健康関連指標を用いた健康寿命の都道府県較差の原因に関する研究

文献情報

文献番号
200501194A
報告書区分
総括
研究課題名
健康関連指標を用いた健康寿命の都道府県較差の原因に関する研究
課題番号
H16-健康-034
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
平尾 智広(香川大学医学部・医療管理学)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 敏彦(国立保健医療科学院・政策科学部)
  • 渡辺 智之(認知症介護研究・研修大府センター)
  • 大西 基喜(青森県上北地方健康福祉こどもセンター保健部)
  • 佐々木 隆一郎(長野県飯田保健所)
  • 崎山 八郎(沖縄県中部保健所)
  • 等々力 英美(琉球大学医学部医学科保健医学講座)
  • 佐藤 敏彦(北里大学医学部公衆衛生)
  • 實成 文彦(香川大学医学部衛生・公衆衛生)
  • 万波 俊文(香川大学医学部衛生・公衆衛生)
  • 鈴江 毅(香川大学医学部衛生・公衆衛生)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,259,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、時系列要素を含む分析手法を用いることにより、都道府県健康格差の原因を推定することである。特に健康水準に大きな開きがある青森と長野、近年健康長寿が揺らぐ沖縄については重点的に検討を行った。
研究方法
生命表をポラード法により分解し、1975-2000年における全都道府県の性・年齢・傷病別寿命延伸寄与割合の推定を行った。また延伸に寄与する主要疾患に対して、全国値の推移からみた時間的ズレを推定し、期待される数値からみたパフォーマンスの推定を行った。また、飲酒と自殺との関連、沖縄を対象とした栄養転換と経済政策の関連性の実証を行い、青森、長野、沖縄については、補記続き健康関連要因の分析、比較を行った。
結果と考察
・平均寿命への寄与と主要疾病における時間的ズレ
1975-2000年における性・年齢・傷病別寿命延伸寄与割合は、脳血管疾患(男性38.9%、女性35.0%)、悪性新生物(男性0.1%、女性6.0%)、虚血性心疾患(男性4.8%、女性5.1%)であった。寿命延伸の都道府県格差に関連する疾病を推定するために、これらの主要疾患に対して全国値の推移からみた時間的ズレを推定したところ、各都道府県のパフォーマンス(期待される数値からみた実測値の程度)に差異があることが確認された。
・健康リスクの分析
飲酒と疾病との関連について、成人男性では都道府県別年齢調整飲酒者率と自殺、脳血管疾患、悪性新生物の年齢調整死亡率の間に有意な相関が得られた。栄養について昨年次に確認された、沖縄におけるいわゆる「栄養転換」を数理的に解析したところ、食料事情と学童の肥満の間の関連が強く示唆された。
・各県の健康への影響要因の分析と比較
3県の比較において健康と生活習慣に差がみられ、特に青森と長野の比較では、長野の方が生活習慣や健康にかかわるライフスタイルが良好であることが示唆された。また長野の生活習慣の特徴は、喫煙率が低いこと、栄養素摂取量でビタミンB1、B2、Cなどが高いことが挙げられ長寿との関連が考えられた。
結論
本年度の研究から、平均寿命延伸からみた都道府県のパフォーマンスが推定された。単に健康水準の到達レベルのみならずそのパフォーマンスを示すことで、施策の優先順位付けに応用可能と思われる。また、沖縄では「社会変革→生活習慣の変化→健康への負の影響」の連鎖が観察され、同様なことは他の都道府県でも起きているものの、変化が緩やかなため検出しにくいものと思われた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200501194B
報告書区分
総合
研究課題名
健康関連指標を用いた健康寿命の都道府県較差の原因に関する研究
課題番号
H16-健康-034
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
平尾 智広(香川大学医学部・医療管理学)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 敏彦(国立保健医療科学院)
  • 渡辺 智之(認知症介護研究・研修大府センター)
  • 大西 基喜(青森県上北地方健康福祉こどもセンター保健部)
  • 佐々木 隆一郎(長野県飯田保健所)
  • 崎山 八郎(沖縄県中部保健所)
  • 等々力 英美(琉球大学医学部医学科保健医学講座)
  • 佐藤 敏彦(北里大学医学部公衆衛生)
  • 實成 文彦(香川大学医学部衛生・公衆衛生)
  • 万波 俊文(香川大学医学部衛生・公衆衛生)
  • 鈴江 毅(香川大学医学部衛生・公衆衛生)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、時系列要素を含む分析手法を用いることにより、都道府県健康格差の原因を推定することである。特に健康水準に大きな開きがある青森と長野、近年健康長寿が揺らぐ沖縄については重点的に検討を行った。
研究方法
本研究の構成は、健康指標の健康寿命との関係についての整理、国内における健康水準の記述的分析、社会基礎統計指標と健康指標群の関係、都道府県独自の調査を組み合わせた分析からなる。なおデータは公開されたものを用いた。
結果と考察
1975-2000年の都道府県較差は実数では減少していたが、時間的ズレは拡大していた。寿命延伸の都道府県較差に関連する疾病は、男性では、脳血管疾患、悪性新生物、虚血性心疾患、自殺、不慮の事故等、女性では、悪性新生物、周産期の疾患、呼吸器疾患等であった。これらの主要疾患に対して全国値の推移からみた時間的ズレを推定したところ、各都道府県のパフォーマンス(期待される数値からみた実測値の程度)に差異があることが確認された。
出生コホート別分析では、昭和一桁、戦中派で死亡率の増加が認められ、生涯疫学的観点から若年期の曝露が中年以降の健康状態に影響を与えていることが示唆された。また新指標CLSM(コホート区間死亡確率)の都道府県別の推定を行ったところ、若年層良好型、高齢層良好型、一様型に分類できた。なかでも沖縄県は、戦前生まれ、戦後生まれで順位が大きく異なり、劇的な社会文化的変化の関与が示唆された。
健康リスクに関する分析では、飲酒量と自殺との関連について都道府県別に比較したところ高い相関があり、年次を追って強まっている可能性が示唆された。また、沖縄では栄養転換と学童体重の変化が明瞭に観察され、「社会変革→生活習慣の変化→健康への負の影響」の連鎖が示唆された。同様なことは他の都道府県でも起きているものの、変化が緩やかなため検出しにくいものと思われた。
青森、長野、沖縄の比較では、肥満(運動、食)、喫煙等に差が見られ、長期的に較差の要因となっていることが示唆された。また長野型健康モデルが提案されたが、数字で表しにくい指標も多く今後の課題である。
結論
わが国は世界有数の健康水準を誇っているが、地域、世代等において少なからず較差が存在することが確認された。本研究では地域較差に焦点を当て較差の原因について知見を得たが、今後世代別動向にも注目し、研究、対策を講じていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501194C

