胎児期・新生児期化学物質暴露による新たな毒性評価手法の確立とその高度化に関する研究

文献情報

文献番号
200501163A
報告書区分
総括
研究課題名
胎児期・新生児期化学物質暴露による新たな毒性評価手法の確立とその高度化に関する研究
課題番号
H17-化学-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 淳(国立医薬品食品衛生研究所病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 勉(星薬科大学)
  • 手島 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 機能生化学部)
  • 黒川 昌彦(九州保健福祉大学 薬学部)
  • 今井 俊夫(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
26,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難分解・高蓄積性化学物質に対応できる、げっ歯類発達期暴露影響評価系の確立と、国際的調和に基づいた化学物質リスク評価法の確立を目的として以下の研究を行った。
研究方法
甲状腺機能低下による発達期毒性が示唆される臭素化難燃剤を例とした影響の定量評価をプロピルチオウラシル(PTU)等の抗甲状腺剤を比較対照として行った。難燃剤はデカブロモディフェニルエーテル(DBDE)を評価した。神経発達かく乱影響評価では、母ラットに妊娠中期から離乳時まで抗甲状腺剤を投与し、仔動物のニューロン、白質構成分の不可逆的変化と共に、ニューロンのマイクロアレイ解析を行った。DBDEの本実験も行った。同モデルで、神経機能・行動影響評価では中枢性薬物に対する反応性、出現異常行動に関連する脳部位でのin vivoマイクロダイアリシス法によるモノアミン解析を行い、免疫機能影響評価でもリンパ球サブポピュレーションやNK細胞の割合の解析を行った。感染影響評価はPTUによるRSウイルス・マウス感染モデルを作製し、肺のウイルス感染価やサイトカイン量を測定した。発がん性評価はラット幼若期にDBDEを暴露後発がん物質処置して、多臓器発がん性の検出を図った。また最近の評価事例について不確実係数の決定やTDI算定の出発根拠を調査した。
結果と考察
神経発達かく乱影響評価では、抗甲状腺剤暴露の不可逆的影響として海馬ニューロン移動の不全、白質面積とオリゴデンドロサイト密度の減少を確認し、甲状腺機能低下に起因したニューロン標的遺伝子を同定した。DBDEでは低濃度で脳の不可逆的影響を見出したが、その反応性は非直線的であった。神経機能・行動影響評価では、PTU、DBDEともメタンフェタミン誘発報酬効果と、その際の側坐核のドパミン遊離量に強い減弱を示した。免疫機能影響評価では、抗甲状腺剤は成熟後で末梢血NK細胞と活性化T細胞を減少させ、DBDEでも同様にNK細胞を減少させた。感染影響評価では、成熟マウスへの高用量PTU曝露で血中T4の減少と肺でのRSウイルス増加傾向を得、周産期曝露では仔マウスのBALF中でIFN-γの上昇が判明した。発がん研究は、現在実験が24週間を経過している。最近の評価事例解析では、不確実係数は体内動態に関する情報を取り入れたものに、TDI算定の出発根拠とする値はベンチマークドースに置き換えている事例が増えた。
結論
発達期暴露評価系確立に関しては、多くは抗甲状腺剤を対照とした影響評価が可能となり、DBDEでも中枢神経や免疫機能影響を確認した。また最近の事例の評価動向を調査した。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
-