疾患関連タンパク解析手法の比較検討と追加手法の検討

文献情報

文献番号
200606032A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患関連タンパク解析手法の比較検討と追加手法の検討
課題番号
H18-特別-指定-036
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
平野 久(横浜市立大学大学院 国際総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 敬一(九州大学生体防御医学研究所)
  • 山田 哲司(国立がんセンター研究所化学療法部・腫瘍プロテオミクスプロジェクト)
  • 金子 勲(ヒューマンサイエンス振興財団(創薬プロテオームファクトリー施設))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
質量分析やその周辺技術が発達し、cICAT法だけでなく、iTRAQ 法やSELDI法、ショットガン法なども疾患関連タンパク質の効率的な検出・同定に利用できる可能性が出てきた。本研究では、iTRAQ法やSELDI法などを用いて市販の健常人血清を分析し、各々の方法の利点と欠点を明らかにする。
研究方法
ヒト血清タンパク質をcICAT試薬で標識し、酵素消化した。消化物中の標識されたペプチドを精製し、LC ESI-Q/TOF MSで分析した。また、血清タンパク質を酵素消化し、生じたペプチドをiTRAQ試薬で標識した後、2 D-LCによって分離し、ESI-Q/TOF MS、ESI-LIT/TOF MS、MALDI-TOF/TOF MSによって分析した。一方、血清タンパク質をプロテインチップに固定化し、SELDI法により分析した。
結果と考察
cICAT法よりiTRAQ法の方が多数のタンパク質を同定・定量できた。再現性や誤差には差がなかった。スループットはiTRAQ法の方が3-10倍高かった。iTRAQ法では、MSの種類によって検出・同定できたタンパク質数に差はなかったが、cICATとiTRAQ法、LC-MALDIとLC-ESIの間には検出されるタンパク質の種類にかなり違いが見られた。疾患関連タンパク質をより網羅的に検出するためには、同じ試料を異なる方法を用いて分析することが重要であろう。一方、Q-TOF MSを用いたSELDI法によって再現性よく多数のタンパク質を検出し、定量できることが明らかになった。SELDI法は、アミノ酸配列を決定できないので、タンパク質の同定は容易でないが、同位体標識やプロテアーゼ消化を必要としないため、迅速な分析が可能であるので短期間の分析に適している。
結論
多数の血清タンパク質の同定・定量をハイスループットで行う場合、iTRAQ法がcICAT法より優れている。iTRAQ法では、MSの種類によって同定・定量できるタンパク質数に差がないが、種類はかなり異なる。Q-TOF MSを用いたSELDI法によって再現性よく多数のタンパク質に相当するペプチドピークを検出・定量できる。SELDI法は迅速な分析に適している。創薬プロテオームファクトリーには、各種MSが装備されている。また、cICAT、iTRAQ、SELDIなどの手法を利用できる環境がある。この優位性を生かして今後、研究を遂行することが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200606032C

成果

専門的・学術的観点からの成果
質量分析装置やその周辺技術の発達により、疾患関連タンパク質の効率的な検出・同定にcICAT法だけでなく、iTRAQ 法やSELDI法、ショットガン法などを利用できる可能性が出てきた。本研究では、これらの方法を用いて市販の健常人血清を分析し、各々の方法の利点と欠点を明らかにした。多数のタンパク質の同定・定量にiTRAQ法が、また、迅速なタンパク質の検出にはSELDI法が役立つことなどが実証された。
臨床的観点からの成果
創薬プロテオームファクトリーは、最新の質量分析機器等を用いたプロテオ-ム解析技術を活用し、糖尿病、がん、高血圧、痴呆などのバイオマーカーになる疾患関連タンパク質の探索・同定を行っている。本研究によって、より効率的にバイオマーカーを探索するために今後どのような分析機器や手法を用いればよいかが明らかになった。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
創薬プロテオームファクトリーのような政府主導で作られた大規模な産学共同プロテオーム研究施設は世界に例がない。本研究は、同施設での研究の一層の進展を促進する目的で行われた。本研究の結果は、同施設での診断技術の開発や、新薬のシーズ発見につながる基盤データの迅速な収集に役立つと考えられる。
その他のインパクト
種々の新規な技術を使って疾患関連タンパク質を効率的に検出できるようになれば、創薬の基盤となるタンパク質デ-タベ-スの構築作業が加速される。新規な技術を利用して医薬品の標的分子に関するスクリ-ニング法、アッセイ技術等の開発が行えるようになる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
30件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
27件
学会発表(国際学会等)
22件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-