低出生体重児の増加要因に関する検討

文献情報

文献番号
200606026A
報告書区分
総括
研究課題名
低出生体重児の増加要因に関する検討
課題番号
H18-特別-指定-027
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
福岡 秀興(東京大学大学院医学系研究科(発達医科学))
研究分担者(所属機関)
  • 瀧本 秀美(国立保健医療科学院生涯保健部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
1,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
出生体重減少は胎内の栄養環境の悪化により生ずるもので、成人病(生活習慣病)の多発が危惧されておりその因子を解析する。胎児発育状況を正確に把握する正確な成長発育基準ツールを作成し10年前と比較を行い変化の特性を検討することを目的とした。
研究方法
成人病胎児期発症説の視点で、1980年,1990年,2000年の乳幼児発育調査および、2001-04年の日本産科婦人科学会周産期データベースの単胎正期産児53,447例を再解析した。早産の増加傾向があるにも関わらず低出生体重児が増加していないカナダと比較した。胎内栄養が正常と考えられる児の発育曲線を日産婦学会・周産期委員会のデータ(2000年-2002年の出生児51650例)から、妊娠22-42週の頭位単胎経膣分娩例21743例を性別、初・経産別にサブグループ化しスプライン関数式による発育基準曲線を作成した。この結果を元に前と比較して出生状況の推移を検討した。
結果と考察
低出生体重児の増加は早産と多胎にあるも、1990年以降に正期産単胎児の体重減少と低出生体重児の増加が著しい。妊娠前の母体体重が47.0kg未満では、低出生体重児リスクは標準群の2.21 倍(p<0.01)、妊娠中の体重増加量7.7kg未満ではそのリスクは2.09 倍(p<0.01)であり、喫煙はそのリスクを上昇させていた。カナダの早産率は日本より高い(2000年:7.6%対5.4%)が、低出生体重児頻度は過去20年間で6%前後と一定(2003年6.7%)であるが、日本は増加(1980年:5.2%、2003年:9.1%)しており大きな違いがあった。10年前に比べ、児体重は37週未満ではむしろ重く、37週以降は軽量化し10パーセンタイルと90パーセンタイル範囲が縮小していた。短時間で日本の出生児体格構造の変容が生じている可能性が示唆された。

結論
出生時体重が低いと緊急帝王切開率が高く、難産、妊娠合併症の予防に重点がおかれてきた画一的な体重増加抑制を中心とする妊婦健康管理を再考するべきとの示唆を与える結果を得た。胎児発育の抑制(喫煙、極端な体重増加抑制、妊娠前の母体のやせ等)が、その予防にならない事が示唆され、成人病胎児期発症説を十分理解して妊婦栄養を考慮する重要性が確認された。胎児成長発育曲線を過去と比較して、短時間で日本の出生児体格構造の変容が生じている可能性が示唆された。
その詳細を早期に検討する必要がある。またカナダなど外国との比較検討が早急に行われ、低出生体重児を少なくする必要性が高い。

公開日・更新日

公開日
2008-03-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200606026C