険制度利用に関する実態・政策についての比較検討と問題点の検討を試みた。その際、外国人登録に関する欧州の経験を踏まえ、国際移動者の社会保険制度加入の徹底を図るための方策を検討した。
結果と考察
調査結果、各種データの実証分析、文献研究、現地調査等からわが国では国際移動者の社会的統合が必ずしも進んでいないことが再確認されたが、その背景として総合的な国際人口移動政策がなく、社会保障制度に不備があることが浮き彫りになった。本年度の研究で提案された対策としては、外国人労働者の社会保障を巡る問題は非典型労働者の労働条件・社会保険という観点から検討する必要があること、雇用主の社会保険料逃れを回避するための法的措置を徹底すること、不法残留者等については制度改正が困難なので既存の医療扶助事業を拡充するのが現実的であることが明らかになった。
結論
内外で社会保障制度が国際移動者の社会的統合に影響を及ぼすこと、わが国では日系ブラジル人等の正規在留外国人の雇用形態が社会保険加入状況に対して大きな影響を及ぼすこと、ドイツ等のように外国人登録データと社会保険加入データがリンクされていないことも背景にあること等が浮き彫りになった。そこで、外国人雇用状況の把握を基盤として、外国人の居住実態を効果的に把握する新登録台帳制度が構想される。また、業務請負の適正化及び技能実習制度の改革のために法改正を急ぎ、外国人二世に対する雇用・教育面の施策を強化し、日本語教育に対する支援措置を強化するなどの施策が必要とされる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200601009B
報告書区分
総合
研究課題名
人口減少に対応した国際人口移動政策と社会保障政策の連携に関する国際比較研究
課題番号
H16-政策-一般-022
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部)
研究分担者(所属機関)
  • 小島 宏(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部)
  • 勝又幸子(国立社会保障・人口問題研究所企画部)
  • 井口 泰(関西学院大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、先進諸国等における国際人口移動と移動者の社会的統合の実態・政策、それに伴って必要となる社会保障政策との連携に関する分析を行い、各国の実態・政策の比較検討を行うことにより、人口減少に直面するわが国における国際人口移動政策と社会保障政策の連携の可能性を検討することを目的とする。
研究方法
本研究の主要な研究方法としては①各種文献・ヒアリングに基づく理論分析、②マクロデータの実証分析、③既存のミクロデータの実証分析、④ミクロデータの収集と分析、⑤研究会がある。具体的な研究方法のうちで特記されるのは初年度の「外国人IT技術者調査」実施、第2年度の「磐田市外国人市民実態調査(2005年)」実施、第3年度の各種ミクロデータの比較分析と「外国人労働者の社会保障制度加入に関する研究会」の成果の取りまとめである。
結果と考察
わが国で国際移動者の社会的統合が進まない背景として総合的な国際人口移動政策がなく、社会保障制度に不備があることが浮き彫りになった。対策としては、①正規に就労が可能な在留資格を持つ外国人に関しては、健康保険等の職権による被保険者資格の取得や保険料徴収の徹底と年金通算協定の締結促進(次善の策として、脱退一時金制度の充実)、②不法残留者等の医療に関しては、既存の救急救命センター運営等の医療扶助事業の拡充や、NPOの活用、③事業主や外国人労働者に対する法の周知や情報提供の充実、④外国人とその子弟に対する雇用・教育支援を含めた、長期的な生活設計への誘導、⑤社会・労働保険加入や労働条件に関する事業主の社会的責任(CSR)の取引における確認、といったものが示唆された。
結論
わが国でもより直接的な人口減少対策としての国際人口移動政策とその社会保障政策との連携の重要性が増大している。円滑な国際人口移動を図るためには、国際移動者の社会的統合が不可欠であり、そのために医療保険、労働保険、年金等に関する社会保障政策が果たしうる役割を再検討する必要がある。特に、自由貿易協定等との関連で外国人受け入れ拡大が論議される一方、合法滞在の外国人の定住化が進みつつあるにも関わらず、社会保障制度による対処を含む社会的統合政策が遅れをとっており、外国人が集住する自治体も個別に外国人住民への対応について多くの課題に直面していることから、緊急性が高い。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200601009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
外国人(国際移動者)の社会的統合、特に社会保障制度を通じた統合に理論・実証の両面から接近した研究は国内でいまだに少数であることから、貴重な研究であると言えよう。また、理論的研究において諸外国の事例を踏まえた比較を試みているだけでなく、実証分析でも外国人の国籍間の比較分析、日本と外国のデータの比較分析、国際比較調査における国家間比較分析まで含む研究は国外でもあまり例がないと思われる。さらに、政策的含意まで導出しているので、専門的・学術的観点からみた成果は質量ともに高いと言えよう。
臨床的観点からの成果
本研究は「研究開発の性格」の分類では「基礎研究」であるため、臨床的観点からみた場合の直接的な成果はないとも言える。しかし、「磐田市外国人市民実態調査(2005年)」の調査票作成については磐田市に委託した上、同市が提案した保健・福祉施策関連の設問を入れているので調査報告書(ポルトガル語版を含む)やデータの分析結果を、磐田市役所が多文化共生のための保健・福祉等の臨床の場で利活用しているものと想像される。
ガイドライン等の開発
研究は「研究開発の性格」の分類では「基礎研究」であるため、ガイドライン等の開発を直接的な目的とはしていない。しかし、2006年12月に磐田市民に意見募集がなされた磐田市の「多文化共生推進プラン(案)」では「磐田市外国人市民実態調査(2005年)」の調査報告書からいくつかの図と分析結果が引用されており、「策定の経緯」に同調査と本研究事業で分析した2004年の磐田市外国人生活実態調査の結果も踏まえた旨が明記され、両調査の分析結果にも基づく基本施策・重点施策のプランが提案されている。
その他行政的観点からの成果
経済財政諮問委員会事務局から第2年度初めに本研究事業に関するヒアリングがあり、各種資料を提供したので、第3年度の初め(特に2006年4月)の同委員会における外国人労働者受け入れに関する集中的な議論には間接的に寄与した可能性がある。また、「外国人労働者の社会保障制度加入に関する研究会」には厚生労働省の外国人雇用対策課や国際年金課の行政官も参加しており、情報提供の形で政策形成に寄与しているものと思われる。
その他のインパクト
上記の2005年磐田市調査については同市の広報紙「いわた」(ポルトガル語版等を含む)で調査実施前に実施の広報がなされ、調査実施後は調査報告書の日本語版とポルトガル語版の報告書が磐田市により配布されたことから、外国人集住都市住民としての磐田市民、特に外国人市民には一定のインパクトがあったと思われる。また、名古屋市議会での市議の質問でも外国人実態調査を実施した自治体の一つとしてあげられている。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshimi Chitose
Transitions into and out of Poverty: A Comparison Between Immigrant and Native Children
Journal of Poverty , 9 (2) , 63-88  (2005)
原著論文2
小島 宏
国際結婚夫婦の家族形成行動--日本と台湾の比較分析--
経済学論纂 , 47 (3) , 175-196  (2007)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-