ヘルペスウイルス感染症の新規制御法の確立と潜伏感染機構の解明

文献情報

文献番号
200614089A
報告書区分
総括
研究課題名
ヘルペスウイルス感染症の新規制御法の確立と潜伏感染機構の解明
課題番号
H16-創薬-108
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
藤室 雅弘(北海道大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)は感染者のエイズ等の免疫機能抑制下においてカポジ肉腫を引き起こす。また、近年の臓器移植の急激な増加に伴い、KSHV感染ドナーのウイルス汚染臓器を介したレシピエントのカポジ肉腫発症という問題が生じている。現在の日本ではHIV感染者や臓器移植者は少数だが、今後これらが問題視されるのは明らかである。これらの背景と社会的要請により、本研究を遂行する。
研究方法
1. KSHVが潜伏感染時に発現するLANAは、ウイルスDNAの複製と発癌という二つの重要な役割を果たす。そこで、siRNAを用いたLANAのノックダウンが新規抗ウイルス薬となりえるか否か検討した。また、我々が開発した核酸誘導体を骨格とする新規抗ウイルス薬の作用機序と細胞内動態について解析した。
2. エイズ患者において日和見感染症を引き起こすヘルペスウイルスの感染診断法として、リアルタイムPCRを用いたウイルスDNA定量システムの開発を実施した。
3. KSHVが発現するLANAの細胞性結合蛋白質の同定を行い、両者の結合がどのような機構でウイルス感染維持や発がんに寄与しているのか、解析を行なった。
結果と考察
1. 効率的にLANA蛋白質発現を阻害する2種類のsiRNAを開発した。これらをKSHV感染PEL細胞に一過的に発現させると、β-カテニンの蓄積も効率的に抑制し、さらに、ウイルス感染がん細胞の増殖活性を低下させた。一方、新規抗ウイルス薬の作用機序の解析を行った結果、化合物のグアノシンにアミノ基を導入した誘導体類は、細胞内のアデノシンデアミナーゼにより効率よくグアノシンに変換されていた。また、本化合物はDNA合成阻害だけでなく、RNAと蛋白質合成も阻害していることが明らかになった。
2. 開発したウイルス量測定システムは、10コピー以上のウイルスDNAが存在すれば、血清、唾液、尿、髄液等の生体検体中のウイルスDNAのコピー数が算出できることが明らかとなった。
3.LANA結合タンパク質として蛋白質の安定化に関与するHUSPを同定した。KSHVのLANAはHUSPと相互作用することで安定化していることが明らかとなった。
結論
抗KSHV薬のシーズ薬物としてsiRNAとヌクレオシド誘導体を開発した。
リアルタイムPCRを用いたウイルスDNA定量システムの開発を行なった。
LANA結合蛋白質の同定とその相互作用の生理的意義を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200614089B
報告書区分
総合
研究課題名
ヘルペスウイルス感染症の新規制御法の確立と潜伏感染機構の解明
課題番号
H16-創薬-108
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
藤室 雅弘(北海道大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)は感染者のエイズ等の免疫機能抑制下においてカポジ肉腫を引き起こす。また、近年の臓器移植の急激な増加に伴い、KSHV感染ドナーのウイルス汚染臓器を介したレシピエントのカポジ肉腫発症という問題が生じている。現在の日本ではHIV感染者や臓器移植者は少数だが、今後これらが問題視されるのは明らかである。これらの背景と社会的要請により、本研究を遂行する。
研究方法
1. 干渉性RNA(siRNA)を用いたLANAのノックダウンが新規抗ウイルス薬となりえるか否か検討した。さらに、ヌクレオシド誘導体を用いた抗KSHV薬開発を実施した。
2. エイズ患者において重篤な日和見感染症を引き起こすKSHV、EBV、CMVの感染診断法の開発を行なった。
3. LANAの細胞性結合蛋白質の同定を行い、両者の結合がどのような機構でウイルス感染維持や発がんに寄与しているのか、解析を行なった。
結果と考察
1. 効率的にLANA蛋白質発現を阻害する2種類のsiRNAを開発した。これらsiRNA は、KSHV感染がん細胞の増殖活性を有意に低下させた。一方、アシクロビルのリボースを改変しDNA切断基を導入した新規抗ウイルス薬も開発した。本化合物はKSHV感染特異的にBリンフォーマ細胞の増殖抑制効果を発揮した。また、本薬物による殺細胞活性はDNA鎖切断によるp53活性化とカスパーゼ3/7活性化によるアポトーシスが理由である。また、本薬物はDNA合成阻害だけでなく、RNAと蛋白質合成も阻害していることが明らかになった。
2. KSHV、EBV、HCMV感染を解析するマルチプレックスPCR法とリアルタイムPCR法を用いたウイルスの定量システムを開発した。開発したマルチプレックスPCR法を用いて、953検体の健常人末梢血中を解析する大規模疫学的調査を実施し、本診断法が臨床応用可能であることを証明した。
3.LANA結合タンパク質としてPARP、Ku80、Ku70、さらに、蛋白質の安定化に関与するHUSPを同定した。KSHVのLANAはHUSPと相互作用することで安定化していることを明らかにした。
結論
抗KSHV薬のシーズ薬物としてsiRNAとヌクレオシド誘導体を開発した。
KSHV、EBV、HCMV感染の診断法とウイルス定量システムの開発を行なった。
LANA結合蛋白質の同定とその相互作用の生理的意義を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614089C

