内分泌かく乱化学物質と子宮体がん発生リスクに関する症例対照研究

文献情報

文献番号
200501164A
報告書区分
総括
研究課題名
内分泌かく乱化学物質と子宮体がん発生リスクに関する症例対照研究
課題番号
H17-化学-015
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
八重樫 伸生(東北大学大学院医学系研究科泌尿生殖器学講座婦人学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 潔(東北大学大学院医学系研究科泌尿生殖器学講座婦人学分野)
  • 佐藤 洋(東北大学大学院医学系研究科環境保健学分野)
  • 坪野 吉孝(東北大学大学院法学研究科)
  • 新倉 仁(東北大学大学院医学系研究科泌尿生殖器学講座婦人学分野)
  • 永瀬 智(東北大学大学院医学系研究科泌尿生殖器学講座婦人学分野)
  • 岡村 智佳子(仙台市立病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
18,520,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
症例対照研究の手法を用いてヒトにおいて子宮体がんの発生と内分泌かく乱物質との関連性について検討すること。
研究方法
(1)東北大学病院または宮城県立がんセンターで手術を施行し病理組織学的に子宮体がんと診断された者を症例とし、対照として人間ドックを受診した女性を1症例につき2人登録(単年度目標は50人:100人)。研究対象者のPCB、農薬、ビタミン類の血中濃度を測定し、生活習慣に関する記述式アンケートと食物摂取頻度調査票を調査。(2)アンケート調査を解析することにより、子宮体がんの高危険因子を抽出し、栄養素と子宮体がんとの発症の関連性について解析した。
結果と考察
(1)登録状況:平成17年度中に症例58例、対照109例の登録が得られ、単年度の目標に達した。 (2)血液測定結果:症例群と対照群の平均値の差を検定した。PCBと農薬においては両群間に有意差は認めなかった。ビタミン類では、ビタミンEとベータカロテンが症例群で有意に低値であった。(3)子宮体がんの高危険因子の抽出:肥満および年齢が危険因子であり、経口避妊薬の使用と授乳歴がリスクを低下させることが明らかになった。 (4)栄養素と子宮体がん発症との関連:レチノール摂取頻度の増加がリスク を上昇させ、逆に、ナイアシンの摂取頻度の増加が、発症リスクを有意に低下させた。飲料との関連では、緑茶とコーヒーの摂取頻度の上昇が発症リスクの低下と有意に相関した。
結論
現在のサンプルサイズでは十分な統計学的パワー(検出力)が得られないため、PCBや農薬の内分泌かく乱物質と子宮体がんとの関連について結論を導き出すことはできず、結論は最終年度まで待つ必要がある。栄養素との関連ではレチノールの摂取がリスクを上昇させ、ナイアシンの摂取がリスクを低下させることが多変量解析の結果から証明された。これらの生物学的意義については今後検証していく必要があると思われる。コーヒーの摂取は肝臓がんのリスクも低下させることがいわれており、子宮体がんにおいてもリスクを低下させることが明らかになった。コーヒーは豆類がもとになっており、このことがリスクを低下させる要因となっていることが可能性がある。緑茶については、他のがんでの症例対照研究でも発症のリスクを低下させることがいわれているが、より信頼性の高いコホート研究では有意な差は認めていないため、結論を出すにはより慎重な解析が必要と思われる。

公開日・更新日

公開日
2006-06-07
更新日
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