残留塩素に依存しない水道の水質管理手法に関する研究

文献情報

文献番号
200501218A
報告書区分
総括
研究課題名
残留塩素に依存しない水道の水質管理手法に関する研究
課題番号
H17-健康-025
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
国包 章一(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 禎彦(京都大学大学院 工学研究科)
  • 大瀧 雅寛(お茶の水女子大学大学院 人間文化研究科)
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 西村 和之(県立広島大学 生命環境学部)
  • 船水 尚行(北海道大学大学院 工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
21,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水道における塩素消毒と残留塩素の保持は、消毒副生成物の生成に伴う健康リスクの増大や、カルキ臭の発生に伴う快適性の喪失をもたらすことが重大な欠点である。本研究では、今日の水道における残留塩素保持の意義と必要性をわが国の水道の現状と最新の知見に照らして再検討し、残留塩素に依存しない新しい水道水質管理のあり方を明らかにすることにより、水道水の安全性及び快適性のより一層の向上を図ることを目的とする。
研究方法
残留塩素に依存しない水道の水質管理手法に関する文献調査、残留塩素に依存しない系における健康リスク推算シミュレーションモデルの構築、消毒副生成物によるリスクの総括的評価および塩素使用と免疫毒性との関連性、水道原水中の病原性微生物による健康影響リスクレベルの把握、消毒代替技術間の消毒機構の比較およびそれら代替技術の管理手法の開発、及び、水道水における微量有機物および再増殖微生物の特性評価を行った。
結果と考察
諸外国の水道における消毒及び給配水水質管理の状況、病原性微生物による水道水源等の汚染と感染事例、消毒技術による微生物損傷性や塩素代替技術の管理手法に関する文献を取りまとめた。残留塩素に依存しない系での指標病原微生物の選定として既往の感染症例を調査し、入手可能なDALY値で重み付けした。塩素処理水中の全有機ハロゲン化合物を対象とした染色体異常試験を実施し毒性を推定した。また環境水中等のエンドトキシンを定量し塩素処理条件による制御可能性を示した。酪農地帯を対象とした水道原水中の病原性微生物の実態調査を行い、牛糞尿由来のクリプトスポリジウムオーシスト負荷原単位を試算した。消毒処理における処理対象細菌の不活化効果の比較を試み、塩素消毒では高CT値ほど重度な損傷となり、紫外線消毒では投入線量によらず一定の損傷となることを示した。また紫外線消毒にて自生細菌類を生物線量計として用いる方法の課題点を明らかにした。オゾン-活性炭処理を導入している浄水場を対象として原水および活性炭表面上の微生物群集構造を比較し、活性炭表面上に類似した群集構造が形成されていることを示した。
結論
残留塩素に依存しない水道を実現する上では、病原性微生物や消毒副生成物に係る健康リスクの所在につき、継続して多面的な評価を行う必要がある。また、消毒処理や給配水過程における水質管理上の要件および評価法をさらに明確にすることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
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