成果

専門的・学術的観点からの成果
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)は、エイズ発症や臓器移植時の免疫機能抑制下においてカポジ肉腫を起こす。現在の日本ではHIV感染者や臓器移植者は少数だが、将来の日本で、これらが深刻な問題になるのは明白である。この問題の解決策として、新規な抗KSHV薬の開発を実施し、siRNAとヌクレオシド誘導体類を開発に成功し、特許化した。また、KSHV感染診断法とウイルス定量システムの開発にも成功し、特許出願も実施した。さらに、KSHVの感染維持機構と発がん機構の一部を解明した。
臨床的観点からの成果
抗KSHV薬開発において、潜伏感染に必須のウイルス蛋白質を標的としたsiRNAを開発した。このsiRNA は、KSHV感染がん細胞の増殖活性を有意に低下させた。一方、ヌクレオシドを基本骨格とした新規抗ウイルス薬も開発した。本化合物はウイルス感染特異的にがん細胞の増殖抑制効果を発揮した。一方で、エイズ発症時の日和見感染症で問題となるKSHV、EBV、CMV感染を網羅的に解析できるマルチプレックスPCR法を開発した。また、本診断法は大規模疫学的調査にも使用可能で、臨床応用可能であることを証明した。
ガイドライン等の開発
本研究は該当しない。
その他行政的観点からの成果
現在、臨床で広く使用されているアシクロビルやガンシクロビルは、ヘルペスウイルスに対して高い選択性と抗ウイルス活性を示すが、造血障害や神経障害等の副作用も有する。また、これら汎用抗ヘルペスウイルス薬はKSHVに対して全く効果を持たない。本研究成果である新規抗KSHV薬は、将来の日本で解決すべき医療課題である免疫不全患者の日和見感染症に対する新規治療薬となる可能性を有している。
その他のインパクト
本研究成果の学会発表(日本薬学会)において、その発表内容がハイライト演題として取り上げられ、講演ハイライト集に掲載された。
藤室雅弘, 中村哲也, 横沢英良 癌ウイルスの生き残り戦略:宿主の蛋白質修飾をウイルスが乗っ取る. 日本薬学会第127年会 講演ハイライト集(報道機関用) p29, 2007

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fujimuro M, Inoue H, Teishikata Y, et al.
Apoptotic Effect of Ganciclovir on Primary Effusion Lymphoma Cells Infected with Kaposi’s Sarcoma-associated Herpesvirus.
Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids. , 25 , 635-645  (2006)
原著論文2
Nishiwaki M, Fujimuro M, Teishikata Y, et al.
Epidemiology of Epstein-Barr Virus, Cytomegalovirus and Kaposi’s Sarcoma-Associated Herpesvirus Infections in Peripheral Blood Leukocytes Revealed by a Multiplex PCR Assay.
J. Med. Virol. , 78 , 1635-1642  (2006)
原著論文3
Fujimuro M, Nakaso K, Nakashima K
Multiplex PCR-based DNA array for simultaneous detection of three human herpesviruses, EBV, CMV and KSHV.
Exp. Mol. Pathol. , 80 , 124-131  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-