成果

専門的・学術的観点からの成果
健康関連指標の都道府県較差の出現に寄与する疾病を同定し、その都道府県別パフォーマンスの推定方法を提案した。また生涯疫学的観点から出生コホートの健康への影響について知見を得た。研究成果の一部は学術雑誌、集会等で発表を行っているが、残りの成果についても発表を予定している。
わが国は世界最高レベルの健康水準のみならず、未曾有のスピードで高齢社会に突入した最初の国として全世界から注目を集めている。本研究ではわが国の地域較差とその原因について多くの知見を得ており、国際的、社会的意義は大きいと考えられる。
臨床的観点からの成果
本研究は臨床的成果を一義的目的としたものではないが、都道府県における健康水準の較差とその原因について知見を得ており、その結果は都道府県の地域医療に資することが期待される。また、臨床系学術集会での教育講演を通じて、専門家への普及・啓発を行った。
ガイドライン等の開発
本研究ではガイドライン等の開発は行っていない。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果をもとに、青森県、沖縄県において、行政関係者、研究者、マスコミ関係者向けに、それぞれの県における健康問題及び今後重点的展開が必要と考えられる施策分野について解説、提案を行った。今後各県における健康施策へ反映されることが期待される。
またわが国における健康寿命の算出方法について、行政担当者に対して解説及び提案を行った。
その他のインパクト
NHK番組クローズアップ現代「肥満との闘い 沖縄・長寿日本一をとりもどせ」への出演、NHKスペシャル「データマップ 63億人の地図第1回 寿命 ?2004年いのちの旅?」への取材協力、また長寿科学振興財団による一般向けパンフレット等を通じて、一般国民への成果還元・普及・啓発を行った。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
24件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
8件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
渡辺智之, 福田博美, 宮尾克 他
性・年齢・疾患別にみた寿命延長への寄与に関する地域格差 -高齢者を中心に
愛知教育大学研究報告 , 55 , 53-60  (2006)
原著論文2
Hidemi Todoriki, D. Craig Willcox and Bradley J. Willcox
The Effects of Post-War Dietary Change on Longevity and Health in Okinawa
The Okinawan Journal of American Studies , 1 , 55-64  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-11-20
更新日
-